引用:日本の1人当たり労働生産性 G7で最下位 | 労基旬報オンラインに筆者が加筆
日本の従業者1人当たりの労働生産性は、G7で最低です(上のグラフ参照)。※1
※1 ちなみに、時間当たりの労働生産性も最低です。参考:著しく低い日本の労働生産性~「量」「質」国際比較
日本と他のG7諸国の働き方に関連する違いと言えば雇用形態、すなわちメンバーシップ型とジョブ型の違いです。
メンバーシップ型とは、新卒一括採用・終身雇用・年功序列を3本柱とする日本固有の雇用形態です。
この雇用形態は、労働力を長期安定的に囲い込むことを目的として高度経済成長期に本格的に導入され、以降バブル経済期までの日本の経済成長を支えました。
しかし、10年ほど前から日本の労働生産性の順位がさらに下がってきており、時代に合わないメンバーシップ型雇用がその大きな要因であることは容易に想像できます。
この記事を読めば、日本固有の雇用形態であるメンバーシップ型の本性が分かります。※2
※2 なお、この記事の「主役」である日本のホワイトカラー労働者(管理職、専門職、事務職、販売職など)の割合は、総務省の統計によると、全就業者の約41.7%を占めています(2023年時点)。この割合は過去数十年にわたり増加傾向にあり、技術革新やオフィスの自動化が進んでも減少することはありませんでした。
②メンバーシップ型とジョブ型それぞれから生じる組織形態の違いとは?
<自己紹介>
筆者本人(1960年生)
筋トレ歴16年 ボクシング歴11年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2923年 退職
目次
労働生産性の観点から見たメンバーシップ型とジョブ型の違いとは?
労働生産性の観点から見たメンバーシップ型とジョブ型の違いを表にまとめました(下表参照)。
メンバーシップ型では、新卒一括採用でメンバーにした(囲い込んだ)社員に会社都合でポスト(仕事)を割り当てます。
ポスト数を精査して採用人数を決めているわけではないので、ポストの捏造体質は構造的な問題と言えます。
そもそもメンバーシップ型の雇用形態が本格的に導入されたのは、高度経済成長期でした。
当時は人口増加による内需拡大により、次々とモノを作れば簡単に売れる時代であり、労働力不足ため杜撰な採用計画でも無駄な採用にはなりませんでした。
しかし、需要が飽和状態のポスト工業社会※3 になっても計画性ない「採用計画」を続けた結果、ホワイトカラーの人余りが常態化しています。
※3 ポスト工業社会とは、失われた30年の間に、需要の飽和とニーズの多様化・専門化が進み、その変化も加速した社会です。具体的には、2010年代以降のGoogle、Apple、Facebook(現Meta)、Amazonなど巨大IT企業が世界の経済をけん引してきた時代が特にその象徴的な時代です。これに対し、工業社会とは、人口増による内需でモノをつくれば簡単に売れた少品種大量生産の時代で、日本では概ね1970年代以前の社会を指します。
もはやメンバーシップ型とは、非効率なワークシェアリングの代名詞です。
一方、ジョブ型はメンバーシップ型と真逆で、ポストに人をつける(ポストごと人を採用する)ため、ポストを捏造すると言う発想は構造的に生まれません。
メンバーシップ型とジョブ型それぞれから生じる組織形態の違いとは?
メンバーシップ型とジョブ型それぞれから生じる組織形態の違いを表にまとめました(下表参照)。
引用:堺屋太一著『組織の盛衰』を参考にして筆者が作成
メンバーシップ型は、新卒一括採用でメンバーになれば定年まで会社という「共同体」の一員であることが保証されます。※4
※4 日本人に職業を聞くと会社員と答えて勤め先を答えます。一方、欧米人に職業を聞くと職種(例えば、エンジニア、営業職、経理・財務、経営職など)を答えます。
「共同体」の組織の目標は「居心地の追求」であり、組織評価の尺度は「結束力と仲間意識」、そして組織の理想の状態は「公平性と安住性」です。
こう言った組織では、横並び意識や温情による昇進昇格、ポストの捏造※5 が頻繁に行われます。
※5 部下のいない担当課長や担当部長は、ポスト捏造の一形態です。また、余裕のある大企業では、管理職が自身の権力を誇示するために、必要以上に部下を増やす傾向があります。
また、メンバーシップ型から生じる「共同体」の個人評価の尺度は「主観的評価による人気と人格」です。
従って、結果よりもプロセスが重視され、評価には上司への忖度が大きく影響します。
要するに、日本の長時間労働は、「がんばり」アピールが主要因なのです。
一方、ジョブ型から生じる組織形態は、「共同体」とは真逆の「機能体」であり、労働生産性は相対的に高くなります(再掲した下図参照)。
まとめ
✔労働生産性の観点から見たメンバーシップ型とジョブ型の違とは?
✔メンバーシップ型とジョブ型それぞれから生じる組織形態の違いとは?
労働生産性が超低いあるインフラ企業のリアル
筆者が40年のサラリーマン人生の大半を過ごしたあるインフラ企業の実話です。
インフラ企業は、実際に金を稼ぐ現業(ブルーカラー)と現業を管理・監督する非現業(ホワイトカラー)に分かれます。
筆者は、非現業でしたが、感想を一言でいうと暇なサラリーマン人生でした。
そして、非現業の必要性はたいして感じませんでした。
非現業がやってることと言えば、管理・監督の名目で現業のじゃまをしたり、部署間での仕事や責任の押し付け合い、無能な幹部や上司の無意味な指示の処理など内部相殺されてしまうムダな仕事です。
また、何か課題があれば専門業者に外注して、結果を資料にまとめて上に報告するだけです。
非効率極まりないのですが、市場独占状態なので収益がよく、計算上は労働生産性が良くなってしまいます。