大企業からの転職は、第二新卒採用が可能な若手社員を除いて、なかなか思い通りにはいきません。
年齢を重ねるにつれ、年収を大きく下げても転職できるとは限らず、仮に転職できたとしても、予想以上に仕事が大変で後悔するケースが多く見受けられます。
この原因は、企業と転職希望者の間の認識のズレです。
この記事では、大企業からの転職が失敗する原因を、日本型の雇用形態から読み解きます。
(注)ポテンシャル採用で転職が可能な20代の転職希望者は対象外です。
②日本と欧米の転職者の認識の違い
③大企業からの転職失敗の原因となる企業と転職希望者の間の認識のズレとは?
<自己紹介>
筆者本人(1960年生)
出世競争は早めに降りて体づくりに励む
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2923年 退職
目次
新卒一括採用と中途採用~企業側の認識の違い
下の表が示すように、新卒一括採用と中途採用では企業の認識が全く違います。
【企業の認識の違い】
中途採用は、メンバーシップ型雇用における新しいメンバー(社員)の募集では決してありません。
中途採用の目的は、社内で発生した(自分たちでは解決できない)問題を解決しなければ自分たちが困るので、その問題が解決できる人材を確保することです。
そのため、求人企業は転職希望者が特定の問題を解決するための専門的なスキルを有しているかどうかを、本人のこれまでの経験や実績に基づいて判断します。
このように、求人企業は、新卒採用ではメンバーシップ型の定番であるポテンシャル採用でしたが、中途採用ではジョブ型的な即戦力採用へと180度方向転換するわけです。
日本と欧米の転職者の認識の違い
下の表は、転職希望者の認識を日本と欧米で比較したものです。
【転職希望者の認識の違い】
メンバーシップ型雇用(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)の日本では、働き方のスタイルは会社依存型であり、キャリアプラン※1 も会社任せです。
※1 参考:キャリアプランの本当の意味と今後は真剣に考える必要がある理由とは?
一方、ジョブ型雇用の欧米では、職能※2 依存型であり、キャリアプランは当然自ら立案します。
※2 職能とは、特定の職務や仕事を遂行するために必要な能力やスキル、知識のことを指します。例えば、ソフトウェア開発職能(プログラミングスキル)、会計職能(経理知識)、営業職能(プレゼンテーション能力)などです。日本人のサラリーマンに職業を聞くと「会社員+会社名」を答えますが、欧米人は職能を答えます。
このような働き方のスタイルやキャリアプランに対する考え方の違いが、転職の目的や自分の強みに対する認識の違いを生みます。
日本では、転職の目的は「新たな依存先探し」であり、自分の強みはこれまで依存していた大企業のネームバリューやかつての肩書です。
一方、欧米では、転職の目的はキャリアアップ(より高い地位や年収の獲得)であり、それにふさわしい即戦力が自分の強みになります。
参考:転職を日米で比較|キャリアプランでゴールを目指す働き方とは?
大企業からの転職失敗の原因となる企業と転職希望者の間の認識のズレとは?
ここまでこの記事を読んで頂ければ、すでに「企業と転職希望者の間の認識のズレ」を以下のように理解して頂けたと思います。
・メンバーシップ型の日本企業も、中途採用ではジョブ型的な発想になる
・すなわち、企業が求めているのは、「問題解決に必要な即戦力」であり、すでに過剰になっている「会社に依存するメンバー」ではない
・一方、大企業からの転職希望者の転職目的は、「新たな依存先探し」であるため、求人企業との間に認識のズレが生じる
・なお、会社都合の異動で使い回されてきた大企業の社員は、市場価値のある専門スキルがないため、「勤めていた大企業のネームバリューやかつての肩書」といった的外れの強みしか持ち合わせていない
まとめ
大企業への就職は、給与や福利厚生に恵まれる一方で、その「檻」から出ようとする際には厳しい現実が待ち受けているという、まさに諸刃の剣と言えるでしょう。
大企業のミドル・シニア社員は、なんとか会社にしがみついていた方が賢明です。
参考:大企業の50代が会社を辞めたくなった時の対処法を経験者が解説