日本の凋落ぶり(世界競争力、時価総額、名目GDP)は、まったく改善の兆しを見せていません。
失われた30年も延長確実です。
この主要な要因の一つが、時代に合わなくなったメンバーシップ型の非効率性であることは間違いありません。
また、エッセンシャルワークなどでは深刻な人手不足が生じていますが、少子高齢化の進行によって日本全体の労働力人口が減少しているわけではありません。(下のグラフ参照)。
引用:労働力人口・就業者数の推移|令和4年版厚生労働白書|厚生労働省
これは、メンバーシップ型で囲い込んだホワイトカラーの慢性的な人余りが原因で、労働力の需給バランスが崩れているためです。
この記事を読めば、メンバーシップ型の日本企業がそろそろ危ない理由が分かります。
※1 経済成長率とは、実質GDPの対前年度増減率(=経済規模の伸び)
②経済成長率の推移で分かるメンバーシップ型破綻の当然すぎる理由とは?
<自己紹介>
筆者本人(1960年生)
出世競争は早めに降りて体づくりに励む
筋トレ歴16年 ボクシング歴11年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2923年 退職
目次
1956年以降の日本の経済成長率の推移
1956年以降の日本の経済成長率 の推移は、下のグラフの通りです。
引用:図録▽経済成長率の推移(日本)に筆者が加筆
以下のように、3期に分けて経済成長率を見ることができます。
①高度経済成長期
(1956~1973年度)
⇒ 平均9.1%。
②円高不況とバブル期
(1974~1990年度)
⇒ 平均4.2%。
③失われた30年
(1991~2023年度)
⇒ 平均0.8%。
なお、経済成長率とは、実質GDPの対前年度増減率※2 のことであり、経済規模がどれだけ伸びたかを表しています。
※2 経済成長率=(当年の実質GDP−前年の実質GDP)÷前年の実質GDP×100
経済成長率の推移で分かるメンバーシップ型破綻の当然すぎる理由とは?
メンバーシップ型とは、新卒一括採用でメンバーになれば滅私奉公と引き換えに、年功序列と終身雇用で定年までの「安心」を保証する日本固有の雇用形態です。
この雇用形態の賃金カーブは、下のグラフが示すように、定年まで勤め上げれば元が取れる仕組みになっています。
引用:賃金を切り口とした年功序列型人事制度の検証 | 産業能率大学 総合研究所
このように「定年まで勤めなければ損」という仕組みになっているのは、そもそもメンバーシップ型は労働力の長期安定的な確保を目的として、高度経済成長期に本格導入された雇用形態だからです。
しかし、この仕組みが機能して、会社のメンバー全員が年功序列と終身雇用の恩恵を受けるには、右肩上がりの経済成長が前提になります。
そのため、バブルが崩壊して右肩上がりが終焉した1990年代初頭以降(再掲した下のグラフ参照)は、年功序列と終身雇用による人件費負担やポストの増設に耐えられなくなりました。
その結果、役職定年制度※4 が導入されたり、最近では黒字企業でも早期希望退職者の募集が行われています。
※4 役職定年制度とは、管理職が所定の年齢に達した時に、ラインから外れて役職と部下をはく奪され、給料も減額される制度のことで、ハッキリ言ってポストの新陳代謝と人件費削減を図るための「戦力外通告」です。この役職定年制は、1986年に「60歳定年」が努力義務化されたことを契機に、主に大手企業が導入を始めました。
右肩上がりの経済成長を支えるための労働力確保策として、高度経済成長期に始まったメンバーシップ型ですから、右肩上がりの経済成長の終焉で破綻するのは火を見るよりも明らかです。
参考:なぜ上場企業は黒字でもリストラするのか?【リストラ時代の働き方】
まとめ
✔1956年以降の日本の経済成長率の推移
①高度経済成長期
(1956~1973年度)
⇒ 平均9.1%。
②円高不況とバブル期
(1974~1990年度)
⇒ 平均4.2%。
③失われた30年
(1991~2023年度)
⇒ 平均0.8%。
✔経済成長率の推移で分かるメンバーシップ型破綻の当然すぎる理由とは?
・メンバーシップ型は、右肩上がりの経済成長を支えるための労働力確保策として、高度経済成長期(経済成長率 年平均9.1%の時代)に始まった
・逆に、右肩上がりの経済成長が、終身雇用や年功序列の人件費増とポスト増を支えた
・従って、右肩上がりの経済成長が終わればメンバーシップ型が破綻するのは火を見るよりも明らか
このようにメンバーシップ型雇用は、現在では完全に自己矛盾に陥っている雇用形態です。
経済成長が停滞して、もはや労働力の長期安定的な確保策(新卒一括採用、年功序列、終身雇用)が必要ないにもかかわらず続けていることが、当然すぎる問題の本質です。
参考:メンバーシップ型雇用を変えたくない社員と社長それぞれの事情とは?