大企業(JTC※)に就職すると、恵まれた待遇を得ることができますが、一方で、市場価値の無い時代遅れのジェネラリストにしかなれません。
※JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング
ジェネラリストとは、「多岐にわたる分野に精通し、幅広い知識を持っている人」と一般的には定義されていますが、裏返して言えば「市場価値のあるスキルを持たない中途半端な何でも屋」とも言えます。
ジェネラリストの時代は終わったと言われつつ何も変わらないまま失われた30年が過ぎ去り、日本は凋落の一途をたどっています(関連記事:【就活】大企業(JTC)の社員奴隷化システムが日本を凋落させる理由)。
大企業(JTC)至上主義の就活生の方や既に大企業(JTC)に就職して違和感を感じている若手サラリーマンの方は、この記事を読んで自身の価値観を見つめ直してみて下さい。
②大企業(JTC)にお勤めの若手サラリーマンの方
②大企業(JTC)のジェネラリスト~誰も知らないその弊害とは?
③やっとスペシャリストの時代へ~変化の兆し
大企業(JTC)での長年の勤務経験を持つ筆者が、大企業のジェネラリストは終わった!誰も知らないその正体と弊害について解説します。
<自己紹介>
筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
大企業(JTC)のジェネラリスト~誰も知らないその正体とは?
①サラリーマンという名のジェネラリスト
実は、「多岐にわたる分野に精通し、幅広い知識を持っている人」を意味する「ジェネラリスト」という言葉は和製英語なんです(ついでに言うと「サラリーマン」も和製英語です)。
欧米を始め日本以外の国には、「ジェネラリスト」なんていう概念は存在しません。
「ジェネラリスト」という概念は、日本だけが採用している雇用システムであるメンバーシップ型雇用が生み出したもであり、日本だけに存在する概念です。
メンバーシップ型雇用とは、新卒一括採用した社員を終身雇用と年功序列を餌に、長期にわたって囲い込む日本だけが採用している雇用システムです。
この雇用システムは、第二次大戦後の高度経済成長期に広がったシステムで、戦後の貴重な労働力を長期安定的に確保することが目的でした。
最大の特徴は、個人の希望とは関係なく、会社の都合で勝手に仕事を割り振られ、実質文句は言えない点にあります(文句を言えば人事評価に✖が付きます)。
異動のたびに仕事の内容が変わることが多いため、社員は中途半端なスキルを持った「何でも屋の素人集団」となります。
これがジェネラリストの正体なのです。
言ってみれば「ジェネラリスト」とは、日本型雇用システム(メンバーシップ型雇用)の犠牲になった、これといった専門スキルを持たない市場価値の無いサラリーマンなのです。
ゼネラリストとスペシャリストは役割が違うので両方必要だという日系企業の考え方は、社員を丸抱えしてきた古い時代の会社都合の発想です。
②ジェネラリストの中のジェネラリスト~エリート・ジェネラリストとは?
大企業(JTC)では採用時点で、学歴、性別、上層部の「好みとカン」などで、将来の幹部候補を選別します(関連記事:日本凋落の原因【日本にGAFA生まれない理由】選別主義の実像)。
彼らは「本社組(官僚組織のキャリア組に相当)」などと呼ばれ、主要ポストを巡るキャリアパスが用意されています。
彼らが実際に自分の手を汚して仕事をすることはありませんので、実務は全く知りません。
ですから、彼らが失点を犯さないよう、実務に精通した有能な部下(JTCにも貴重なスペシャリストは少数ですが存在します。ただし、不遇です。)を付けることが一般的です。
彼らを称して、この記事では、エリート・ジェネラリストと呼びます。
「素人」という点で、彼らは一般的なジェネラリストの上を行きます。
「万能型の有能」という日本の迷信
どういう訳か日本には、「万能型の有能」という考え方が根強く残っています。
エリート・ジェネラリストに代表されるような優等生型の秀才は、チャットGPTみたいなもので、過去のデータからしか論理が組み立てられないため、答えの無い問題を解決する能力や新しい市場を開拓するような創造力は持ち合わせていません。
1980年代以前の工業社会は、少品種大量生産で経済が回っていたため優等生型でも通用しましたが、現在のように需要が飽和状態で、ニーズの多様化・専門化の時代には全く通用しません。
凋落の一途をたどる日本は、「万能型の有能」なんて言う迷信から早く目を覚ます必要があります。
大企業(JTC)のジェネラリスト~誰も知らないその弊害とは?
まず、橘玲著『働き方2.0vs4.0』から引用します。
知識社会が高度化するにつれてより高い専門性が求められるようになり、「ジェネラリスト」がさまざまな場面でビジネスの障害になっています。
日本の会社が海外企業とコンテンツ契約を結ぶ場合、法務部が対応しますが、その社員は文学部や教養学部を出た学士です。
それに対していまでは中国などアジアの国でも、交渉を担当するのは国際法を学んだ弁護士資格者なのです。
このように、「ジェネラリスト」によって日本の国力はどんどん低下しています。
では何故、日系企業に「ジェネラリスト」は居座り続けるのでしょうか?
答えは簡単です。
日系企業(JTC)の経営者は全てエリート・ジェネラリストだからです。
彼らが、自身の存在価値を否定することは決してしありません。
そして、日系企業の管理職は、実務を知らないジェネラリスト・マネジャーばかりなので、ブルシットジョブを大量に生み出します(欧米などではスペシャリストがマネジメントの経験を積んでマネジャーになるのが普通)。
日本の労働生産性の低さ、特にホワイトカラーの生産性の低さがそれを物語っています(関連記事:低い日本の労働生産性~「量」「質」国際比較)
2015年に起きた電通の過労自殺事件は、素人集団ジェネラリストの弊害を象徴しています。
入社わずか8ヶ月の女性社員がクリスマスの晩に投身自殺しました。
彼女は、当時、広告媒体が従来のテレビ・新聞・雑誌から急速にインターネットにシフトしたため、これまでとは全く違う新しいビジネスモデル構築に取り組んでいました。
IT技術のスペシャリストがいれば、このような事態にはならなかったはずです。
素人同然の部下が、素人同然の上司に振り回されて、長時間労働で削られ犠牲になった典型例です。
このように、遥か昔の経済成長期に機能したジェネラリストの時代から、ポスト工業時代に適応したスペシャリストの時代に切り替えられないJTCは、日本凋落の大きな要因です。
しかし、硬直的なJTCもさすがに時代の流れには逆らえないようです。
次項では、ジェネラリストの時代からスペシャリストの時代への変化の兆しをご紹介します。
やっとスペシャリストの時代へ~変化の兆し
ジェネラリストの時代からスペシャリストの時代への「変化の兆し」を以下3点ご紹介します。
①NTTグループの『専門性を軸とした人事給与制度への見直し』
②メガバンクの大量中途採用の実施
③最近の転職市場の活性化
①NTTグループの『専門性を軸とした人事給与制度への見直し』
NTTグループが導入した「専門性を軸とした人事給与制度への見直し」とは、社員の専門性とスキルの向上を促し、多様なキャリアを自律的に構築することで高い付加価値を創出するための新しい制度です。
2023年4月から導入され、年次や年齢ではなく専門性を重視した評価や給与、人事異動が行われるようになります。
具体的には、18の専門分野ごとに設定された「グレード基準」に基づき、専門性の獲得と発揮度に応じて昇格・昇給が行われる仕組みとなっています。
素人集団ジェネラリストが相変わらずの上から目線で、スペシャリストの活躍を邪魔しないことをお祈り申し上げます(笑)。
②メガバンクの大量中途採用の実施
純血主義、アンチ転職主義企業の代表格であるメガバンクが一斉に大量の中途採用を開始しました(下のグラフ参照)。
引用:3メガバンクが中途採用を拡大、狙いは? - 日本経済新聞 (nikkei.com)
ニーズの多様化・専門化と加速する変化の速さに対応するためには、専門性と即戦力がこれまで以上に必要となり、従来の「社内のジェネラリスト+下請け業者」方式では対応できないことが理由です。
いまだメガバンク社内で大勢を占めるアンチ転職組に囲まれて、「有能な中途社員が適正な評価と待遇を受けられない」なんてことがあれば、メガバンクの将来も危ういでしょう。
旧態依然としたメガバンクが生き残っていくには、本当はもっと大胆な変革が必要なんですが・・・無理でしょうね(笑)。
③最近の転職市場の活性化
最近やたらと転職サイトや転職エージェントの広告やCMが目に付きませんか?
これは、日本でも転職市場が活性化してきた証拠です。
転職がいまだに普通ではない日本では、あまり知られていませんが、ジェネラリストは転職できません(20代ならまだポテンシャル採用が可能ですが)。
なぜなら、これまで在籍した会社でしか通用しないスキルしか身に付いていないジェネラリストは、他の会社では(中小企業も含めて)使い物にならないからです。
転職市場とは、市場価値のあるスキルを持ったスペシャリストだけの世界なのです。
アメリカのように、キャリアプランでゴールを目指す働き方の時代も遠からず到来します。
まとめ
✔大企業(JTC)のジェネラリスト~誰も知らないその正体とは?
・「ジェネラリスト」とは、日本型雇用システム(メンバーシップ型雇用)の犠牲になった、これといった専門スキルを持たない市場価値の無いサラリーマン
・JTCの経営陣は、幹部候補として採用時に選別され、素人集団エリート・ジェネラリストに育成されたサラリーマン(外資系企業やベンチャー系企業のCEOのように、経営のスペシャリストではありません)
✔大企業(JTC)のジェネラリスト~誰も知らないその弊害とは?
専門性の低さによるさまざまなビジネス上の障害
具体的には、
・交渉力の低さによる国際競争力の低下
・スペシャリスト不在による大量のブルシットジョブと長時間労働
⇒ ホワイトカラーの労働生産性の低下
✔やっとスペシャリストの時代へ~変化の兆し
①NTTグループの『専門性を軸とした人事給与制度への見直し』
②メガバンクの大量中途採用の実施
③最近の転職市場の活性化