
日本型経営の大企業では能力ある人が評価されない理由として、一般的には以下のような理由が考えられます。
①年功序列制度により、個々の能力よりも勤続年数や年齢が重視される
②組織全体の調和を重視する文化が強いため、個人の成果は過小評価される
③リスク回避の風潮があるため、新しいアイデアや挑戦は周囲から敬遠される
ではなぜ、日本型経営の大企業では、こういったことになるのでしょうか?
この記事では、その根本的な原因を探り、それに対する具体的な対処法を提案します。
②日本型経営の大企業で能力があるのに評価されない人の2つの対処法
<自己紹介>

筆者本人(1960年生)
「静かな退職」を40代で選択して体づくりに励む
筋トレ歴18年 ボクシング歴12年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2923年 退職
目次
日本型経営の大企業では能力ある人が評価されない根本的な理由とは?
日本型経営の大企業で能力のある人が評価されない根本的な理由は、メンバーシップ型雇用(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)が原因で社員が固定化し、企業が共同体化することによって内部競争が排除されるからです(下表※1 参照)。
※1 この表は、筆者のブログでは毎度おなじみなので説明は省略します。

参考:堺屋太一著『組織の盛衰』
共同体のメンバーが居心地よく過ごすためには、メンバー同士が競争しない環境を整えることが重要です。
メンバー同士の競争は、居心地の悪い緊張感を引き起こすからです。
みんなが気楽な組織に安住し、収益と権限と地位を分かち合える状態ほど、共同体化した企業の(社長も含めた)メンバーにとって居心地のよいものはありません。
そのため、組織の共同体化が進むと、組織内でメンバーの個人的競争を排除する動きが必ず起こります。
その象徴的な現象とは、人事において抜擢を避け、評価に大きな差をつけないことです。
では、何によって地位や役職を決めているのか?
それは、本人の努力ではどうにもならない事実を基準にすれば、競争は起こりません。
それに最もふさわしいのは、年齢や入社年次です。
これだけは、誰が見ても明確なうえ、本人の努力で変えようがありません。
そのため、共同体化した企業では年功序列が人事の基本方針となり、年功序列を採用することで共同体化がさらに進むのです。
日本型経営の大企業では、一定の地位までは年功序列による人事を行っており、その先は、健康社会学者 河合薫氏が著書『他人をバカにしたがる男たち』で指摘するように学歴、性別、そして社長など権力者による入社時の評価(好みと勘)で収益と権限と地位を分け与えられます。
以下、同書から引用します。
昇進と業務実績との関連を”統計的な手法”で分析した論文のほとんどで、「業務実績のよさと」と「昇進」との間には統計的に有意な関連は認められません。
つまり、「業務実績が高い⇒昇進」というわけではないのです。
では何が関連しているのか?
「学歴」「採用時に自分が〇をつけたか否か」「入社時の評価」「性別」です。
採用時に自分が〇をつけた人を昇進させる・・・・、なんとも人間臭い理由で昇進は決まるのです。
学歴、性別、そして社長など権力者による入社時の評価(好みと勘)も、年齢や入社年次と同様に本人の努力で変えようがありません。
世界大戦敗戦の主要因は、旧日本陸海軍の共同体化
旧日本陸海軍の人事は、年功序列と任官時点での成績という、本人の努力では変えられない明確な基準で決められていました。
世界大戦敗戦の主要因は、共同体化した旧日本陸海軍が内部競争を排除するために採用した基準に基づいた人事が、不適材不適所を招いたことにあります。
日本型経営の大企業では能力ある人が評価されない根本的な理由が理解できれば、以下のような残念な事態も容易に納得できます。
①なぜいつまでたっても成果主義が本格導入できないのか?
②なぜ業績評価より行動評価※2 が重視されるか?
※2 行動評価は、成果が出なくても、取組み方や取組み姿勢が良ければ評価されるため、業績評価より個人の能力の差が曖昧になる評価制度です。日本のコンピテンシー評価は、結局のところ行動評価と同じです。
③なぜ成果よりプロセス重視※3 なのか?
※3 プロセス重視とは、正しいプロセスが良い成果を生み出すという考え方で、目指す成果を明確にしないまま正しいと思い込んだプロセスに固執するという特徴があります。成果重視の欧米型経営では、成果(目標)を達成するためにプロセスはどんどん柔軟に変更されていきます。
④なぜ業績より上司への忖度の方が昇進・昇格に有効なのか?
参考:大企業(JTC)の出世メカニズム|出世の代償と出世しないという選択肢
日本型経営の大企業で能力があるのに評価されない人の2つの対処法

積極的対処法~転職
②専門スキルを身に付けている人
再び日本型経営(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)の大企業に転職(正確には転社)していては、同じ轍を踏むだけです。
転職先は、外資系やスタートアップなどベンチャー系企業など日本型経営とは一線を画す機能体(再掲した下表参照)に近い企業にすべきです。

参考:堺屋太一著『組織の盛衰』
ポテンシャル採用が可能な年齢を過ぎた人で、転職によってキャリアアップ(肩書や給与の向上)が可能な人は、市場価値のある(他社でも通用する)専門スキルを身に付けた人に限られます。
転職先では、専門スキルを活かした問題解決が求められるからです。
なお、外資系やスタートアップ、ベンチャー系企業など日本型経営とは一線を画す機能体に近い企業での業務は、やりがいがあって専門スキルが磨かれる分、厳しくてきついのも事実です。
参考:【スタートアップ転職】大企業からのキャリアチェンジ4つのポイント
消極的対処法~静かな退職
「静かな退職」とは以下の3つの特徴を持つ働き方です。
①昇格(出世)を目指さない
②言われたこと以上の仕事はしないが、言われたことはしっかりやる(降格対策)
③実際に退職する気はない
筆者が「日本型経営の大企業では、出世は業績と関係ない」と悟ったのは、40代になってからでした。
筆者はその時点で、転職ではなく「静かな退職」を選択して、それ以降、自分の能力は会社のためではなく自分のため(趣味や体づくり)に使いました。
専門スキルを持たない平凡なジェネラリスト※4 であった40代の筆者にとって、キャリアアップ(肩書や給与の向上)が期待できる転職の道は、すでに閉ざされていたのです。
※4 日本型経営の大企業では、個人のキャリアプランの主導権は会社が握っており、社員は定年まで会社の都合で使い回(配置転換)されます。その結果、専門スキルが身に付かないのが一般的で、大半の人はジェネラリストという名の「何でも屋の素人」です。
この対処法は消極的なものですが、世間一般より恵まれた大企業の恩恵をしっかり享受しつつ、自分の能力を自分(趣味や体つくり)に投資できるという、ある意味贅沢な対処法です。
会社の仕事自体は全くやりがいはありませんが、趣味の世界でやりがいが見いだせれば、それはそれで楽しい人生です。
筆者は、このおかげで退職後も充実した生活を楽しめています。
参考:なぜ退職後に”モテ期”がやって来た?秘訣は「小さな池の大きな魚」?
まとめ
✔日本型経営の大企業では能力ある人が評価されない根本的な理由とは?
・メンバーシップ型雇用(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)が原因で社員が固定化し、企業が共同体化することによって内部競争が排除されるから
✔日本型経営の大企業で能力があるのに評価されない人の2つの対処法
①積極的対処法~転職
転職先は、外資系やスタートアップ、ベンチャー系企業など日本型経営とは一線を画す機能体に近い企業
②消極的対処法~静かな退職
世間一般より恵まれた大企業の恩恵をしっかり享受しつつ、自分の能力を自分(趣味や体つくり)に投資できるという、ある意味贅沢な対処法
参考:大企業に就職できたら出世しない方が得な理由を経験者が解説