リクルートワークス研究所の調査によると、従業員数300人未満の企業では求人倍率が約6倍と非常に高く、売り手市場ですが、一方で5000人以上の大企業では求人倍率が約0.4倍と、超買い手市場になっています。
こんな人気の高い誰もが知っている大企業に就職できれば、高いステータスや高い給与など恵まれた待遇を得ることができるので、確かに「勝ち組」と言えます。
ただし、実際に就職すると、厳しい現実が待っています。
こころの底から喜んでいられるのは、内定が出てから新入社員研修が終わるまでです。
※JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング
(注)建設業界はこの記事の対象外です。
建設業界に関心のある方は、建築学科の就活先|ゼネコンの良い点と悪い点を経験者が解説をご覧ください。
40年間で2社の大企業(JTC)に勤務経験がある筆者が、大企業に就職できた「勝ち組」がたどる3つのコースについて解説します。
<自己紹介>
筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴16年 ボクシング歴10年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
大企業(JTC)に就職できた「勝ち組」がたどる3つのコースとは?
①「エリート・ジェネラリス」特権階級コース
大企業(JTC)では採用の段階で、偏差値70以上の高学歴者(主に文系)の中から役員候補が選別されます(社員を選別して処遇に差をつける選別主義の典型)。
彼らは、人事部長や役員、社長など組織権力のカンと好みで選ばれた特権階級です。
(大企業は前近代的な身分社会です。関連記事:【就活】大企業(JTC)の知られざる身分制度【経験者が実態を解説】)
特権階級の彼らには、主要ポストを広く浅く巡るキャリアパスが用意されており、実務を熟知した部下に守られながら出世街道を進みます。
ただし、全員が役員になれるわけではありません。
また、役員になったとしても、平の役員に留まるか、常務や専務へと昇格するかは、激しい出世競争(忖度や社内営業合戦)の結果次第です。
彼ら特権階級は、ライバル意識が強くストレスも並大抵ではありません。
この特権階級の中から、減点主義による評価を切り抜け、前社長など組織権力に評価されて、すごろく上がりのサラリーマン社長が選ばれます。
評価のポイントは、そつの無い忖度ができる人柄やバランス感覚、決して無理をしない安全志向の性格などです。
かれらは、外資系企業やベンチャー企業の社長とは違い、経営のスペシャリストではありません。
決してリスクを取ることなく、「任期中、大過なく」を目指して現状維持に終始します。
なぜJTCは凡庸なサラリーマン社長でも潰れないのか?
3つの理由です。
①社長の能力とは無関係の恵まれた経営資源(下請けからの搾取構造を含む)
②給料を上げずに、社員(特に非正規)から搾取し続けて貯め込んだ厚い内部留保
その証拠が、世界的に見て低い日本の賃金水準です(下図参照)。
【OECD加盟国35カ国の平均年収ランキング】凡例:日本赤OECD平均青
給与を抑制し、内部留保を増やすことで、どんなに怠慢な経営であっても、容易には現在の体制が崩壊しないような構造が築かれています(下図参照)。
【内部留保と粗利に占める人件費比率】凡例:内部留保青人件費率ピンク
引用:積みあがる内部留保|リクルートワークス研究所 (works-i.com)
③政権を守るために潰れるべきJTCを税金で救ってリスクを先送りしたり、票や政治献金と引き換えにJTCを優遇する悪政政党『自民党』政権
自民党議員と大企業(JTC)の特権階級(上層部)は体質がそっくりです。
国民や社員の為ではなく、自分たちの利権や特権を守ることしか考えていません。
②「働きアリ」コース
大多数の社員が、このコースをたどります。
「働きアリ」コースと言っても、忙しく働くという意味ではなく、女王アリにお仕えするアリという意味です。
このコースの社員は、「エリート・ジェネラリス」コースの連中に従順に従い、不条理なダブルバインドにも耐える見返りとして、世間一般より恵まれた給与などの待遇を得ます。
このように彼らの主な仕事は、特権階級「エリート・ジェネラリス」のお世話をすることなので、別名「奴隷」コースとも言います。
かれらは、「働きアリ」コースの最上位の階層である部長クラスを目指しますが、「エリート・ジェネラリス」コースからも脱落者が多数降ってきますので容易なことではありません。
手を変え品を変えの忖度や忠誠心で競い合います。
(大企業(JTC)には、合理的な能力評価や業績評価は機能しておらず、実際には上司の主観に基づく評価、つまり情意評価が行われています。)
そして最終的には殆どの管理職が、つらくてみじめな役職定年を迎えることになります。
このコースをたどった大半の会社員は、大企業という閉鎖的な「共同体」の世間離れした常識に順応し過ぎて、定年後は一般社会に馴染めず、社会的断絶や孤独を感じることになります。
③「スピンアウト」コース
せっかく「エリート・ジェネラリス」に選ばれても、大企業病や市場価値あるスキルが身に付かない環境に耐えかねて早めに退職する有能な社員もいます。
筆者の勤め先では、司法試験を受けて合格し弁護士になった人、外資系企業に転職した人、起業した人などがいました。
「働きアリ」コースからスピンアウトする人はほとんどいませんが(転職しても給料が下がるので我慢です)、大企業(JTC)の不条理に耐えかねてメンタルをやられて退職する人は稀にいます。
まとめ
大企業に就職できた「勝ち組」がたどる3つのコースです。
①「エリート・ジェネラリス」特権階級コース
②「働きアリ」コース
③「スピンアウト」コース
「いいことがあれば悪いこともある」これが人生です。