退職してあっという間に1年半(正確には1年と8ヶ月、2025年3月現在)が過ぎてしまいました。
筆者は50代からできる限り「心の平安」を求めてきましたが、退職後もその路線に変更はありません。
現役時代に比べれば「心の平安」を得るのは容易ですが、まだまだ修行が足りないと感じることが多々あります。
この記事では、そんな筆者にとっての「定年後を幸せに生きるための十戒」を日記のかわりに書き留めてシェアします。
何かのお役に立てば幸いです。
②定年後からの七戒とは?
<自己紹介>
筆者本人(1960年生)
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年
ロックバランシング歴8年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
定年後を幸せに生きるための十戒とは?
現役50代から少しずつ始めた三戒とは?
1.人間関係に幸せを求めるべからず
日本人は小中高と狭い教室に閉じ込められて、「みんな仲良く」を強要されてきました。
この不自然な道徳教育が原因で、日本人は人間関係だけに幸せを求めてしまいます。
しかし、地球上で人間ほど恐ろしい動物はいません。※1
※1 人間は動物一般がもつ「欲求」を超えた「欲望」をもつ生き物です。殺人、レイプ、いじめ、裏切り、詐欺、ハラスメントそして戦争などすべて欲望のなせる業です。動物の殺生は命をつなぐため、セックスは純粋な生殖活動です。「ケダモノのような行い」とは人間しか行わない行為です。NHK『映像の世紀』全11作にその一部が記録されています。
人間に近づきすぎると必ず「心の平安」が乱されます。※2
※2 SNSによる顔の見えない相手との付合いも人間関係です。SNS上ての誹謗中傷だけではなく、「いいね!」やフォロワーの数も気にしすぎるとメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。
人間関係はほどほどにして花鳥風月(自然)に幸せを求めるのが安全です。
レイチェル・カーソン著『センス・オブ・ワンダー』より
もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない『センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性』を授けてほしいとたのむでしょう。
この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤になるのです。
参考:幸福度が低い日本で生きるための生きづらさへの処方箋とは?
2.消費脳に支配されるべからず
資本主義経済に包摂されてしまった現代人の「脳」は、商品を次から次へと手に入れるためにお金を浪費しないと幸せを感じないようになってしまいました。
これが筆者の言う「消費脳」です。
自動車や家電などありとあらゆるモノが、本質的には意味のないモデルチェンジを繰り返してこの「消費脳」を刺激します。
幸せ感はその商品を手に入れた瞬間が最大で、その後急激に減少し消え去ります。
そしてまた次の商品を探し始めます。
このように、消費脳は「心の平安」を乱します。
参考:定年前から始める賢いお金の使い方|脱・消費脳で定年後の不安を解消!
3.他人と自分を比較するべからず
ヒトは、自分の幸不幸を他人との差異でしか測れません。
誰かとの比較で幸福を感じたとしても、それは相対的なものでしかなく、「心の平安」を得るのは不可能です。
定年後からの七戒とは?
4.孤独を恐れるべからず
定年後の過ごし方を指南する、いわゆる定年本の『〇〇すべき』を真に受けて、義務や強迫観念から仲間や居場所を無理につくるのは避けるべきです。
かえってストレスになり、長続きすることはありません。
また、人間関係なんかどうでもいい定年後は、他人に多少迷惑がかかっても予定を無理して守る必要はありません(定年後はたいして他人に迷惑をかけるような予定はありませんから)。
「何となく嫌ならサボる」「楽しくなければ、もうやらない」
定年後は自由気ままが、「心の平安」をもたらします。
5.資産を増やそうとするべからず
定年後、株に入れ込んで資産をさらに増やそうとする人が結構いますが、筆者者には理解できません。
日々の値動は意味がないと分かっていても、どうしても「心の平安」が乱されるからです。
ヒトの脳は、数字という概念※3に過剰反応します。
※3 なぜなら数字や数学はヒトの脳が発明した概念だからです。数学は頭の中だけで成立します。エジソンは子供のころ2つの粘土を一つにして、1足す1は1といって先生を困らせたそうです。また、数学の一部門である幾何学では、点や線は面積をもちません。こんなことは、頭の中でしか成立しません。
特に暇な定年後は株取引に熱中しがちです。
暇つぶしのための株取引は、「心の平安」を自ら進んで放棄するに等しい行為です。
6.現役時代の肩書にこだわるべからず
肩書は会社という特定の共同体でのみ通用する単なる「関係性」※4です。
※4 「関係性」とは、他との関係によって成立する意味や概念です。対立概念の「実体」は、それ自体に固有の性質や特徴です。例えば、将棋のコマの”王将”や”歩”の意味は「関係性」であり、コマの材質は「実体」です。将棋盤の上では象牙の”歩”より段ボールの”王将”の方が価値がありますが、将棋盤の外では象牙の”歩”の方が価値があります。実は、言葉も「関係性」です。したがって、言葉で積み上げられた文化や社会の仕組みも「関係性」、すなわち共同幻想です。戦争とは、「関係性」(国家)が「実体」(人命)を抹消する現象です。参考:丸山圭三郎著『文化のフェティシズム』
会社とは何の関係もない定年後の付合いで、過去の肩書に執着していては「心の平安」は訪れません。
参考:過去の肩書が定年後の人生を不幸にします|プライドの捨て方
7.損得勘定で生きるべからず
人生経験を積むと損得勘定だけで生きると「損」ということが分かってきます。
例えば、自治会です。
内田樹氏が著書『コモンの再生』で指摘するように、「自治」には個々人の「持ち出し」が必要です。
しかし、「持ち出し」=「損」という発想では、定年後は無縁※5になってしまいます。
※5 現役時代は、地縁を捨て社縁にすがって生きています。社縁とは、同じ職場で働く同僚や上司、部下などとのつながりです。しかし、定年と同時に社縁は切れて無縁になります。参考:地縁や血縁を敬遠して社縁にすがるサラリーマンの末路とは?
人間は何らかの「人とのつながり」が必要な社会的動物です。
自由な時間がたっぷりある定年後は、自治会でのボランティア(=「持ち出し」)がちょうどいい手頃な暇つぶし&社会貢献になります。
お金と商品さえあれば一人で生きていける(相互扶助が必須ではない)現代の自治会は薄い人間関係で成り立っていますので、それほど煩わしくありません。
損得勘定を捨てた「持ち出し」で、「心の平安」が得られます。
参考:定年後は自治会長をやった方がいい5つの理由とは?【経験者が解説】
8.時間を有効に使うべからず
定年後は持て余すほど時間があっても、なぜか昔と同じように時間を有効に使おうとします。
例えば、車の渋滞やレジの行列にイライラしたり、ちょと先に横断歩道があるのに道を強引に横切ったり、信号が点滅すると走ったり...
おそらく生物の進化における自然淘汰では、効率性やコスパの良さが決め手になることが多く※6 、そのクセが抜けないのでしょう。
※6 例えばミツバチが正六角形の巣を作る理由について、チャールズ・ダーウィンは著作『種の起源』でエネルギーと資源の節約を目的とする自然選択の結果であると述べています。ミツバチの巣の正六角形の構造は、空間効率が高く、少ないワックスで広いエリアをカバーできるため、自然界で最も効率的なデザインの一つとされています。
定年後はもう進化する必要もないので、先を急ぐことなくゆったり構えて「心の平安」を得ることが大切です。
9.健康第一になるべからず
定年を迎える年齢になれば大黒柱として役割も終えているので、極論すればいつ死んでもいいわけですが、なぜか老後の不安の一位は健康だという朝日新聞Reライフプロジェクトの調査データがあります(下のグラフ参照)。
引用:97%が老後の生活に不安
歳をとってからの不調は病気というより老化現象です。
老後の健康不安は、老化現象を病気にでっち上げて稼ぐ人たち(医療関係者、製薬会社あるいはマスコミ)が、人間ドックや健康診断を通じて不安をあおることも一因です。
実は、健康診断や人間ドックが寿命を延ばすというエビデンスは、現時点では明確には示されていません。※7
※7 いくつかの研究では、健康診断を受けた人と受けなかった人の間で、総死亡率や特定の病気による死亡率に有意な差が見られなかったと報告されています。例えば、コクラン共同計画によるメタ解析では、健康診断が総死亡率やがん、循環器疾患による死亡率を減らす効果がないとされています。また、デンマークで行われた大規模なランダム化比較試験でも、健康診断を受けたグループと受けなかったグループの間で、心臓病や脳卒中の発症率や総死亡率に有意差がないことが示されました。 欧米などでは、個人が主治医と相談しながら必要な検査を受けることが一般的であり、日本だけが定期的な健康診断を熱心に受けています。
世界的にみても厳しい基準値で病人にされて薬を飲み続けていては、せっかく世界一の長寿を手に入れても「心の平安」を得るのは到底不可能です。
参考:定年後の健康管理がストレスに!残る人生をストレス無く生きるには?
10.妻に頼るべからず
お金を稼いでいた現役時代と同じ態度で妻に接することは控えるべきです。
「おい、飯!」「おい、お茶!」は厳禁です。
ある日突然、三くだり半※8を突きつけられたらおしまいです。
※8 三くだり半は、江戸時代に用いられた離婚の手続きの一つです。夫が妻に対して、離婚の意思を示すために書いた文書のことを指します。この文書は、わずか三行半の長さで書かれたことから、この名が付けられました。その当時、離婚は男性側の一方的な意思で行われることが多く、女性にはあまり選択の余地がありませんでした。今ではどちらかというと、女性から突きつけられることが多いようです。
定年後の家事の分担は平等が理想です。
自分の事は自分でできるよう少しずつその範囲を増やす努力が、熟年離婚のリスクを減らします。
「心の平安」は妻との良好な関係があってこそ得られるものです。
参考:【熟年離婚回避】定年後に妻と良好な関係を築くための3つのポイント
まとめ
筆者の定年後を幸せに生きるための十戒とは?
【現役50代から少しずつ始めた三戒】
1.人間関係に幸せを求めるべからず
2.消費脳に支配されるべからず
3.他人と自分を比較するべからず
【定年後からの七戒】
4.孤独を恐れるべからず
5.資産を増やそうとするべからず
6.現役時代の肩書にこだわるべからず
7.損得勘定で生きるべからず
8.時間を有効に使うべからず
9.健康第一になるべからず
10.妻に頼るべからず