引用:日本の1人当たり労働生産性 G7で最下位 | 労基旬報オンラインに筆者が加筆
働かないフランス人より働き過ぎる日本人の方が、1人当たりの労働生産性がこんなに低いのは、日本人はブルシットジョブ(クソどうでもいい仕事)に時間を費やしているからです。
このような状況を受けて、日本では以下に示す働き方改革関連法が、2019年4月1日から順次施行されました
1. 時間外労働の上限規制
法定の時間外労働(残業)の上限を明確に規制
原則:月45時間、年360時間。
特例:特別条項が適用される場合でも、年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間が限度
2. 年次有給休暇の取得義務化
使用者(企業)が、労働者に対して毎年5日以上の有給休暇を確実に取得させることを義務化
3. 同一労働同一賃金
正社員と非正規雇用者(パートタイムや契約社員など)との不合理な待遇差を解消するための規定を導入
しかし、日本の長時間労働に関するデータを見ると、改善が進んでいる部分もありますが、依然として課題が残っていることが分かります。
例えば、厚生労働省の報告によれば、週60時間以上働く労働者の割合は過去数十年で減少傾向にあるものの、依然として一定数存在しています。
また、ホワイトカラーのサービス残業も完全に解消されたわけではありません。
この記事を読めば、フランスとの比較から日本の長時間労働が抜本的に改善されない本当の理由とこれからの賢い働き方が分かります。
なお、この記事では、ブラック企業問題は対象外とします。
※1 JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング
②フランスとの比較から分かる日本人の賢い働き方とは?
<自己紹介>
筆者本人(1960年生)
筋トレ歴16年 ボクシング歴11年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2923年 退職
目次
フランスとの比較から分かる日本人が働き過ぎる理由とは?
フランスでは、週35時間労働制が法律で定められていますが、フランス人が働かないのはこれが理由ではありません。
フランス人が必要以上に働かないのは、大半の人はがんばって働いても出世でず、日本に比べると給料が上がらないからです。
下のグラフは、フランスの職務別年収の60歳までの推移です。
出典:Insee 2014, DADS, Salaire brut en équivalent temps plein, par âge et catégorie socioprofessionnelle simplifiéeに筆者が加筆
フランスでは、日本より学歴フィルターがはっきりしており、がんばって出世して給料が上がる可能性があるのは、カードル(エリート層)だけです。
労働人口の2割弱を占めカードル (cadre)とは、企業や組織内で管理職や経営職に就くエリート層です。
カードルになるためには、グランゼコール※2 で学士号や修士号を取得することが一般的です。
※2 グランゼコール(Grandes Écoles)はフランスの大学(ユニバーシテ)とは異なるフランスのエリート高等教育機関(少人数教育)です。大学は比較的オープンな入学制で、高校卒業資格(バカロレア)があれば入学可能ですが、グランゼコールに入学するためには高度な選抜試験(コンコール)を通過する必要があります。グランゼコールの卒業生はフランスの政財界や行政で重要な役割を担うことが多いため、エリート養成機関として高い社会的地位を持っています。
現場従業員(一般従業員や工員など)や、彼らとカードル(管理職や経営職)の間に位置する中間従業員※3 は、がんばってもその身分から這い上がることはできず、年収もカードルと比べれば生涯ほとんど変わりません(上のグラフ参照)。
※3 中間従業員の学歴は、ITや金融などの分野では大卒が一般的ですが、製造業やサービス業などでは大卒以外にも職業訓練学校や技術学校の卒業生が中間従業員として働くケースもあります。
フランスでは学歴による身分制度が厳しい反面、日本のように隠ぺいされていないためムダな努力を回避してワークライフバランスを保つことができるのです。
早い話が、カードル以外の従業員は、退社時間が来たら気兼ねなくサッサと帰って、自分の時間や家族との時間を大切にします。
一方、日本では表向きには学歴フィルターが存在しない※4 ため、簡単に割り切れず、無駄な「頑張り」を続けています。
※4 日本でも学歴フィルターや性差別は存在しますが、表向きには絶対に明らかにされません。インセンティブを与え続けて搾取するのが日本固有のメンバーシップ型雇用です。参考:【就活】大企業(JTC)の知られざる身分制度【経験者が実態を解説】
そのため、日本の長時間労働は根本的に改善されることがありません。
フランスとの比較から分かる日本人の賢い働き方とは?
フランスとの比較から分かる日本人の賢い働き方とは、カードル以外の従業員のように「静かな退職」をすることです。
「静かな退職」とは以下の3つの特徴を持つ働き方です。
「静かな退職」は、定年退職が間近な社員のように、精神的に余裕を持った働き方を指し、昭和のモーレツ社員※5 とは対照的なスタイルを意味します。
※5 「モーレツ社員」は、昭和時代に使われた言葉で、猛烈に仕事に打ち込むサラリーマンを指します。これは、家庭や私生活を犠牲にして会社に人生を捧げる姿勢を形容した言葉です。高度経済成長期の日本では、なりふり構わず会社のために尽力する社員の姿を表現した言葉として使われました。
特に、ダブルインカムやディンクスで夫婦ともに正社員なら、「静かな退職」でもゆとりのある生活が十分送れます。
①昇格(出世)を目指さない
大企業(JTC)の出世に必要なのは、学歴と上司への忖度です。
上司への忖度でストレスをため込み、中途半端に出世して中間管理職になったところで、残業代が無いことを良いことに、こき使われるのが関の山です。
参考:大企業(JTC)の出世メカニズム|出世の代償と出世しないという選択肢
②言われたこと以上の仕事はしないが、言われたことはしっかりやる
仮に希望退職の募集が始まっても、「肩たたき(リストラ)」の対象にならないためには、言われた仕事は忠実にしっかりやる必要があります。
これからのリストラは、黒字企業でも実施されます。
参考:リストラが変わり始めた!これからのリストラに対応した働き方とは?
③実際に退職する気はない
特に大企業(JTC)の社員は、働きがいは無いものの、世間一般からすれば給与や福利厚生はかなり恵まれています。
実際に退職したら損です。
また、ミドル・シニア社員、特に50代の転職はかなり厳しいので、よほど希少価値のある専門スキルを持つ人以外は退職すべきではありません。
参考:大企業の50代が会社を辞めたくなった時の対処法を経験者が解説
まとめ
✔フランスとの比較から分かる日本人が働き過ぎる理由とは?
・フランスでは学歴による身分制度が厳しい反面、日本のように隠ぺいされていないためムダな努力を回避してワークライフバランスを保つことが可能
・一方、日本では表向きには学歴フィルターが存在しない ため、簡単に割り切れず、無駄な「頑張り」を続けているため長時間労働が改善されない
✔フランスとの比較から分かる日本人の賢い働き方とは?
フランスのカードル以外の従業員のように「静かな退職」をすることです。
「静かな退職」とは以下の3つの特徴を持つ働き方です。