大企業(JTC※1)は、「居心地追求組織」すなわち共同体です。
※1 JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング
そして、共同体での人の評価は、「主観的評価による人気と人格」です。
業績は、あまり関係ありません。
大企業(JTC)とは、このように不条理な世界です。
この記事では、以上を踏まえた「大企業(JTC)で出世するためにサラリーマンが守るべき十戒」を伝授します。
なお、この記事の前提となる「大企業(JTC)の知られざる身分制度」の説明は割愛しますので、関連記事を是非ご一読ください。
参考:【就活】大企業(JTC)の知られざる身分制度【経験者が実態を解説】
<自己紹介>
筆者本人(1960年生)
出世競争は早めに降りて体づくりに励む
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
大企業(JTC)で出世するためにサラリーマンが守るべき十戒とは?
1.新卒入社した会社を定年まで愛し続け、他の会社に転職してはいけない
中途社員は正メンバーではなく、問題解決※2のために採用したあくまでも準メンバーです。
※2 問題解決といっても、社員の年齢構成の谷間(年齢ギャップ)の穴埋め要員ということもあります。
ですから、大企業(JTC)から大企業(JTC)に転職したとしても、それ以降のキャリアアップは不利になります。
出世したいなら、最初に入社した会社に忠誠を誓い、滅私奉公に励むことです。
2.異動先の仕事が嫌でも拒否してはいけない
日本企業のほとんどが採用しているメンバーシップ型雇用※3では、個人のキャリアプランの主導権は会社が握っています。
※3 メンバーシップ型雇用は日本固有の雇用形態で、まず新卒一括採用で労働力をまとめて確保し、その後に会社都合で仕事を割り当てます。この雇用形態は、長期安定的な労働力確保が最も重要な経営課題であった高度経済成長期に広がったもので、今ではとっくに時代に合わなくなっています。最大の特徴である終身雇用と年功序列は崩壊しつつあります。
メンバーシップ型雇用とは、言ってみれば定年までの安心と引き換えに滅私奉公させる社員奴隷化システムです。
奴隷の分際で、仕事の内容についてとやかく言う権利はありません。
3.異動先がどんなに僻地でも嫌がってはいけない
前項と同じ理由で、とやかく言えば不利に働きます。
女性社員には、一般職という被差別待遇で、この転勤リスクを回避する道が開かれています。
参考:【就活女子へ】女性は出世できない?男は誰も言わないズルい理由
4.どんな上司でもバカにしてはいけない
出世は業績ではなく、評価者である上司が引き上げてくれるかどうかで決まります。
上司との人間関係で昇進・昇格が決まりますので、上司には常に表面上だけでも敬意を払う必要があります。
仮に、心のなかでバカにしていたとしても絶対にバレてはいけなせん。
同僚との飲み会で、ついうっかり上司をバカにしないよう要注意です。
また、面と向かって上司を褒めるのも注意が必要です。
一般的には、目上の人を褒めることは失礼とはされませんが、慎重さが求められます。
相手に対する敬意を示し、公の場は避けるなど適切な状況で褒めることが重要です。
5.上司より自分が有能なことをあからさまにしてはいけない
特に年次が近い上司には要注意です。
なぜなら上司にとって部下は将来のライバルだからです。
良い成果が達成できた時こそ、静かにしていましょう。
6.手柄を独り占めしてはいけない
部下の能力に嫉妬するような心の狭い上司が多く存在します。
上司にも出番をつくって成果のお裾分けをしておかないと、成果を上司に全部持っていかれる可能性があります。
特に出世欲の強い上司は、みんな心の狭い人物だと思った方が安全です。
7.どんなに嫌でも上司の誘いを断ってはいけない
飲み会など仕事以外の誘いを合理的な理由なしで断るのは御法度です。
上司の中には、承認欲求が満たされず、根に持つような器の小さい人物も存在します。
飲み会を絶対に断らなかったフジテレビ社外取締役 山田真貴子
彼女は元総務省の官僚で、内閣広報官も務めた経験がありますが、若者向けのメッセージ動画で「飲み会を絶対に断らない女としてやってきました」と語っています。
8.ワンマンプレイで仕事をかたずけてはいけない
ひとりで出来てしまうような仕事やちょっとしたプロジェクトでも決して一人でかたずけてはいけません。
共同体である大企業(JTC)ではチームワークが大切です。
共同体では、非効率なワークシェアリングで「一致団結」を演出できる人が評価されます。
9.効率的に成果を出してはいけない
効率的な仕事の進め方で評価を期待してはいけません。
共同体である大企業(JTC)では、結果ではなくプロセスが重要なのです。
評価されるプロセスとは、どれだけ汗をかいて頑張ったかです。
「最小コストで最大効果」ではなく、ムダな「がんばり」が評価されます。
10.決して新しいことにチャレンジしてはいけない
大企業(JTC)には減点主義が蔓延しているため出世は保身なしでは語れません。
そのため新しい事へのチャレンジは皆が迷惑します。
手伝っても評価される保証がない同僚、失敗したら責任を取らされる上司、そして一番迷惑なのは「任期中、大過なくすごす」ことしか頭にない社長です。
居心地追求組織「共同体」では、リスクを冒して現状維持を乱すことは「悪」です。
なお、「新しいこと」とは、「0⇒1」※4とは限りません。
※4 「0⇒1」とは、PayPalの共同設立者 ピーター・ティール(Peter Thiel)が著書『ゼロ・トゥ・ワン(Zero to One)』の中で使った言葉で、既存のものを改良する「1⇒n」よりも、Amazon、google、metaなどのように全く新しいものを創造する「0⇒1」の方が重要であると説いています。
既に世の中に当たり前に存在する事業への新規参入も、「新しいこと」に入りますので要注意です。※5
※5 大企業(JTC)の幹部は、基幹事業などのリスクがないマイナーチェンジ程度で新しいことにチャレンジしたと大威張りです。こういう連中は社員に「挑戦」を求めるので、これにも要注意です。参考:会社が業績評価で求める「挑戦」を真に受けてはいけない理由と対処法
まとめ
大企業(JTC)で出世するためにサラリーマンが守るべき十戒とは?
1.新卒入社した会社を定年まで愛し続け、他の会社に転職していけない
2.異動先の仕事が嫌でも拒否してはいけない
3.異動先がどんなに僻地でも嫌がってはいけない
4.どんな上司でもバカにしてはいけない
5.上司より自分が有能なことをあからさまにしてはいけない
6.手柄を独り占めしてはいけない
7.どんなに嫌でも上司の誘いを断ってはいけない
8.ワンマンプレイで仕事をかたずけてはいけない
9.効率的に成果を出してはいけない
10.決して新しいことにチャレンジしてはいけない
実際には、大企業(JTC)の日本型経営は末期状態であり、この「十戒」がいつまで通用するか筆者は保証できません。
ただ、失われた30年が40年になりつつある今、急に状況が変わるとは思えません。
社長が外部から招へいされた経営のスペシャリストに代わるなど経営陣の顔ぶれが抜本的に変わらなければ、筆者が伝授する「十戒」はまだ通用します。
なお、筆者は「十戒」をあまり守れなかったので出世しませんでしたが、大企業(JTC)のくだらない常識に洗脳されずに済みました。
どちらがいいかは、価値観の問題です。
参考:失われた40年を招く日本の経営者はなぜこんなにダメなのか?