ながら江雪の人生ノート

現役サラリーマンと定年シニアのお悩み解決

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日本企業の独裁的トップダウン組織は何故生産性が超低いのか?

画像引用:Chaplin's genius, Hitler's madness / Documentary captures collision of art

独裁的トップダウン組織は、日本企業に限ったことではありません。

米国を中心とする外資系企業も独裁的トップダウン組織が多いため、日本と同じように社員はほとんどがイエスマンです。

ではどうして、生産性がこんなにも違うのでしょうか?

この記事では、日本企業の独裁的トップダウン組織の生産性が米国に比べ著しく低い理由を解説します。
 

■この記事を読んで頂きたい人■
・生産性が特に低い日本の大企業(JTC)などの若手サラリーマン
※JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング
 
 
■この記事でわかること■
①超低い日本の労働生産性~日米比較

②日米企業は共に独裁的なトップダウン組織なのに、何故日本は生産性が超低いのか?
 

独裁的トップダウン組織のJTCに長年勤務した筆者が、生産性が超低い日本企業の独裁的トップダウン組織について解説します。

<自己紹介>

筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職

 

      

 目次

超低い日本の労働生産性~日米比較

公益財団法人日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較2024」によると、日本の時間当たりの労働生産性は56.8ドル(OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国中29位)で、米国97.7ドル(同8位)の半分強(58%)しかありません(下のグラフ参照)。

引用:日本生産性本部 「労働生産性の国際比較2024」

また、日本の一人当たり労働生産性は92,663ドル(同32位)で、こちらも米国169,825ドル(同5位)の半分強(54%)です(下のグラフ参照)。

引用:同上

 

 

日米企業は共に独裁的トップダウン組織なのに、何故日本は生産性が超低いのか?

主要先進7カ国の就業者1当たり労働生産性の順位の変遷

引用:同上

日本型経営は時代に合わない

日本の高度経済成長(1950年代半ばから1970年代初頭まで)を支えた日本型経営※1は、社員を個ではなく組織で仕事に取組ませる経営方式です。

 

※1 日本型経営とは、メンバーシップ型雇用(新卒一括採用・終身雇用・年功序列)と企業別労働組合を特徴とする日本固有の経営方式です。

 

日本型経営は少品種大量生産と相性が良く、欧米に追い付け追い越せのキャッチアップ経済期にはその長所を活かして高度経済成長を実現しました。

しかし、当時の工業社会はとっくの昔にポスト工業社会※2に移行しており、日本型経営はまったく時代に合わない経営方式になってしまいました。

ポスト工業社会は、組織の力ではなく個の力の時代、すなわち非効率なワークシェアリングではなく一人ひとりの創造力や専門スキルがものを言う時代です。

 

※2 ポスト工業社会とは、失われた30年の間に、需要の飽和とニーズの多様化・専門化が進み、その変化も加速した社会です。具体的には、2010年代以降のGoogle、Apple、Facebook、Amazonなど巨大IT企業が世界の経済をけん引してきた時代が特にその象徴的な時代です。これに対し、工業社会とは、人口増による内需でモノをつくれば簡単に売れた少品種大量生産の時代で、日本では概ね1980年代以前の社会を指します。

 

その悪影響は、失われた30年の間の日本の凋落ぶり(世界競争力、時価総額、名目GDP)が物語っています。

日本型経営は独裁体制に最適

それでは、なぜ日本型経営を抜本的に変革して非効率なワークシェアリング型の労働を改めないのでしょうか?※3

 

※3 ジョブ型への移行を試みた企業もいくつかありますが、メンバーシップ型雇用を残しながらの中途半端な改革となっているため上手くいっていないのが現状です。参考:大企業(JTC)の経営改革は何故いつも「なんちゃって」なのか?

 

よく語られるのは「成功体験の影響が大きすぎたため」という理由です。

当然これも要因の一つですが、筆者はもう少し踏み込んだ別の要因を指摘します。

それは、独裁的トップダウン組織(独裁体制)を維持して、社員をコントロールしたいという経営者(権力者)の心理です。

産業・組織心理学者 山浦一保氏が指摘するように、地位やそれに伴う権力を手にした人の多くが、「他人をコントロールする権力を失わないように努める」ことは、組織心理学の研究が明らかにしています。

また、「内集団バイアス」により社内の有力者は子飼いの部下ばかりを重用し、それを見た周囲の者たちは従順なイエスマンと化していく現象は、どこの会社でもみられる光景です。

このように心理学からアプローチすると、定年までの安心と引き換えに社員に滅私奉公を強いる日本型経営は独裁体制に最適であることがよく分かります※4

 

※4 米国の経営者も独裁者ですし、社員もイエスマンです。しかし、日本と違って労働力の流動性が高いため主従関係が固定化しません。米国では日本のように転職によるキャリアダウン(給与のダウン)が常態化していないので、嫌ならさっさと転職してしまいます。

賃金抑制と御用組合化は独裁体制の維持が目的

日本型経営は社員を長期間抱え込むため、経済成長が続かなければ人件費負担がきつくなり破綻します。

したがって、日本型経営を続けるには賃金を抑制するしかありませんでした。

さらに、この独裁体制を堅固なものにするために行ってきたのが、企業側の締め付けによる労働組合の弱体化です。

日本では労働組合が企業別(欧米の労働組合は職業別・産業別が一般的)であるため、組合役員経験者を出世させるなど懐柔は簡単です。

独裁体制を維持するために日本型経営に執着する経営層(支配階級)がやってきたことをまとめると以下になります。

①賃金の抑制

日本の平均賃金は30年間ほぼ増えていません(下のグラフ参照)

定年の延長義務化による人件費増は役職定年の導入で、経営陣の失態による一時的な経営悪化にはリストラ(希望退職制度)で対応

引用:野村の金融経済教育サイト「Fin Wing」

②労働組合の懐柔(御用組合化)

非効率なワークシェアリングで可能な限り社員の雇用を確保

⇒ その結果、人件費負担がきつくなり正規・非正規の身分制度を導入

御用組合化は、ここ20年間の総争議が減少の一途をたどっていることが示しています(下のグラフ参照)。

引用:会社に物言わぬ「御用組合」

 

 

まとめ

日本企業の独裁的トップダウン組織は何故生産性が超低いのか?

それは、経営層(支配階級)が独裁体制維持のため時代に合わない日本型経営に執着した結果、ロクな仕事も無いの非効率なワークシェアリングで雇用(特にホワイトカラーの雇用)を維持しているからです。

生産性が低いのは、仕事の割に社員が多すぎることぐらい小学生でも分かります。

言ってみれば、「支配階級たる経営層は、権力を維持するために敢えて生産性を上げないようにしてきた」とも言えます。

今後、生成AIが本格導入されても、もしかしたら予想に反してホワイトカラーは減らないかもしれません。

1980年代からOAが本格導入されても、ブルシットジョブ(クソどうでもいい仕事)は減るどころかむしろ増えたように...(笑)

 

参考:大企業(JTC)はロクな仕事も無いくせに社員が多いたった一つの理由?

 

こぼれ話

経営者は何故体育会系の学生を好むのか?

理由は簡単です。

体育会系の学生は上下関係に従順だからです。

彼らが独裁的トップダウン組織で重宝されるのはそれが理由です。