ながら江雪の人生ノート

現役サラリーマンと定年シニアのお悩み解決

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70歳まで雇用延長時代はこうなる!消える人と生き残る人の違いとは?

「70歳まで雇用延長の時代」が到来します。

「70歳まで雇ってもらえて安心だ」

なんて甘い考えでいると大変なことになります。

今でも、早期退職制度や役職定年制度を導入して、シニア社員の人件費削減に躍起になっている企業側が、無条件で70歳まで希望者全員を雇うはずがありません。

企業側は、あの手この手でシニア社員の追い出しにかかります。

この記事を読めば、「70歳まで雇用延長の時代」を乗り切るヒントが分かります。
 

■この記事を読んで頂きたい人■
・主に大企業(JTC※)にお勤めのサラリーマン
※JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング
 
 
■この記事でわかること■
①70歳まで雇用延長時代に企業が選択できる5つの措置

②70歳まで雇用延長時代の「2つの人件費対策」とは?

③70歳まで雇用延長時代に消える人と生き残る人の違いとは?
 

不条理な異動が原因で早期退職した(実質的には追い出された)筆者が、70歳まで雇用延長時代はこうなる!消える人と生き残る人の違いについて解説します。

<自己紹介>

筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職

 

      

 目次

70歳まで雇用延長時代に企業が選択できる5つの措置

2020年改正高齢者雇用安定法が成立し、「70歳までの就業機会確保措置」(2021年4月施行)が努力義務化されました。

この改正法によると、70歳まで雇用延長する方法として企業が選択できる5つの措置は以下になります。

(1)70 歳までの 定年の引上げ

(2)定年制 の廃止

(3)70 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)

(4)70 歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

(5)70 歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

a.事業主が自ら実施する社会貢献事業

b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

現時点では努力義務ですが、人事戦略研究所:人事制度改革 (jinji.jp)によると、2034年頃には希望者全員を雇用するような法的義務化に移行する可能性が高いとのことです。

この年は、いわゆる団塊ジュニアと呼ばれる労働人口構成のボリュームゾーンである1971年から1974年生まれの世代が、65歳を迎える直前にあたります。

2034年頃までに、メンバーシップ型雇用(新卒一括採用+終身雇用+年功序列)が完全に崩壊するとは考えられません。

したがって、

(1)70 歳までの 定年の引上げ

(2)定年制 の廃止

を企業側が選択する可能性は少ないでしょう。

(3)70 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

の選択が現実的です。

 

 

70歳まで雇用延長時代の「2つの人件費対策」とは?

過去30年間、日本企業の経営は賃金水準の抑制によって支えられてきました。

下のグラフをご覧ください。

ここ30年間の日本の平均賃金は、ほとんど増えていません。

引用:主要国の平均賃金(年収)の推移 【西日本新聞me】 (nishinippon.co.jp)

その結果、日本の賃金水準は世界的に見て、かなり低くなってしまいました(下図参照)。

【OECD各国の平均賃金(2021年・ドル換算)】

引用:日本の平均賃金はG7の中でダントツ最下位 世界の中では何位? | Mocha(モカ) (fpcafe.jp)

賃金を抑制し、内部留保を増やすことで、どんなに怠慢な経営であっても、容易には経営破綻しないような構造が築かれています(下図参照)。

【内部留保と粗利に占める人件費比率】凡例:内部留保人件費率ピンク

引用:積みあがる内部留保|リクルートワークス研究所 (works-i.com)

このように賃金を抑制して社員を大切にしない日本企業、特に大企業(JTC)が、「70歳まで雇用延長時代」にとる人件費対策はどんなものになるのでしょうか?

以下、筆者が予想する「企業側の2つの人件費対策」について解説します。

 

 

①成果主義を利用した役職定年対象年齢の拡大

70歳まで雇用延長の時代に、役職定年制度を今のままにしておけば、今後、以下のような状況が起こります。

①50代で役職定年になれば、70歳まで最悪20年近く「給料が下がり、部下を失って、モチベーションがすっかり落ちた部長以下の元管理職が場合によっては同じ職場に居続ける」ことになる

②それを見た社員のモチベーションは当然下がり、もともと低い従業員エンゲージメント は底をつく

このように、役職定年制が限界なのは明らかです。

次の展開は、役職定年制を廃止して成果主義(=年功序列の廃止)の導入です。

すでにパナソニックなどが、この展開で成果主義を導入しています。

表向きには、役職定年という年齢差別をなくし、年齢にかかわらず成果や能力に基づいて賃金や役職を決定することが目的です。

しかし、その裏では、役職定年の対象年齢を広げることで人件費削減を目指しているのです。

②40~50代の早期・希望退職募集の拡大

下のグラフは、上場企業におけるリストラ(早期・希望退職による40~50代社員の追い出し)の推移です。

棒グラフはリストラを実施した企業の数を示し、折れ線グラフはリストラされた人数を表しています。

引用:株式会社東京商工リサーチホームページ  TSRデータインサイト 2024年は上半期(1‐6月)

このグラフによると、リーマンショックや新型コロナウイルス感染症の拡大といった一時的な経営環境の悪化がないにもかかわらず、今年(2024年)の希望退職募集人数は上半期(1~6月)だけで既に前年比1.5倍に増加し、年間1万人を超えるペースで進行中です。

この背景には、リストラ(早期・希望退職による40~50代社員の追い出し)の目的が以下のように変化していることが一つの要因として挙げられます。

【従来の目的】

一時的な経営悪化を生産性が低い割に人件費が高い社員の削減でカバー

【これからの目的】

①70歳まで雇用延長時代を見越して、今のうちに生産性が低い割に人件費が高い社員を追い出す

②最新の技術に対応し競争力を維持するために、社員のスキルセット(※)を見直す

(※)仕事を遂行する上で必要とされる知識や技能の集合体

⇒ 人件費が高いだけで専門スキルが無く使い物にならない社員を追い出して、専門スキルと即戦力のある中途社員を大量に採用する

このようなリストラによる40~50代社員の追い出しは、ますます増えていきます。

 

 

70歳まで雇用延長時代に消える人と生き残る人の違いとは?


70歳まで雇用延長時代に消える人と生き残る人の違いを下の表にまとめました。

以下、解説します。

消える人とは?

消える人は、大企業(JTC)でよく見られるタイプで、会社というムラ社会(共同体)での処世術だけに長けたジェネラリスです。

このタイプは、出世すればするほど仕事は部下に丸投げできるので楽になると、勘違いしている人たちです。

彼らは、なんら専門スキルを持たない日本の典型的なジェネラリスト(仕事を知らない素人集団)であるため、部下への適切な指示やフォローができず、「なんとかしろ」という昔ながらの精神論でリーダーシップを発揮します。

70歳まで雇用延長時代は、もはや時代に合わない日本式雇用システムであるメンバー型雇用(新卒一括採用+終身雇用+年功序列)の崩壊に拍車をかけます。

今後は、ジョブ型、自営型、あるいはプロジェクト型など新しい雇用システムに変わっていきます。

特に大企業(JTC)の一般的なジェネラリスト、すなわち市場価値のある専門スキルを持たない人は、ある年齢になれば降格やリストラの対象になり、転職もできないため消える運命です。

こぼれ話

「ジェネラリスト」は和製英語

欧米には、ジェネラリストはいません。

これは、雇用形態の違い、すなわち日本のメンバーシップ型と欧米のジョブ型の違いに起因します。

日本のように新卒一括採用で労働力をとりあえず確保し、会社側の都合で仕事を割り振るため、数年で仕事の内容がコロコロ変わることもあります。

そのため日本のホワイトカラーは、結果的に、多かれ少なかれジェネラリスト(素人集団)化しています。

ジェネラリストという言葉は聞こえはいいですが、結局、身に付いたスキルは会社というムラ社会(共同体)で生き延びるための処世術だけです。

欧米では、日本のホワイトカラーのようにコロコロ仕事が変わると、無能のレッテルを貼られてしまいます。

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生き残る人とは?

生き残る人は、外資系企業、メガベンチャー、競争力のある中小企業などでよく見られるタイプで、会社ではなく「職種※」と「結婚」しているスペシャリストです。

※例えば、営業職、経理、企画・管理、事務・アシスタント、販売・サービス職、専門職(コンサルタントや監査法人など)、金融系専門職、技術職、医療系専門職、クリエイター・クリエイティブ職など

このタイプは、キャリアプランの主導権を会社に委ねることなく自らが保持してキャリアアップを目指すので、当然転職経験もあります。

また、管理職に昇進しても、プレイングマネジャーとして部下と協力して仕事をするため、スキルの市場価値を維持することが可能です。

今後、ジョブ型、自営型、あるいはプロジェクト型など新しい雇用システムに変われば、更に力を発揮する場も増えて、余裕で生き残れます。

早期退職で割り増し退職金をゲットして、更に転職で給与アップする「早期退職成金」も夢ではありません。

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まとめ

70歳まで雇用延長時代の「2つの人件費対策」とは?

①成果主義を利用した役職定年対象年齢の拡大

②40~50代の早期・希望退職募集の拡大

70歳まで雇用延長時代に消える人と生き残る人の違いとは?

【消える人】

・市場価値のある専門スキルを持たないジェネラリスト

・特に、部下をアゴでつかう管理職

【生き残る人】

・市場価値のある専門スキルを持つスぺシャリス

・特に、部下と協力して仕事をすることにより、専門スキルの市場価値を低下させないプレイングマネジャー