ながら江雪の人生ノート

現役サラリーマンと定年シニアのお悩み解決

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日本の大学生は卒業さえできればたいして勉強しなくていい本当の理由

「大学に入ったら、勉強は卒業に必要な単位が取れる程度で十分」

「あれほど辛かった受験勉強も、大学に入ったら遊ぶために頑張ったようなもの」

こんな感じで、今の大学生も40年以上前の筆者と何も変わらないでしょう。

なぜなら、今でも日本の大学生は、たいして勉強しなくても卒業さえできれば何も困らないからです。

この記事では、教育行政では手に負えない、勉強しない大学生がいつまでも量産される本当の理由を解説します。

■この記事を読んで頂きたい人■
・日本の大学生が勉強しない原因は、教育行政や大学生自身に問題があると考える人

 

■この記事でわかること■
① 日本と欧米の大学生の勉強の違い

②日本の大学生は卒業さえできればたいして勉強しなくていい本当の理由
 
大学時代に卒業できる程度にしか勉強しなかった筆者が、日本の大学生は卒業さえできればたいして勉強しなくていい本当の理由を解説します。

<自己紹介>

筆者本人(1960年生)

出世競争は早めに降りて体づくりに励む
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2923年 退職

<資格> 一級建築士(管理建築士)

 

      

 目次

日本と欧米の大学生の勉強の違い

欧米の多くの大学では、学生が特定の専門分野を決めて、その分野の知識や経験を深めることが一般的です。

例えば、専攻を選んで授業を受けるだけでなく、インターンシップや実習を通じて、職場での経験を得たり、自分の学びを実際の課題に応用する機会が提供されます。

つまり、欧米の大学生の勉強は、将来のキャリアを築く土台となるスキルを身につけるための実学に重きを置いているのです。

一方、日本の大学生の勉強は、楽に単位の取れる授業やゼミを選択して、できるだけ勉強しないで、いかに楽しく大学生活を送って卒業するかに重点が置かれています。※1

 

※1 日本の就職活動(書類選考や面接)では、サークル活動やアルバイトの経験が過大に評価される傾向があり、これも大学生が勉強しない口実の一つとなっています。また、日本の企業は、体育会系出身者が大好きです。参考:日本型経営企業では体育会系出身者の評判がよくて採用される本当の理由

 

 

 

日本の大学生は卒業さえできればたいして勉強しなくていい本当の理由とは?

メンバーシップ型雇用のイメージ

日本の大学生は卒業さえできればたいして勉強しなくていい本当の理由は、教育行政や大学生自身に根本的な問題があるのではなく、日本企業の雇用形態に起因しているのです。

日本と欧米の雇用形態の違いと、その違いから派生する働き方やキャリアに対する考え方の違いなどを、以下の比較表を使って解説します。

日本固有の雇用形態であるメンバーシップ型(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)※2 は、欧米のジョブ型とは全く対照的な雇用形態です。

 

※2 メンバーシップ型(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)は、労働力の長期的かつ安定的な確保が最大の経営課題であった高度経済成長期(1950年代半ばから1970年代初頭)に導入されて広がりました。それから半世紀以上が経過し、経営環境が大きく変化したにもかかわらず、依然として抜本的な見直しは行われていません。

 

メンバーシップ型(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)は、まずメンバーを決めて、その後に仕事を割り当てるという「人に仕事をつける」雇用形態であるのに対し、ジョブ型は、仕事ごとに人を採用する「仕事に人をつける」雇用形態です。

そして、メンバーシップ型でメンバーを選定する際の決め手となるのは、学歴です。

日本では「ポテンシャル採用」という言い方でごまかしていますが、結局は学歴をたよりに採用するしか方法はありません。※3

 

※3 参考:【就活】大企業(JTC)に学歴フィルターがあるのは当然?3つの理由

 

このメンバーシップ型の新卒採用では、企業が入社後に社員をジェネラリスト に育てる※4ことを前提としているため、即戦力となるスキルや専門知識を重視しません。

 

※4 日本のジェネラリストは、異動のたびに会社に言われるがままになんでもこなす、言わば「何でも屋」です。「何でも屋」には、市場価値のある専門スキルが身に付かないため転職が困難で、最初に入社した会社の檻に閉じ込められたまま飼殺されるのが普通です。「社員をジェネラリスト に育てる」とは、社員を「何でも屋」として使い回すことを意味します。なお、ジェネラリストとスペシャリストを明確に区分するのは日本だけです。

 

一方、ジョブ型の新卒採用では、特定のポジションや役割に求められる専門スキルや経験の有無が選考の決め手となるため、大学での実習やインターンシップなどで実績を積むことが大切になってきます。

つまり、欧米では学歴フィルターも採用プロセスの一部にはありますが、それ以上に候補者がその役割を実際に「即戦力」としてどれだけこなせるかが重要視されるのです。

以上、日本と欧米を比較しながら解説した、日本の大学生は卒業さえできればたいして勉強しなくていい本当の理由を以下にまとめます。

・日本のメンバーシップ型雇用においては、欧米のジョブ型雇用のように「即戦力」の有無ではなく、極端にえば学歴が新卒採用の主な決め手となる

・逆に言えば、日本の大学生は、ほぼ学歴によって就職先のランクが決まるため、大学で努力してもあまり意味がない

・要するに、日本の大学生は卒業証明書さえゲットできれば、遊んでいてもその後の人生に大きな支障が出るわけではない

下の表(再掲)で、まだ触れていないところを簡単に解説します。

日本人の働き方のスタイルは、一つの会社と「結婚」して、その会社に定年まで依存する働き方です。

一方、欧米人の働き方のスタイルは、一つの職能と「結婚」して、その職能※5 に依存する働き方で、定年はありません。

 

※5 職能とは、特定の職務や仕事を遂行するために必要な能力やスキル、知識のことを指します。例えば、ソフトウェア開発職能(プログラミングスキル)、会計職能(経理知識)、営業職能(プレゼンテーション能力)などです。日本人のサラリーマンに職業を聞くと「会社員+会社名」を答えますが、欧米人は職能を答えます。

 

この働き方のスタイルの違いによって、「キャリアプラン※6 の主体」と「キャリアアップの方法」には上の表に示したような対照的な違いが生まれます。

 

※6 参考:キャリアプランの本当の意味と今後は真剣に考える必要がある理由とは?

 

なお、日本のキャリアアップの方法が、「業績より上司への忖度」であることに、違和感を覚える方は、大企業(JTC)の出世メカニズム|出世の代償と出世しないという選択肢をご覧ください。

 

 

まとめ

日本の大学生は卒業さえできればたいして勉強しなくていい本当の理由とは?

・日本のメンバーシップ型雇用においては、欧米のジョブ型雇用のように「即戦力」の有無ではなく、極端にえば学歴が新卒採用の主な決め手となる

・逆に言えば、日本の大学生は、ほぼ学歴によって就職先のランクが決まるため、大学で努力してもあまり意味がない

・要するに、日本の大学生は卒業証明書さえゲットできれば、遊んでいてもその後の人生に大きな支障が出るわけではない

メンバーシップ型雇用の弊害については、他の記事でもいろいろ取り上げています。

なかでも、この専門スキルを持たない働き方が、現在のポスト工業社会※7 における日本の国際競争力低下の大きな要因だと筆者は考えます。

 

※7 ポスト工業社会とは、失われた30年の間に、需要の飽和とニーズの多様化・専門化が進み、その変化も加速した社会です。具体的には、2010年代以降のGoogle、Apple、Facebook(現Meta)、Amazonなど巨大IT企業が世界の経済をけん引してきた時代が特にその象徴的な時代です。これに対し、工業社会とは、人口増による内需によってモノをつくれば簡単に売れた少品種大量生産の時代で、日本では概ね1970年代以前の社会を指します。

 

最後に、橘玲著『働き方2.0vs4.0』から引用します。

知識社会が高度化するにつれてより高い専門性が求められるようになり、「ジェネラリスト」がさまざまな場面でビジネスの障害になっています。

日本の会社が海外企業とコンテンツ契約を結ぶ場合、法務部が対応しますが、その社員は文学部や教養学部を出た学士です。

それに対していまでは中国などアジアの国でも、交渉を担当するのは国際法を学んだ弁護士資格者なのです。

参考:日本の凋落ぶり(世界競争力、時価総額、名目GDP)