マスコミはあまり報じませんが、ここ30年の日本の凋落ぶり(世界競争力、時価総額、名目GDP)は惨憺たるものです。
日本以外の先進国や中国に代表される新興国に抜かれるなど、順位を落としてしまった国際ランキングは数知れません。
日本は今や先進国とは名ばかりの状態になりつつあります。
この記事では、「失われた30年」を招いた戦犯を糾弾します。
長年のJTC勤務で「失われた30年」を経験した筆者が、日本の凋落を招いた「失われた30年」の戦犯を糾弾します。
<自己紹介>
筆者本人(1960年生)
筋トレ歴16年 ボクシング歴10年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
日本の凋落を招いた「失われた30年」~二人の戦犯
戦犯その一:時代遅れのメンバーシップ型雇用を改革できない無能な経営陣
1)とっくに賞味期限が切れているメンバーシップ型雇用
メンバーシップ型雇用は、新卒一括採用、終身雇用と年功序列の3つの制度で成り立っています。
そもそも、この雇用システムは遥か昔の高度経済成長期に導入されたものです。
高度経済成長期に象徴される工業社会時代(1970年代以前)は、藻谷浩介著『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』で指摘されているように、人口増に伴う内需の拡大により経済が発展しました。
下のグラフをご覧ください。
凡例:青が総人口、赤が名目GDP
引用記事:グラフで見る日本の人口推移
2011年までは、人口増に伴い名目GDPも年ごとの増減はあるものの増加基調でした。
この人口が増えた時代、特に1970年代年までの「モノをつくれば内需で簡単に売れた時代=工業社会時代」は、メンバーシップ型雇用も企業経営と相性のよい時代だったと言えます。
皆で力を合わせ「一致団結」で、欧米に追い付け追い越せのキャッチアップ型経済の時代です。
ところが人口が減少に転じて(2011年)、内需でモノが売れる時代が去ると経済成長が終わり、メンバーシップ型雇用の賞味期限も切れました。
2)メンバーシップ型雇用が硬直的な「共同体」経営を招く
メンバーシップ型雇用は、社員を固定化・同質化・一体化することにより組織の閉鎖性を強めて、本来「機能体」であるべき企業の姿を「共同体」に変えてしまいます(下表参照)。
引用:堺屋太一著『組織の盛衰』
居心地追求組織「共同体」は、現状維持への同調圧力を強め、変革を「悪」とみなします。
硬直的な「共同体」となった日本企業は、経営環境が変化しても「茹でガエル」※1のまま世界から取り残されてしまったのが「失われた30年」です。
※1 茹でガエル とは、緩やかな環境変化下においては、それに気づかず致命的な状況に陥りやすいという警句。 生きた カエル を突然熱湯に入れれば飛び出して逃げるが、水に入れた状態で常温からゆっくり沸騰させると危険を察知できず、そのまま茹でられて死ぬという説話に基づく。
3)共同体の悪しき慣習「選別主義」が無能な経営陣を生む
日本企業の経営陣は、なぜいつまでもメンバーシップ型雇用に固執し、新しい雇用形態にパラダイムシフトできないのでしょうか?
理由は、日本の経営陣が悪しき慣習である「選別主義」※2で選ばれた優等生型の優秀さしか持たない人材だからです。
※2 日本企業の「選別主義」とは、「優秀な人を選別するは当たり前」というナイーブな(素朴な)考え方で一部の幹部候補を入社の段階で選別し、その他の社員の出世の道を閉ざしてしまう考え方です。選別の基準は、学歴、性別、そして経営陣のカンと好みです。参考:選別主義の矛盾と不条理|選別されたエリートたちの実像とは?
経営のスペシャリストではない彼らはチャットGPTのように正解がある問題は解けますが、リスクを取って新しいことにチャレンジはできません。
参考:【就活】大企業(JTC)すごろく上がりのサラリーマン社長の弊害とは?
日本企業の経営者の無能ぶり
日本企業の経営者の能力の低さは、国際経営開発研究所「世界競争力年鑑」の調査データからも分かります。
以下、三菱総研の記事から引用します。
ビジネス効率性分野の「経営プラクティス」などの小分類項目の順位は低位で固定化しており、改善傾向がみられない。
特に企業の意思決定の迅速さや機会と脅威への対応力、起業家精神などからなる「経営プラクティス」は64カ国・地域中62位であり、日本の最大の課題である。
ユニクロの名経営者 柳井正氏が「日本の経営者が変革を恐れ、現状維持に固執している」「日本人は滅びるんじゃないですか」と発言し、日本の経営者が国際競争力を高めるためにもっと積極的に行動する必要があると強調していますが、この調査データを見ると確かにその通りです。
戦犯その二:破綻企業を延命させ企業変革を先送りさせてきた自民党政権
これまでの30年間、政府は株式市場や不動産市場の急落によって事実上経営不能になった金融機関や企業に対して、税金を惜しみなく投入して支援してきました。
アメリカのように大規模な抗議運動を起こして、民間企業への税金投入に強硬に反対する姿勢が自己家畜化した日本国民に無いため、自民党はなんなく税金を使って企業の破綻を先延ばしし、リスクを先送りにすることで政権を守ってきたわけです。
このように、政府は常にリスクを回避し、経営環境の変化に対応した改革を意図的に遅らせてきました。
潰れる企業をそのまま潰してしまえば、その資本や労働力はまた別のところに向かって、新しい産業が生まれたはずです。
負の結果を恐れるあまり常にリスクを先送りしたり、大企業を優遇し続ける自民党政権に責任があることは間違いありません。
参考:日本を「美しい国」ではなく「凋落国」にした自民党が与党であり続ける理由
まとめ
日本企業の経営陣の無能ぶりは一向に改善される兆しはありません。
その結果、雇用形態も一部でジョブ型や成果主義導入の動きはあるものの、実質的には時代遅れのメンバーシップ型雇用が継続されています。
また、自民党の一党支配があまりにも長く続いたため、その間に築かれた政官財癒着の構造は堅固であり、現在の日本の体制を突き崩すことは当分不可能でしょう。
失われた30年はいつまで続くのでしょうか?
参考:失われた40年を招く日本の経営者はなぜこんなにダメなのか?