時間にたっぷり余裕がある定年退職者は、自治会長候補として最適です。
そして、現役時代に比べれば、自治会長の仕事自体は大したことではありません。
ただし、現役時代との大きな違いが一点だけあります。
それは、自治会の運営は民主制だということです。
日本人、特に日本のサラリーマンは民主制に慣れていません。
会社組織はタテ社会であり、身分制度※1 に基づいた封建社会であり、独裁制(トップダウン組織)の社会だからです。※2
※1 参考:【就活】大企業(JTC)の知られざる身分制度【経験者が実態を解説】
※2 会社では、意見の言いたい放題はあり得ません。そんなことではサラリーマンは失格です。この忖度組織では「おっかない人(権力者)」の意向に沿った方向に阿吽(あ・うん)の呼吸で意見がまとまるので、ある意味「楽」です。しかし、民主制で運営される自治会は、いろんな意見が出ることもあり、忖度組織に慣れた人にとっては面倒な組織です。ちなみに、作家 橘玲氏が指摘するように「Democracy」の和訳は、民主主義ではなく民主制が正解です。
定年退職者で自治会長に向いている人とは、一言で言えば、不慣れな民主制に順応できる人です。
逆に言えば、サラリーマン時代に何の抵抗もなく忖度人生を歩んだ方は、この純粋な民主制はきついかもしれません。
自治会長だからといって、だれも忖度なんかしてくれませんから。
この記事を読めば、民主制で運営される自治会のまとめ役に必要な資質が分かります。
退職後に自治会長になった筆者が、定年退職者で自治会長に向いている人の4つの特徴について解説します。
<自己紹介>
筆者本人(1960年生)
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
定年退職者で自治会長に向いている人4つの特徴とは?
①想定外の意見でも真摯に聞ける人
日本の企業は、メンバーシップ型雇用(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)を採用しているため、社員は固定化・同質化しています。※3
※3 仮に異質で輪を乱す社員がいたら排除(子会社へ出向など)されてしまいます。
そのため、会社では皆が言うことは想定の範囲内でした。
しかし、自治会ではそういうわけにはいきません。
民主制で運営される自治会では、どんな意見にも真摯に耳を傾ける態度が必要です。
現役時代は、新人社員の想定外の話をついつい途中で遮って、教育的指導を展開することもあったかもしれませんが、自治会ではそうはいきません。
②冷静で感情的にならない人
現役時代は、「長」の肩書を持つ人の意見には面と向かって反論することはあまりなく、原則、皆従いました。
しかし、これも自治会ではそういうわけにはいきません。
住民の中には、何度説明しても分かってもらえない人もいますが、決して感情的になってはいけません。
民主制では、粘り強く対応することが大切です。
そのうち、他の住民から助け舟が出て議論が収束することもあります。
冷静な態度で住民の信頼を得られれば、必ず助けてくれる人が現れます。
③意見を集約できるサバイバル力がある人
筆者の言うサバイバル力とは、言ってみれば忍耐力のあるリーダーシップです。
別の言い方すると、市井の人に通用するリーダーシップです。
日本企業、特に大企業(JTC※4)の選別主義で選別されたトップ・エリートが発揮するようなお膳立てされたリーダーシップではなく泥臭いリーダーシップが自治会には必要です。
※4 JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング
参考:選別主義の矛盾と不条理|選別されたエリートたちの実像とは?
④「持ち出し」=「損」と思わない人
内田樹氏が著書『コモンの再生』で指摘すように、「自治」には構成員による「持ち出し」が必要です。
例えば、ゴミステーションひとつをとっても、場所の提供、カラス対策ネットの設置・修繕費用や手間、日常の管理など、構成員による「持ち出し」が必要です。
また、自治会長は各種会合や町内イベントへの参加、各種資料作りやコピー、ポスティングなどの他そこそこ雑用もあります。
自治会長とは最も「持ち出し」が多い構成員です。
まとめ
定年退職者で自治会長に向いている人4つの特徴とは?
①想定外の意見でも真摯に聞ける人
②冷静で感情的にならない人
③意見を集約できるサバイバル力がある人
④「持ち出し」=「損」と思わない人
定年退職者で自治会長に向いている人とは、要するにヨコ社会に順応できる人です。
タテ社会に慣れきって抜け出せない人には、自治会長は向いていません。
参考:【自治会長のリアル】自治会長の選出方法と仕事とは?【経験者が解説】