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【就活】大企業(JTC)の知られざる身分制度【経験者が実態を解説】

大企業(JTC※1)の学歴による選別、男女差別や正規・非正規の差別は一般的に知られていますが、この他にも企業によっては様ざまな差別が存在し、その会社独自の身分制度があります。

 

※1  JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング

 

大企業(JTC)の待遇は、差別的な側面があっても一般的には十分恵まれているため、その不条理を受け入れることができれば、比較的幸福なサラリーマン人生を送ることができます。

我慢できるかどうかは、事前にその不条理を知っているかどうかにかかっています。

この記事を読めば、インフラ企業での具体的な身分制度の実例を知ることができます。

■この記事を読んで頂きたい人■
・大企業(JTC)への就活を検討中の学生、または転職希望者
 
 
■この記事でわかること■
・大企業(JTC)の知られざる身分制度とは?~あるインフラ企業の5つの差別

 

不条理な身分制度を承知の上で大企業(インフラ企業)に転職して長年勤務した筆者が、大企業(JTC)の知られざる身分制度について解説します。

<自己紹介>

筆者本人(1960年生)

出世競争は早めに降りて体づくりに励む
筋トレ歴16年 ボクシング歴10年

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職

 

      

 目次

大企業の知られざる身分制度とは?~あるインフラ企業の5つの差別

①事務系と技術系の間の差別

大企業(JTC)では事務系と技術系の間に差別が存在します。

筆者が勤務したインフラ企業では、事務系は技術系に比べて無条件で2~3年早く昇進しました。

事務系と技術系どちらのヒエラルキーが上かは、歴代の社長の経歴を見ればわかります。

基本的には、ヒエラルキーが上の系統から社長は選ばれます。

②技術系の系統間の差別

系統の違いとは、大学卒業学科の違いです。

例えば、電気、機械、土木、建築※2などです。

 

※2 筆者はゼネコン(請負サイド)からインフラ企業(発注サイド)に転職しています。東大卒ですが建築系統なので、インフラ企業に移ってからはかなり差別を受けました。ゼネコンを辞める時、この差別については聞かされていましたが、筆者は発注サイドでの出世とは関係の無いのんきなサラリーマン人生を選択しました。参考:建築学科の就活先|ゼネコンとインフラ企業の違いを経験者が解説

 

筆者が勤務したインフラ企業では、ヒエラルキーは系統の社員数で決まっていました。

ヒエラルキーの違いが、能力評価や業績評価に大きく影響します。

系統の規模(社員数)がモノを言う差別ですので、業務効率化による社員数の削減はまったく進みません。

 

 

③ジェネラリストとスペシャリストの間の差別

日本には何故か、ジェネラリストの方がスペシャリストよりヒエラルキーが上という認知バイアスが存在します。

そして、選別主義が定着している大企業(JTC)では、「学歴、性別、経営者のカンと好み」で入社時に幹部候補生を選別して、エリート・ジェネラリスト※3に仕立て上げます。

 

※3 実は、欧米には日本の「ジェネラリスト」という概念はありません。したがって、ジェネラリストをスペシャリストと明確に区分するのは日本だけです。これは、雇用形態の違い、すなわち日本のメンバーシップ型と欧米のジョブ型の違いに起因します。日本のように新卒一括採用で労働力をとりあえず確保し、会社の都合で仕事を割り振るため、数年で仕事の内容がコロコロ変わることもあります。そのため日本のホワイトカラーは、結果的に、多かれ少なかれジェネラリスト化しています。ジェネラリストという言葉は聞こえはいいですが、結局、身に付いたスキルは大したことの無い素人集団と言わざるを得ません。欧米では、日本のホワイトカラーのようにコロコロ仕事が変わると、無能のレッテルを貼られてしまいます。

 

短いタームで花形ポストを巡っただけのエリート・ジェネラリストは、広く浅い経験と知識しか持たない素人集団です。

その素人集団が、日系の伝統的な大企業(JTC)では君臨しています。

こぼれ話

ジェネラリスト(万能型秀才)は、現在のポスト工業社会では通用しない

ジェネラリストとは、万能型の優秀さを備えた人材です。

しかし、その万能型が通用したのは、遥か昔1970年代以前の工業社会です。

工業社会とは、人口増による内需拡大により、良い商品をつくれば簡単に売れた少品種大量生産の時代です。

今や「単純に必要なモノが売れる」時代ではなく、「モノが溢れ、需要を創造しなければ売れない」ポスト工業社会です。

ポスト工業社会においては、多様化し専門化された変化の激しいニーズに対応できなければ、商品は売れません。

そのため、広く浅い知識と経験しか持ち合わせない万能型のアプローチは全く役立たないのです。

 

 

④スタッフ部門とライン部門の間の差別

責任を取らないくせに偉そうに口だけ出すスタッフ部門の連中(イメージ)

筆者が勤務したインフラ企業では、事務系のエリート・ジェネラリストが幅を利かせているのが、スタッフ部門(バックオフィス又は管理部門)でした。

スタッフ部門とは、直接売上に結びつかない会社の管理を任される部署のことをいいます。

具体的には、以下のような部署です。

経営企画部、秘書部、広報部、人事部、総務部、財務部、法務部、監査部

スタッフ部門は本来、売上と利益を生むライン部門をサポートすることが主な役割とされています。

しかし、将来を約束された幹部候補が集結しているため権力が集中し、素人集団が専門家集団であるライン部門を指導・管理する立場※4 になっています。

 

※4 別の言い方をすれば、”スタッフ部門全体”が社長の側近として参謀役および補佐役を担う状態になっているということです。本来、参謀役と補佐役はスタッフ部門の一部のはずです。

 

彼らはライン部門の経験もないくせに、ラインの仕事に口を出す権限を持ち、しかも責任は取らなくてよいという特権階級です。

この特権のおかけで彼らは減点主義を切り抜け、業績をでっち上げて出世していくわけです。

こぼれ話

すごろく上がりのサラリーマン社長もスタッフ畑出身者が多い

インフラ企業(JTC)の社長は、やはり幹部候補が集まるスタッフ畑の出身者が一般的です。

そのため、ますますスタッフ部門の権限が大きくなります。

参考:【就活】大企業(JTC)すごろく上がりのサラリーマン社長の弊害とは?

⑤新卒プロパー社員と中途社員の間の差別

転職先では、前職での勤務年数は無かったこととなり、昇格(年功序列)の順番待ち行列の最後尾に並ばなければなりません。

この言い方は、ちょっと大袈裟かもしれませんが、いずれにしても定年まで準メンバー(外様扱い)で、正メンバー扱はされません。

その結果、不条理な能力評価や業績評価に甘んじることになります。

アルムナイ(出戻り入社の裏切り者)の場合は、一般の中途社員より更にキツイ仕打ちが待っていることもあります。

欧米では考えられないこう言った差別は、大企業の転職者比率が少なくても5割に到達しないと無くならないでしょう。

こぼれ話

2021年4月から中途採用比率の公表が義務化(労働施策総合推進法の改正)

中途採用比率を公表させることによって、中途採用比率の低い会社が能力主義ではなく年功序列の会社と見なされる可能性があるため、ひとつの牽制になります。

政府は、この公表義務化を通じて、労働市場での通年採用を促し、中途採用の拡大を目指しています。

まとめ

筆者が勤務したインフラ企業(JTC)では、以下5つの差別が絡み合った身分制度が存在しました。

①事務系と技術系の間の差別

②技術系の系統間の差別

③ジェネラリストとスペシャリストの間の差別

④スタッフ部門(バックオフィス又は管理部門)とライン部門の間の差別

⑤新卒プロパー社員と中途社員の間の差別