ながら江雪の人生ノート

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日本型経営を続ける企業では減点主義が絶対なくならない本当の理由

日本型経営※1 を続ける企業でも、これまでにチャレンジ精神を評価する加点主義への移行を試みた企業もありました。

 

※1 日本型経営とは、メンバーシップ型雇用(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)と企業内労働組合(欧米の労働組合は産業別か職業別)を特徴とする日本固有の経営システムです。

 

しかし、机上では成り立っても、実際に運用してみると必ず「なんちゃって加点主義」に陥ります。

この記事では、この根本的な原因を解説します。

■この記事を読んで頂きたい人■
・日本型経営を続ける企業で、減点主義にうんざりしているサラリーマン

 

■この記事でわかること■
①日本型経営を続ける企業の組織形態(組織の本質)とは?

②日本型経営を続ける企業では減点主義が絶対なくならない本当の理由
 
日本型経営企業の減点主義にうんざりした筆者が、日本型経営を続ける企業では減点主義が絶対なくならない本当の理由を解説します。

<自己紹介>

筆者本人(1960年生)

出世競争は早めに降りて体づくりに励む
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2923年 退職

 

      

 目次

日本型経営を続ける企業の組織形態(組織の本質)とは?

日本型経営を続ける企業の組織形態(組織の本質)とは、ムラ社会(共同体)です。

メンバーシップ型雇用(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)を最大の特徴とする日本型経営企業では、転職や中途採用が少ないため、社員は固定化して閉鎖的なムラ社会になっています。

特に、他社との競争が少ない経営にゆとりのあるホワイト大企業(JTC※2)では、社員の意識はますます内向きになり、より強固なムラ社会が形成されています。

 

※2  JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング

 

日本のメンバーシップ型雇用とは対照的なジョブ型雇用※3 を採用する欧米企業との違いを以下の表にまとめました。

 

※3 メンバーシップ型雇用は、人に仕事をつける(まず大量に人を採用して、その後に仕事を割り当てる)雇用形態。一方、ジョブ型雇用は、仕事に人をつける(仕事ごとに人を採用する)雇用形態です。

 

欧米企業のジョブ型雇用は、頻繁な転職や中途採用を前提とした雇用形態であり、日本のように社員が固定化することはありません。

そのため、欧米企業の組織形態はムラ社会(共同体)ではなく、企業本来の姿である機能体となっています。

ムラ社会(共同体)と機能体の違いは、下表のとおりです。

引用:堺屋太一著『組織の盛衰』

この表は、筆者の記事に頻繁に登場しますので説明は割愛します。

 

 

日本型経営を続ける企業では減点主義が絶対なくならない本当の理由

日本型経営を続ける企業では減点主義が絶対なくならない本当の理由は、以下です。

・ムラ社会=共同体においては、一度の失敗が決定的となり、その後どれだけ努力しても悪評が覆ることなく、定年まで固定される

・そのため、減点主義が人事評価制度として正式に明文化されていないにも関わらず、社員は失敗を懼れる

これは、一生許されない「村八分」※4 と同じです。

 

※4 「村八分」とは、村の掟や慣習を破った者とは葬式と火事の消火活動以外一切付き合わない(交際の八分を絶たれる)という、かつての日本の村社会で行われていた制裁行為を指します。

 

ムラ社会=共同体では、世代の新陳代謝以外に構成メンバーの入れ替わりがほとんど無く固定しているため、個人の評判も固定します。

特に他人の悪い評判は、相対的に自分の立場が優位になるため、誰も忘れようとしません。

一方、欧米では成果主義の考え方が強く、過去の失敗よりも「今どれだけ成果を出せるか」で評価されます。

そのため、一度ミスをしても、(転職先での)その後の努力や成果によって信用を回復することが可能です。

欧米との違いを下の表にまとめました。

また、現在のように経済が停滞している日本の状況では、企業におけるポスト数や人件費の負担可能額が限られているため、社員が失敗を懼れる理由として、以下も考えられます。

・経済成長が見込めない今の日本の企業は、ポスト数や人件費の負担可能額が限られたゼロサム社会※5 であり、一度の失敗が命取りのなる

 

※5 ゼロサム社会とは、限られた資源や利益を巡って、誰かが得をすると他の誰かが損をするような社会のことを指します。つまり、全体の利益の合計がゼロになるような状況です。

 

こぼれ話

シリコンバレーの「Fail fast, fail often, fail forward」

「Fail fast, fail often, fail forward(早く失敗し、頻繁に失敗し、その失敗を前進に活かせ)」は、特にスタートアップの世界でよく聞かれるフレーズです。

このフレーズは、失敗を恐れずに挑戦し、早めに失敗を経験することでその失敗から学び、次のステップで成功に近づけるという哲学を示しています。

例えば、新しいプロジェクトやアイデアに取り組むときに、完璧を目指して無駄な時間をかけるよりも、まず行動してみて、失敗したらすぐに改善するというように、素早く繰り返し試行錯誤することで、効率的に成長できるという考え方です。

まとめ

日本型経営を続ける企業の組織形態(組織の本質)とは?

・ムラ社会(共同体)

日本型経営を続ける企業では減点主義が絶対なくならない本当の理由とは?

①ムラ社会=共同体においては、一度の失敗が決定的となり、その後どれだけ努力しても悪評が覆ることなく、定年まで固定される

②また、経済成長が見込めない今の日本の企業は、ポスト数や人件費の負担可能額が限られたゼロサム社会であり、一度の失敗が命取りのなる

以上の理由で、減点主義が人事評価制度として正式に明文化されていないにも関わらず、社員は失敗を懼れる

そして、自ら挑戦しない社長の「挑戦」という掛け声を決して真に受けてはいけません。

参考:会社が業績評価で求める「挑戦」を真に受けてはいけない理由と対処法