ながら江雪の人生ノート

現役サラリーマンと定年シニアのお悩み解決

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世界価値観調査から分かる日本人の本性とは?世界でも際立って世俗的?

日本人の国民性や特徴についてよく言われることがいくつかあります。

もちろん、個人によって違いますが、一般的な傾向として以下のような特徴があると言われています。

1.勤勉さ

日本人は仕事に対して真面目で、一生懸命働く姿勢が評価されている。また、勤勉さや努力する姿勢は、教育や職場において重視されている。

2.礼儀正しさ

礼儀を重んじる文化が根付いており、挨拶や礼儀正しい言葉遣い、他人への配慮が日常生活の中で重要視されている。

3.集団意識

個人よりも集団を重んじる傾向があり、協調性やチームワークが重要視される。また、個々の意見や行動が集団全体に与える影響を考慮することが多い。

4.慎ましさ

控えめで謙虚な姿勢を持ち、自分の成果や能力を過度に誇示しないことが好まれる。

5.丁寧さ

物事を丁寧に行うことが重視されており、細部にまで気を配ることが多い。

どれも聞きなれた日本人の特徴ですが、これらは、悪名高き「道徳の時間」※1などで国民をコントロールしやすく調教するために刷り込まれたものです。

 

※1「みんな仲良く」なんて非現実的なことをいつまでも言っているから、いじめが無くなるどころか増えるんです。世の中には、嫌いな奴が要るに決まっています。そんなことみんな分かり切っているんですが…😩。

 

このような一般的に言われている日本人の特徴には、国のパターナリズムの匂いがプンプンします。

それにしても、今どきこんな日本人の特徴、白々しくないですか?

昭和時代には、こんな日本人もいたかもしれませんが(笑)。

このような人が今いるとしても、それは「目先の損得勘定」に基づいて人前で行う演技に過ぎません。

この記事では、日本人のメタ国民性、つまり日本人の本性について解説します。

■この記事を読んで頂きたい人■
・今でも日本人は、勤勉で礼儀正しく、集団を重んじ、慎ましくて丁寧だと思っているひと

 

■この記事でわかること■
①世界価値観調査から分かる日本人の本性とは?

②世界でも際立って世俗的な国民になっちゃったワケとは?

③「目先の損得勘定で生きる日本人の際立つ世俗性」から説明できる日本人の行動あれこれ
 
日本的大企業で日本人の本性を嫌というほど見てきた筆者が、世界価値観調査から分かる日本人の本性について解説します。

<自己紹介>

筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職

 

      

 目次

世界価値観調査から分かる日本人の本性とは?

世界価値観調査(World Survey)とは、世界各国の人々の価値観や信念、態度を調査する国際的なプロジェクトで、1981年に開始されました。

この調査データに基づいて作成されたのが、下図(イングルハート*1の価値マップ)です。

(注)IVAN IZQUIERDO ELLIOTの画像を基に筆者が作成

縦軸は、上に行くほど「世俗的・合理的価値」を重んじる度合いが高く、下に行くほど「伝統的価値」を重んじる度合いが高くなります。

「世俗的価値」とは、日常生活や現実世界での物質的、実利的な価値観を指します。

具体的には、財産、地位、名誉、快楽など、現世での成功や幸福を追求する価値観で、合理的価値と合わせて一言で言えば「目先の損得勘定」を重んじる価値観です。

また、「伝統的価値」とは、家族の絆、敬老の精神、礼儀と礼節、 地元やコミュニティへの貢献と連帯感、宗教・信仰など社会の安定と人々のアイデンティティに深く関わるものです。

もう一度、上の価値マップをご覧ください。

この価値マップが明らかにしたことは、『日本人は、世界でも際立って世俗的かつ合理的な国民である』、分かりやすく言い換えれば『「目先の損得勘定」で生きる国民である』ということです。

次に、下の図をご覧ください。

下に図は、調査を開始した1981年以降のマップにおける位置の変遷です。

(注)図録▽イングルハート価値空間における日本人の位置変化の画像を基に筆者が作成
日本は、1981年から2023年の間に、世界でも際立って世俗的かつ合理的な位置をほぼキープしたまま右に移動しています(図の「日本1」⇒「日本7」)。

これが意味するところは、日本人は43年の間に生存的価値(生き延びるために必要な安全、健康、安定した生活など)より自己表現的価値を重んじる度合いが高くなった、すなわち「自分らしく生きる」ことにより重きを置くようになったということです。

このように日本人は、43年の間に、自分らしく生きる傾向が強まりましたが、世界でも際立って世俗的かつ合理的な国民性は変わっていません。

これは、「目先の損得勘定で生きる」ことが、「自分らしく生きる」ことになってしまったということを意味しています。

 

 

世界でも際立って世俗的な国民になっちゃったワケとは?

先ず、世界価値観調査のアンケートの内容に簡単に触れます。

「伝統的価値 vs 世俗的・合理的価値」に関するアンケート結果は、次の5つの因子を分析して数値化されています。

  • 回答者の人生において、神は非常に重要であるか
  • 子どもは自主性や決断力よりも従順さや信仰心を身に付けることの方が重要だと思うか
  • 妊娠中絶は決して正当化されないと考えるか
  • 回答者は国に対して強い誇りを持っているか
  • 回答者は権力・権威をもっと尊重したいと考えているか

これらの項目に賛同傾向が強ければ伝統的であり、その反対は世俗的かつ合理的となります。

項目の内容を見ると、キーワードとして以下の2つが浮かび上がってきます。

①宗教、特に「神」

②国家に対する誇りや敬意

世界でも際立って世俗的な国民、すなわち「目先の損得勘定」で生きる国民になっちゃったワケとは、要するに、この2つが日本人の意識に欠けているということです。

以下、この2点について解説します。

日本人の心にはキリスト教やイスラム教のような絶対神が存在しない

絶対神とは、多くの宗教において、すべての創造物や現象の起源であり絶対的な権威と力を持つ存在です。

例えば、キリスト教における神※2、イスラム教におけるアッラー、ヒンドゥー教におけるブラフマンなどが絶対神として認識されています。

 

※2 キリスト教の中でも特に主要な教派であるカトリック、プロテスタント、正教会などでは、イエス・キリストは神の子であり、三位一体の一部とされています。三位一体とは、父なる神(神)、子なる神(イエス・キリスト)、そして聖霊の三者が一体となって一つの神であるとする教義です。

 

また、キリスト教における重要な教義の一つに「最後の審判」があります。

「最後の審判」では、神がすべての人の行いを評価し、正しい者には永遠の命を、不正を行った者には永遠の罰を与えるとされています。

これは、キリスト教信者にとって重要な教義であり、この教えを通じて信者たちは自分の行いを振り返り、正しい道を歩むように促されます。

類似した「最後の審判」の考え方は、イスラム教やゾロアスター教など他の宗教にも見られます。

一方、日本はどうでしょうか?

先ず日本の神様は、一神教の絶対神と違って唯一無二ではありません。

そして、「最後の審判」を行う絶対神のような厳格さはなく、古事記や日本書紀などの神話に登場する神々のように、喜びや怒り、嫉妬や愛情など人間的で世俗的※3な側面を持っています。

 

※3 弟のスサノオノミコトとの喧嘩によって天岩戸に隠れたアマテラスオオミカミを岩戸から誘い出すために、アメノウズメが非常に大胆で卑猥なダンスを踊った神話はあまりにも有名です。

 

このように日本人の心には、信仰の対象になるような唯一無二の「絶対神」は存在しません。

なお、現人神(あらひとがみ)「天皇」については、次項で触れます。

こぼれ話

「悪人正機説」と「最後の審判」は真逆の教え

日本に広く広まった仏教の一派である浄土真宗は、「南無阿弥陀仏と唱えれば、だれでも成仏できる」という、とっても都合のいい宗教です。

「悪人正機説」とは、その浄土真宗の宗祖 親鸞が説いたの有名な教えで、「悪人こそが阿弥陀仏の救いを受けるべき主体である」というものです。

親鸞は、「善人」は自分の行為や善行によって救われようとするが、それは自己満足や自己中心的な考えに陥りやすいと指摘しました。

一方で、「悪人」は自分の無力さや罪深さを自覚し、阿弥陀仏の慈悲に完全に頼ることができる(他力本願)ため、真の救いを得ることができると説いたのです。

「目先の損得勘定」で生きる世俗的な人間にとっては、「最後の審判」より「悪人正機説」の方がはるかにいいですね(笑)。

 

 

太平洋戦争敗戦で国家(天皇)に対する誇りや敬意は失われた

日本国民は敗戦によって、心の中心だった「神である天皇」すなわち「国体※4」信仰を失いました。

 

※4 戦前の日本において「国体」という概念は、国家の基本的な形態や体制を示すものであり、特に天皇を中心とした統治形態が強調されていました。この時期、日本の国体は「万世一系の天皇が統治する国家」と定義され、天皇の存在は国の中心であり、国家の統一と安定の象徴とされました。

 

その象徴となる写真が以下です。

引用:昭和天皇とマッカーサー(上)(2021年9月7日掲載)|日テレNEWS NNN

これは、昭和天皇とマッカーサー連合国最高司令官の会見(1945年9月27日)後の写真です。

つい最近まで、神として信仰されていた天皇が、リラックスしたマッカーサーの傍らに緊張して直立不動で立っています。

しかも、天皇が正式なモーニングを着用しているのに対し、マッカーサーは上着も着用しない開襟シャツだけの普段着姿です。

この写真が、会見の2日後、新聞に掲載され、国民に大きな衝撃を与えました。

さらに、人間宣言は行ったものの、開戦責任を問う東京裁判での免責についてまったく触れない天皇の姿勢は、国民にとって(天皇をいまだに敬慕しつつも)納得がいかなかったはずです。

日本国民は、この天皇の変わり果てた「小さな姿」に、大きな失望を感じていたはずです。

この「国体」信仰の喪失による国民の心の空白を、一時は、「特別の戦争放棄(相互主義※5の放棄)」を定めた憲法9条によって世界の平和を日本がリードするという「理想主義的な熱狂」が埋めましたが、冷戦でその熱もすぐに冷めてしまいました(加藤典洋著『9条入門』より引用)。

 

※5 戦争放棄における相互主義とは、国家が他国と戦争を放棄することを約束するときに、その約束が他国にも適用されるという考え方です。つまり、ある国が戦争を放棄すると、他の国も同様に戦争を放棄する義務があるということです。この相互主義の概念は、戦争放棄条約の一部として取り入れられています。

 

 

「目先の損得勘定で生きる日本人の際立つ世俗性」から説明できる日本人の行動あれこれ

なぜ一夜にして「天皇陛下、万歳!」から「マッカーサー元帥、万歳!」になっちゃったのか?

全く勝ち目のない強国アメリカの属国になった方が得だと感じたんでしょう(笑)。

その他にも、思いつくまま列挙します。

なぜ日本人は「税金を取られると損した」と感じるのに税金の使われ方には無頓着なのか?

欧米でも税金に関する議論が非常に活発ですが、日本と違って、税金の使い道に対して強い関心が持たれています。

日本国民は、税制改革や税率の変更に敏感に反応しますが、税金の使い道の透明性や費用対効果には、なぜか欧米の国民ほど関心がありません。

「目先の損得勘定」で生きる日本人は、「税金は取られ損だ」としか考えない国民のようです。

そのおかげで、自民党政権と結託した大企業は税金垂れ流しの利権ビジネスをやりたい放題です😒。

こぼれ話

昭和時代の「マル優制度」(少額貯蓄非課税制度)は、GHQ(連合国最高司令部)の考案?

「マル優制度」とは、 郵便貯金の利子所得が元本350万円までなら非課税となる制度でした。

一説には、日本人のこの国民性(超・税金嫌い)を利用して戦後の復興資金を効率よく調達するために、GHQが考案したと言われています。

なぜ日本人の新しい才能は国内より海外で評価されるのか?

文化・芸術や科学技術などの分野で、日本人が国内より海外で高く評価されて、日本に「逆輸入」されることがよくあります。

これは、日本の「既成の権威」の損得勘定のせいで、国内での評価が厳しいくなってしまうことが一因と考えられます。

要するに、「既成の権威」の損得勘定にとって、「新しい才能」は迷惑なのです。

 

 

なぜ日本人は同調圧力に従順なのか?

同調圧力とは、ある種の共同体で起こります。

日本では、共同体での悪い評判は挽回不可能で、一度悪い評判が立ったら、ずっと消えません。

だから、日本人はみんな同調圧力に屈した方が得だと考えるのです。

参考:大企業の同調圧力が強まる4つ理由と対策

なぜ日本人は仕事が終わっても会社に居るのか?

当然、残業代を稼ぎたいという理由もありますが、それだけではありません。

残業というのは、上司に「がんばり」を手っ取り早くアピールできる手段だからです。

日本の企業では、成果主義が叫ばれても実態は上司による情意評価※6です。

なぜなら、成果主義の業績評価手法は未だに確立していないからです。

 

※6 情意評価とは、社員の勤務態度や仕事に対する意欲・姿勢について評価する手法のことですが、上司の主観による評価であり、部下の忖度に左右されるなど合理性に欠けることが多い評価手法です。成果主義なんていってみたところで、結局は情意評価に毛が生えたようなものになるだけです。これまでにやったことが全く無い新しいことを始めるなら、人を変えるしかありません。

 

効率よく業務をこなしてサッサと定時退社しても評価されるかどうか分かりません。

むしろ残業による分かりやすい「がんばり」アピールの方が、日本の企業では得です。

参考:優秀でも大企業では評価されない管理職の特徴と理由【対抗策は?】

なぜ日本人は嫌いな会社にいつまでもしがみつくのか?

「日本のサラリーマンはみんな自分の会社が嫌い」であることは、エンゲージしている社員(仕事や会社への熱意、貢献意欲などが高い社員)の比率の低さが示しています。

アメリカに本社を置く調査会社「ギャラップ社」による世界各国の従業員エンゲージメント調査(2023年度版)によると、日本の「エンゲージしている社員」は5%にとどまっており、145カ国中で4年連続 最下位でした。

ではなぜ嫌いな会社にしがみついているのでしょうか?

日本では転職(正確には転社)すると給与が下がるのが一般的だからです。

終身雇用と年功序列が崩壊しつつある今、しがみついていた方が本当に得かどうかは分かりませんが...。

参考:日本人は自分の会社が嫌いなのにしがみつく【理由とリスクと対策】

 

 

まとめ

「こんな簡単なアンケート調査で、国民性が本当に分かるのか?」というナイーブ(素朴)な疑問は沸いてきますが、7回行われた調査で世俗的・合理的価値の値がほとんど変わらいという結果も無視できません。

内田樹も著書『サル化する世界』で、中国の古代の寓話に由来することわざ「朝三暮四※7」のサルに世界の人々が近づいていると指摘しています。

 

もしかしたら日本人が一番サルに近いのかもしれません。

 

※7 物語によると、ある飼い主がサルたちに朝に3つ、夕に4つのドングリを与えると言ったところ、サルたちは怒りました。しかし、飼い主が朝に4つ、夕に3つのドングリを与えると言い換えると、サルたちは喜びました。

 

 

*1:ロナルド・イングルハート(Ronald F. Inglehart)は、アメリカの政治学者。ミシガン大学教授。ポスト物質主義社会の研究や、世界価値観調査に基づく政治意識の研究で知られる。