ながら江雪の人生ノート

現役サラリーマンと定年シニアのお悩み解決

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大企業のホワイトカラーは転職で賃金が下がる理由を人的資本論で解説

大企業のホワイトカラーが転職する場合、ポテンシャ採用が可能な20代を除けば、年齢を重ねるほど転職時に賃金が下がるのが一般的です。

そもそも、 大企業の40代以上のホワイトカラーは、転職自体が困難であるというのが現実ですが、これも賃金が下がる現象の一形態です。

 

参考:50代転職は厳しい理由|転職は絶対やめた方がよい人と可能性がある人

 

この記事では、アメリカの経済学者 ゲーリー・ベッカーの人的資本論を使って、その理由を説明します。

■この記事を読んで頂きたい人■
・大企業(JTC※1)の若手ホワイトカラー

※1  JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング
 
■この記事でわかること■
①アメリカの経済学者 ゲーリー・ベッカーの人的資本論とは?

②大企業のホワイトカラー※2 は転職で賃金が下がる理由とは?

2 転職でポテンシャル採用が可能な20代のホワイトカラーは対象外です
 
日本のホワイトカラーは転職すると賃金が下がるので2回目の転職は思い止まった筆者が、日本のホワイトカラーは転職すると賃金が下がる理由を人的資本論で解説します。

<自己紹介>

筆者本人(1960年生)
筋トレ歴16年 ボクシング歴11年

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2923年 退職

 

      

 目次

アメリカの経済学者 ゲーリー・ベッカーの人的資本論とは?

ゲーリー・ベッカーの人的資本論は、教育や訓練を通じて個人が持つ知識やスキルを「資本」として捉え、それが経済的な価値を生み出すという考え方です。

金融資本は金融市場で運用して利益を追求するように、知識やスキルなどの人的資本も労働市場で「運用(活用)」して報酬を得るという考え方です。

大企業のホワイトカラーは転職で賃金が下がる理由とは?

大企業(JTC)で身に付くホワイトカラーの人的資本とは?

大企業(JTC)では、新卒一括採用で正規メンバーになってしまえば原則定年まで転職することはありません。

終身雇用と年功序列による定年までの「安心」を得るために、正規メンバーは進んで会社の奴隷になるからです。

そのため、大企業(JTC)の組織形態は、社員が同質化※3 ・固定化・一体化することで、下記の表に示される「共同体(ムラ社会)」となっています。

 

※3 社員が同質化するのは、人事部がリスクを回避するために、社風に合った同じようなタイプの人材しか採用しないからです。

 

引用:堺屋太一著『組織の盛衰』を参考にして筆者が作成

この組織形態は、欧米のように転職によって頻繁に人材が入れ替わるジョブ型による「機能体」とは対照的です。

「共同体(ムラ社会)」における個人評価の尺度は、「主観的評価による人気と人格」ですから、大企業(JTC)で身に付くホワイトカラーの人的資本とは、ムラ社会での評判をあげる(あるいは評判を落とさない)ための知識やスキルがメインになります。

例えば、以下のような市場価値のない(転職時に必要とされない)人的資本です。

【大企業(JTC)で身に付くホワイトカラーの人的資本の事例】

・幹部や上司への忖度をスマートに行うスキル

・幹部が好む「挑戦」をリスクなく行う(なんちゃってチャレンジ)スキル

・幹部から高く評価される資料の作成およびプレゼンテーションを行うスキル

・結果がでなくてもプロセスを重視した自己アピールを行うスキル

・保身を目的とした責任分散型の手法で仕事を進めるスキル

・失敗時に前例を効果的に活用して言い訳を成立させるスキル

大企業(JTC)では、社員がこんなスキルしかないのに仕事が回るのは、豊富な資金力を背景に、定型業務以外の専門業務の多くをアウトソーシングという形で外部委託するからです。

大企業(JTC)のホワイトカラーは、ジェネラリストという言葉(ジェネラリストをスペシャリストと明確に区分するのは日本だけです)で隠ぺいされていますが、実態は「何でも屋の素人」※4 なので、専門スキルを必要とする仕事は外部委託せざるを得ません。

 

※4 メンバーシップ型では、メンバーになった後に会社都合で仕事を割り当てられ、異動のたびに仕事が変わることが多いため専門スキルを身に付けるのは困難です。また、日本のサラリーマンはどの企業に所属するかに関心を抱いていますが、自分の専門分野(職種)を何にするかには無関心です。この点は、ジョブ型の欧米とは対照的です。

 

 

 

労働(転職)市場で「運用(活用)」して高い報酬を得られる人的資本とは?

企業が中途社員を採用するのは、プロパー社員や外部委託では解決できない問題を解決するためです。

したがって、労働(転職)市場で「運用(活用)」して高い報酬が得られる人的資本とは、中途採用を実施する企業が抱えている問題を解決できる希少性のある専門スキルです。

このように、メンバーシップ型の日本企業でも中途採用するときにはジョブ型に近いかたちで採用するため、典型的なメンバーシップ型の大企業(JTC)に育てられたジェネラリスト(何でも屋の素人)の人的資本※5 では労働(転職)市場で相手にされません。

 

※5 学歴は、ポテンシャル採用時には最も価値ある人的資本ですが、問題解決を目的とした中途採用時においては、それほどではありません。また、資格の人的資本としての価値はケースバイケースです。例えば、建築士や宅地建物取引士のよう、業界でほぼ必須とされる資格は非常に価値があります。

 

まとめ

アメリカの経済学者 ゲーリー・ベッカーの人的資本論とは?

・金融資本は金融市場で運用して利益を追求するように、知識やスキルなどの人的資本も労働市場で「運用(活用)」して報酬を得るという考え方

大企業のホワイトカラーは転職で賃金が下がる理由とは?

・労働(転職)市場で「運用(活用)」して高い報酬が得られる人的資本とは、中途採用を実施する企業が抱えている問題を解決できる希少性のある専門スキル

・しかし、大企業のホワイトカラーが身に付けているのは、ムラ社会での評判をあげる(あるいは評判を落とさない)ための市場価値のない知識やスキルがメイン