脱力できていない間違った立ち方や歩き方は、日常生活における疲れの一因となります。
脱力できていないと、どこかの筋肉に余計な負担がかかり続けるからです。
そして脱力できない原因は、二足歩行の難しさにあります。
実際、 横になっている時は体のどこかに力が入ることはありませんし、四つん這いの方が脱力はかなり簡単です。
私たちは日常生活の中で気付きませんが、重力に逆らって二本足で立って歩くためには非常に高度な技術が必要になります。
ロボットが人間と同じような動的歩行が初めて可能になったのは、ホンダが「P2」を発表した1996年※1ですが、これはアポロ11号によって人類が初めて月に到達した1969年の27年後です。
※1 1969年に早稲田大学の加藤一郎教授が初めて開発した二足歩行ロボット「WAP-1」や、1973年に同じく早稲田大学で開発された全身型の二足歩行ロボット「WABOT-1」は、静的歩行(重心が常に支持脚の上にある状態)を実現したものであり、実際の二足歩行とはほど遠いものでした。
このように、人間だけができる二足歩行は高度な技術を要するため、疲れの原因となる誤った立ち方や歩き方になりやすいのです。
この記事では、人間の基本動作である「立つ」「歩く」に焦点をあてて、日常生活で疲れない体の使い方を解説します。
②脱力した歩き方のコツとは?
座るより立つ方が楽で、ブログ執筆はスタンディングデスクを利用している筆者が、日常生活で疲れない体の使い方|脱力した立ち方と歩き方のコツを解説します。
<自己紹介>
筆者本人(1960年生)
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
脱力した立ち方のコツとは?
脱力して立つには、筋肉ではなく「骨で立つ」必要があります。
そして「骨で立つ」ためには、足の裏の圧中心点は脛骨(けいこつ)の真下が必須です(下図参照)。
足の裏の圧中心点とは、足の裏にかかる力(圧力)が集中していると考えられる点を指します。
当然、動き(重心の移動)に応じて母趾球(親指の付け根)などに圧中心点は動きますが、普通に立ったり歩いたりするときはこの位置(イメージ的には踵に近い位置)でキープすることが大切です。
この位置に圧中心点をキープして、腸腰筋とハムストリングにより骨が体重を支えてくれる微妙なバランスを保つ(重心を調節する)ことができれば、無駄な筋力を使う必要のない脱力した立ち方が可能になります(下図参照)。
足の裏の圧中心点の位置がずれると、体はバランスを保つためにアウターマッスル(表層筋)などを動員する必要が出てきます。
例えば、圧中心点が前にずれる※2 と、大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)だけに大きな力を加え続けて立っている、すなわち筋肉で立っている状態になり、これが日常生活での疲れの原因となります。
※2 正確に言うと、「圧中心点が前にずれる」とは、「体の重心が前にずれるために、支点である圧中心点が前にすれる」です。体の重心と支点が合っていないと立っていられません。
支える動作と目的動作
人間が立って何かする時は、この二つの動作に分解できます。
支える動作とは重力に逆らって倒れないように体を支える動作で、バランス感覚が重要です。
この動作が簡単にできれば目的動作にエネルギーや神経を集中できるためパフォーマンスが上がります。
トップアスリートとは、見方を変えれば支える動作の達人でもあるのです。
一方で、体力が衰えたお年寄りは支える動作だけで手一杯になり、動きがぎこちなくなるのです。
脱力した歩き方のコツとは?
脱力した歩き方のコツも立ち方と同じように、「骨で立つ」歩き方です。
下の画像をご覧ください。
安倍元総理は、重心と軸足(右足)の圧中心点が前にずれて大腿四頭筋に力が入った状態で左足を前に出しています。
日本人のほとんどは、この歩き方です。
一方、オバマ元大統領は、左右交互に「骨で立つ」歩き方※3 です。
※3 体重が片足に乗った状態で、重心が前にずれた瞬間に逆の足を地面にのせて体重を受け止めるイメージです。
これは、欧米人に多い歩き方です。
脱力したオバマ元大統領に比べると、安倍元総理は力感が感じられます。
下の画像は、タイガーウッズが完全に片足の骨で立って歩いている姿です。
このように完全に脱力した姿は、一本の糸で上から吊り下げられているようにも見えます。
引用:New Tiger biography searches for the secret ingredient in Woods’ competitive life
まとめ
日常生活で疲れない体の使い方とは、無駄な筋力を使わない体の使い方です。
地球上で唯一二足歩行をする人間にとって、「立つ」「歩く」で無駄な筋力を使わないことが、日常生活で疲れないために最も有効です。
それは、「骨で立つ」ことによって実現できます。
筋肉は「疲れ」を感じますが、骨は感じません。