実は、他人と自分の比較は、進化心理学的に見ると自然で避けられない行動であり、社会的動物である私たちが進化の過程で身につけた生存戦略の一部だと言われています。※1
②他人との比較で針が動くソシオメーター理論で考える筋トレの魅力とは?
<自己紹介>
筆者本人(1960年生)
出世競争は早めに降りて体づくりに励む
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2923年 退職
目次
ソシオ(社会)メーター理論とは?
ソシオメーター理論(Sociometer Theory)は、アメリカの心理学者 マーク・リアリー(Mark Leary)によって、1995年に提唱されました。
この理論を簡単に言うと、「私たちの脳には、他者からの評価によって針が動く”自尊心測定器(=ソシオメーター)”が埋め込まれている」というものです(以下、下の概念図参照)。
下方比較によって他者から高い評価を受けていると感じると、メーターの針が右に振れ、自尊心が高まります。
その結果、報酬系の神経伝達物質であるドーパミンやエンドルフィンが脳内で分泌され、快感を得られるのです。
一方で、上方比較により自分が他者から低く評価されていると感じると、メーターの針は左に振れ、自尊心は低下します。
その結果、肉体的な痛みを受けたときと同じような苦痛をもたらします。※2
※2 精神的苦痛が身体的苦痛と同じ脳部位を活性化する現象については、アメリカの研究者アイゼンバーガーとリーバーマンによる2004年の研究が特に注目されています。
ところで、現代のように「商品」が富の象徴となる資本主義社会では、豪邸に住んだり、高級車や高価なブランド品などを借金してでも手に入れて見せびらかすことが、下方比較(他者からの高い評価)によって快感を得るための常套手段です。
また、社縁社会では「肩書」が、ネット社会では「フォロワー数」が、他者からの評価を左右して、ソシオメーターの針を動かします。
他人との比較で針が動くソシオメーター理論で考える筋トレの魅力とは?
他人との比較で針が動くソシオメーター理論で考える筋トレの魅力とは、「筋トレによる外見の向上によって自尊心が高まり、快感が得られる点」です。
筋トレで身体を鍛えることで見た目に変化が現れると、周囲からの賞賛や関心を得る可能性が高まります。
これがソシオメーターを右(プラス方向)に動かし、自尊心の向上につながります。
また、筋トレによる運動能力の向上や健康の改善も、自尊心を高める要因となります。
一般的に、動物は肉体的に優れたオスが多くのメスを引き寄せ、自分の遺伝子をより多く残してきました。
筋トレによるボディメイクで他者からの評価を得る戦略は、人類誕生以前から続いている生殖戦略と本質的に同じだと言えます。
そう考えると、筋トレによるボディメイクの方が、資本主義社会での「商品」、社縁社会での「肩書」、ネット社会での「フォロワー数」よりも、ソシオメーターをプラス方向に振らせて自尊心を高めてくれるかもしれません。
ウエイトの重さを他者と競い合って、ソシオメーターの針をプラス方向に動かしてはいけません!
筋トレ初心者に多いのが、重すぎるウエイトでの筋トレです。
重すぎるウエイトでの筋トレは、フォームが崩れて反動を使いやすくなり、狙った部位に効かすことができなくなります。
ウエイトの重さで自尊心を高めても、それはその場限りです。
まとめ
✔ソシオ(社会)メーター理論とは?
・私たちの脳には、他者からの評価によって針が動く”自尊心測定器(=ソシオメーター)”が埋め込まれている
✔他人との比較で針が動くソシオメーター理論で考える筋トレの魅力とは?
・筋トレによる外見の向上によって自尊心が高まり、快感が得られる点
・筋トレによるボディメイクの方が、資本主義社会での「商品」、社縁社会での「肩書」、ネット社会での「フォロワー数」より、ソシオメーターの針をプラス方向に動かして自尊心を高めてくれる可能性がある
筆者は、出世競争を早めに降りて体づくりに励んだので、当然、満足できる肩書は得られず豪邸にも住めませんでしたが、常に下方比較できる肉体を手に入れました。
そのおかげで、高い自尊心と快感を享受できています。
特に、スポーツクラブで多くのご婦人に囲まれて、浮き輪肉をたっぷり付けたライバルたちとダンス・フィットネスを楽しむと、ソシオメーターの針が右(プラス方向)に振り切れます。
逆に、針が左(マイナス方向)に振り切れたのか、来なくなったライバルもいますが、これは筆者ではなくソシオメーターのせいです。
参考:【大企業の出世競争】 早めに降りた方がよい3つの理由【出世レースの実態】