「失われた30年」と言われ始めて久しいものの、なんら回復の兆しは見られません。
何ら手を打たない会社にすがっていてもリスクは増すばかりです。
大企業神話が崩壊したのは、もはや明らかです。
この記事を読めば、不確実な会社に依存しない生き方のヒントが得られます。
※JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング
②失われた30年に続く時代は会社依存が危険な理由とは?
③失われた30年に続く時代を乗り切るための対策とは?
失われた30年の間、大企業(JTC)で飼殺されて気づいた時には手遅れだった筆者が、失われた30年に続く時代は会社依存が危険な理由とその対策について解説します。
<自己紹介>
筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
失われた30年の間、大企業(JTC)の経営者たちは一体全体何をやってきたのか?
失われた30年とは、バブル経済崩壊後の1990年代初頭から2020年代初頭までを指します。
この間の日本の凋落ぶり(世界競争力、時価総額、名目GDP)は、目に余るものがあります。
この日本凋落の原因は、完全に時代遅れになったメンバーシップ型雇用(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)※を柱とする日本式経営をズルズルと続けた結果、労働生産性が著しく低下したことにあります(関連記事:著しく低い日本の労働生産性~「量」「質」国際比較)。
※ 人口の増加に伴って内需が拡大した戦後40年間は、メンバーシップ型雇用が期待以上の効果を上げて日本経済の奇跡的な成長を支えました。このあまりにも大きな成功体験が、その後経営環境が変わってもメンバーシップ型雇用を捨てられなかった原因です。
そして、そのA級戦犯は、すごろく上がりのサラリーマン社長を筆頭とする「名ばかり経営者」※※と言わざるをえません。
※※ 大企業のほとんどの経営者は、経営のスペシャリストではありません。彼らは、共同体と化した会社の特異なルールに則った出世競争で勝ち残り、経営者の地位を獲得した権力志向の強い人たちです。決して経営の手腕が評価されてその地位を得たわけではありません。そのため、彼らはリスクを取って企業成長を目指すようなことは考えません。「出世すごろく」であがってしまえば、あとは「任期中、大過なく」過ごすだけの保身に長けた管理者です。起業家あがりの社長(京セラの稲盛和夫氏やユニクロの柳井正氏など)や外資系企業のCEOなどに招へいされる経営のスペシャリストとは全く違います。
無責任な「名ばかり経営者」による「問題のバトンリレー(先送り)」が30年も続いた結果、メンバーシップ型雇用を変えようにも変えられない状況に陥っています。
失われた30年の間、大企業(JTC)の経営者たちがやってきたこととは、以下の通りです。
・リスクを取って企業成長を目指さないのでロクな仕事も無いのに、有能な新卒を大量に採用して長年にわたって囲い込み、非効率なワークシェアリングで労働生産性を著しく低下させてきた
・「御用組合」※※※と結託して、「労働を守る」という大義名分の名のもとに、優秀な人材を大量に飼い殺して新しい市場創出の芽を摘み、日本の凋落を招いた※※※ 御用組合(ごようくみあい)とは、雇用者側が実権を握る労働組合を指します。これは、俗に黄色組合(おうしょくくみあい)とも呼ばれ、雇用者による直接的または間接的な支配が行われている組合です。御用組合は国際労働機関の98号条約に違反するとされ、労働者の自由な団結権を侵害するものと認識されています。
失われた30年に続く時代は会社依存が危険な理由とは?
橘玲氏が著書『貧乏はお金持ち』で、メンバーシップ型雇用を以下のように喩えています。
街の真ん中に大きな映画館があったとしよう。
人気の映画が上映されていて、館内は立錐(りっすい)の余地もないほど超満員で、映画館の外には入場を待つひとが列をなしている。
ところがこの映画の上映時間はものすごく長くて、待っているひとたちはいつまで経っても中に入ることができない・・・・。
(中略)
この映画館は少しずつ縮んでいて、出口付近でしがみついていたひとが次々と外に押し出されていく。
そしてたいていの場合、上映されている映画はものすごくつまらない。
観客の目的は映画を楽しむことではなく、映画館の中にとどまることだからだ。
(中略)
もうおわかりのように、この映画館は「終身雇用劇場」の看板を掲げ、上映されているのは「年功序列とともに」という長尺の映画だ。
この比喩は、まさに正鵠を射ており、40年間も「ものすごくつまらない映画」を実際に見ていた筆者も深い共感を覚えますが、失われた30年に続くこれから時代は、すこし様子が変わってきます。
これからは、映画館の外で待っているひと(若者たち)を優先して入場させ、そのかわり座席にどっしり座っていたひと(40代以上の社員)がどんどん追い出されます。
その兆候は、以下のように現れています。
・東京商工リサーチによると、2024年11月現在における上場企業の早期・希望退職募集の対象人数は既に9,219人に達しており、2021年以来3年ぶりに1万人を超える見込み
・一方で、大企業では大卒初任給を大幅に引き上げる動きがある
メンバーシップ型雇用で長期間囲い込んだ社員の人件費負担に耐え切れなくなった日本企業が、給料の割に生産性の低い社員(40代以上の社員)を追い出す一方で、初任給をあげて優秀な若手を囲い込み始めたわけです。
結局は、経営陣の無策のツケが40代以上の社員に回って来るだけで、失われた30年は延長確実です。
失われた30年に続く時代は、会社依存が危険な理由を以下に要約しました。
・いつまでたってもメンバーシップ型雇用を抜本的に改革できない経営陣のツケが回って、給料の割に生産性の低い社員(40代以上の社員)はどんどん追い出される
・追い出されなかったとしても給与改定方式が導入され、給与の減額も当たり前になる
・そして、市場価値のある専門スキルを持たない「ジェネラリスト」「ホワイトカラー」「従来型の中間管理職」たちは生成AIに仕事を奪われて、やがて絶滅する
失われた30年に続く時代を乗り切るための対策とは?
失われた30年に続く時代を乗り切るための対策とは、次の通りです。
①「会社」依存ではなく、「職能」依存でキャリアを積む
②そのために、キャリアプランを自ら立ててゴールを目指す
①「会社」依存ではなく、「職能」依存でキャリアを積む
「会社」ではなく「職能※」に依存して専門スキルを身に付けていれば、仮にリストラにあっても転職(転社)はそれほど難しくないでしょう。
※ 職能とは、特定の職務や仕事を遂行するために必要な能力やスキル、知識のことを指します。例えば、ソフトウェア開発職能(プログラミングスキル)、会計職能(経理知識)、営業職能(プレゼンテーション能力)など
「会社」に依存して滅私奉公し、その見返りを定年まで期待しても、もはや会社にその体力はありません。
すごろく上がりのサラリーマン社長を筆頭とする「名ばかり経営者」(前出)では、現状維持がやっとで、会社はじり貧状態だからです。
「不活性人材」はリストラの標的
不活性化人材※※とは、様々な理由で組織内の適した仕事がなかったり割り振られない状態になっているため、業務に対する意欲やモチベーションが低下している人材を指します。
彼らは本来持っているポテンシャルを発揮できず、組織全体のパフォーマにも悪影響を及ぼすため真っ先にリストラの対象になります。
※※ 内閣府ではこうした「不活性人材」のことを『雇用保蔵者数(企業が労働者を採用したものの、その労働者に能力に見合った生産を挙げられるだけの業務を任せずに保蔵している数)』と定義し、データとして推計しています。平成21年の調査では、合計528万人~607万人が雇用保蔵者、すなわち「不活性人材」とされています。
しかし、上司と馬が合わなければ勝手に「不活性人材」の烙印を押されることもあります。
大企業(JTC)では、こんな不条理はよくある話です。
「職能」に依存していれば、こんなリスクも転職(転社)で回避できます。
②そのために、キャリアプランを自ら立ててゴールを目指す
メンバーシップ型雇用では、キャリアプランの主導権は会社が握っています。
そのキャリアプランは会社都合であるため、個人の希望はなんら反映されません。
会社の奴隷となって、言われるがままに異動を繰り返していると、ジェネラリストという名の「何でも屋の素人」になってしまいます。
こうなると、リストラされた場合、専門スキルが無いため転職(転社)は不可能で路頭に迷うことになります。
キャリアプランを自ら立ててゴールを目指す働き方とは、会社にしがみつく働き方とは真逆で、むしろ積極的に転職(転社)して、自分の専門スキルを磨く働き方です。
転職(転社)は、キャリアの形成において不利という時代は終焉を迎え、むしろ転職(転社)しないリスクが増大し始めています。
会社に依存したホワイトカラー(事務系サラリーマン)という市場価値の無い職能は、早晩表舞台から退場することになるでしょう。
まとめ
✔失われた30年の間、大企業(JTC)の経営者たちは一体全体何をやってきたのか?
・リスクを取って企業成長を目指さないのでロクな仕事も無いのに、有能な新卒を大量に採用して長年にわたって囲い込み、非効率なワークシェアリングで労働生産性を著しく低下させてきた
・「御用組合」と結託して、「労働を守る」という大義名分の名のもとに、優秀な人材を大量に飼い殺して新しい市場創出の芽を摘み、日本の凋落を招いた
✔失われた30年に続く時代は会社依存が危険な理由とは?
・いつまでたってもメンバーシップ型雇用を抜本的に改革できない経営陣のツケが回って、給料の割に生産性の低い社員(40代以上の社員)はどんどん追い出される
・追い出されなかったとしても給与改定方式が導入され、給与の減額も当たり前になる
・そして、市場価値のある専門スキルを持たない「ジェネラリスト」「ホワイトカラー」「従来型の中間管理職」たちは生成AIに仕事を奪われて、やがて絶滅する
✔失われた30年に続く時代を乗り切るための対策とは?
①「会社」依存ではなく、「職能」依存でキャリアを積む
②そのために、キャリアプランを自ら立ててゴールを目指す
これからは、生成AIに多くの仕事が取って代わられる一方で、個人の専門スキルを活かしたギグ・エコノミー※的な新たな働き方も増えていきます。
※「ギグ・エコノミー」(Gig Economy)とは、短期的な契約やフリーランスの仕事(ギグ)を中心に成り立つ経済形態を指します。伝統的なフルタイムの雇用とは異なり、プロジェクトベースや一時的な契約によって成り立っています。主にインターネットやスマートフォンの普及によって、この働き方が急速に広がりました。ただし、市場価値の高いスキルを身に付けていないと単に搾取されるだけで高収入が得られなかったり、自由に労働環境を選んだり、好きな仕事を選ぶなどのメリットは享受できません
また、高度な専門スキルがあれば、エッセンシャルワークの世界でもアドバンスド現場人材※※として、高収入を得ることは可能です。
※※アドバスト現場人材とは、専門的な知識や技術を持ち、現場での業務において高度な能力を発揮ことができる人材を指します。これらの人材は、通常の業務を超えて、問題解決や効率化ための提案を行い、組織目標達成に貢献します。彼らはまた、他の従業員への指導や教育を行い、チーム全体のスキル向上を図る役割も担っています。
いずれにしてもこれからは、「職能」依存の働き方で、市場価値のある専門スキルを身に付けることが何より大事です。
「会社」依存では、いずれ自滅する時代が間もなくやってきます。