
日本型経営※1 企業に入社した高学歴者であっても、全員が優秀(使える)というわけではなく、「使えない人」というレッテルを貼られて冷遇されたり、時には早々に転職してしまう人も一定数います。
※1 日本型経営とは、メンバーシップ型雇用(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)と企業別労働組合(欧米では産業別労働組合が主流)を特徴とする日本固有の経営システムで、1955年頃に始まった高度経済成長期に確立されました。
この記事では、高学歴者の似て非なる2つのタイプを示し、それぞれが日本型経営企業でどのように評価されているかを解説します。
②日本型経営企業の高学歴社員で優秀な人と使えない人は何が違うのか?
<自己紹介>

筆者本人(1960年生)
出世競争は早めに降りて体づくりに励む
筋トレ歴18年 ボクシング歴12年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2923年 退職
目次
高学歴者の似て非なる2つのタイプとは?
高学歴者の似て非なる2つのタイプとは、以下の2つのタイプです。
①秀才肌の試験テクニシャンタイプ
②天才肌のビジョナリータイプ
秀才肌とは、努力や勤勉さで知識やスキルを磨き上げ、物事を計画的に進める能力が際立ったタイプです。
一方、天才肌とは、直感的なひらめきや創造性が際立ち、努力というよりも生まれつきの才能で成果を上げるタイプのことです。
この人たちは常識にとらわれず、自由な発想をすることが多く、例えば、「これまでにない答え」を直感的に見つけ出す能力に秀でています。
例えるなら、秀才肌は既存の地図を使って最適なルートを見つける生成AIのようなもので、天才肌は道なき山を自ら切り開いて進む探検家のようなものです。
筆者が大学受験をした頃の話なので、現在はどうか分かりませんが、東大の数学の入試問題には、秀才型と天才型、それぞれに対応した解き方がありました。
秀才型の解き方とは、問題をいくつかの要素に分解し、それぞれの定番の解法を組み合わせて解決する方法で、結構な手間と時間がかかるやり方です。
一方で、天才型の解き方とは、例えば代数の問題を幾何的なアプローチで一気に答えを導き出す方法です。
それでは、それぞれのタイプをさらに解説します。
①秀才肌の試験テクニシャンタイプの正体
試験には2つの特徴があります。
1つ目は、答えのない問題や答えがいくつもあって特定できない問題が出題されないことです。
要するに、試験とは、記憶力を駆使しながら出題者の意図を注意深く読み取り、出題者が秘めている答えを当てるゲームなのです。
2つ目は、いくつかある問題の中からできるだけ簡単なものを見つけ出し、その問題から解き始めることで効率よく得点を上げるゲームでもあるという点です。
従って、一流大学を卒業したからといって、必ずしも経営能力や商才があることを証明するわけではなく、頭が良いことを証明しているわけですらありません。
単に、試験テクニックに長けていただけかもしれないからです。
日本型経営企業の高学歴社員のほとんどが、このタイプと言っていいでしょう。
②天才肌のビジョナリータイプ
ビジョナリータイプとは、未来を見据え、新しいアイデアや方向性を描き、それを実現する能力を持つ人のことです。
スティーブ・ジョブズのように、独自の視点で問題を捉え革新を生み出す人物がその代表例です。
彼は単なる技術開発にとどまらず、その技術がどのように人々の生活を変えるかを具体的に示したビジョナリーでした。※1
※1 ちなみに、スティーブ・ジョブズはオレゴン州のリード大学に入学しましたが、わずか6か月後に中退しています。
日本にもこのタイプは、当然、一定数存在しますが、日本型経営企業では「使えない人」のレッテルを貼られてしまいます。
その理由は、次に触れます。
日本型経営企業の高学歴社員で優秀な人と使えない人は何が違うのか?
日本型経営企業の高学歴社員で優秀な人と使えない人の違いは、メンバーシップ型雇用(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)が原因で社員が固定化するため共同体と化した日本型経営企業で、良い評判を得るテクニックがあるか無いかです(下表※2 参照)。
※2 この表は、筆者のブログでは毎度おなじみなので説明は省略します。

参考:堺屋太一著『組織の盛衰』
共同体と化した日本型経営企業で評判を得るテクニックとは、一言で言えば(特に上司に対する)忖度のテクニック※3 です。
※3 参考:大企業(JTC)の出世メカニズム|出世の代償と出世しないという選択肢
試験というゲームに長けた秀才肌の試験テクニシャンタイプは、共同体での良い評判を得るゲームにも長けているのが一般的です(もちろん例外もいますが)。
なぜなら、出題者の秘めた答えを当てるように、忖度も上司や幹部の意向を当てるゲームのようなものだからです。
彼らは、言ってみれば、空気を読んで忖度もできるチャットGPTのような存在※4 です。
※4 生成AIは、秀才肌の試験テクニシャンタイプと同様に、既存の知識やデータに基づく提案しかできません。
一方、天才肌のビジョナリータイプは、常識にとらわれない新しい発想で効率的に仕事を進めるタイプです。
彼らは、共同体が重要視する「結束力と仲間意識」や「公平性と安住性」に比較的無頓着で、共同体の規範に適応しようとしないため、しばしば「使えない人」というレッテルを貼られてしまいます。
しかし、本当は、再掲した下の表の(スタートアップのような)機能体で活躍できる有能な人材なのです。

参考:堺屋太一著『組織の盛衰』
終戦直後の1950年代前半には、「黒いダイヤ」とも呼ばれた石炭が戦後の復興や工業発展を支える主要なエネルギー源として重宝されていたため、石炭会社は収益率の高い大企業でした。
そのため、多くの高学歴者が入社しましたが、石油が新エネルギーとして台頭すると、次第に国内の石炭会社は衰退に向かいました。
石炭会社が基幹事業を石炭から石油に切り替えられなかった原因は、飛躍的な発想や社会の変化に対応できない秀才肌の試験テクニシャンタイプが、石炭会社の主流派として権力を握っていたからです。
参考:優秀でも大企業では評価されない管理職の特徴と理由【対抗策は?】
まとめ
✔高学歴者の似て非なる2つのタイプとは?
①秀才肌の試験テクニシャンタイプ
②天才肌のビジョナリータイプ
✔日本型経営企業の高学歴社員で優秀な人と使えない人は何が違うのか?
・共同体と化した日本型経営企業で、良い評判を得るテクニックがあるか無いか
参考:日本型経営では競争力あるイノベーションが生まれない5つの理由とは?