ながら江雪の人生ノート

現役サラリーマンと定年シニアのお悩み解決

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定年後の孤独・不安・退屈も2年経てば慣れてしまう快楽順応とは?

定年後に直面する孤独や不安、退屈といった問題は、社会問題としてすでに認識されており、政府も内閣府に「孤独・孤立対策推進室」を設置してさまざまな施策を進めています。

また、定年後の孤独や不安、退屈を解消するための(実際には役立たない)指南本も、毎年手を変え品を変えて多数出版されています。

しかし、政府やマスコミが騒ぐほど定年後の孤独・不安・退屈は深刻なんでしょうか?

下のグラフは、令和6年のデータを基に算出した年代別の自殺率※1 です。

 

※1 自殺率は、特定の人口に対する年間の自殺者の割合を示す統計で、通常は10万人あたりの自殺者数として表されます。

出典:令和6年総務省統計局データ、令和6年厚生労働省及び警察庁生活安全局データを基に筆者が作成

定年生活を迎える60代以降を見ると、老化が進んで健康問題が深刻化する80代以降を除けば、自殺率は他の世代に比べてむしろ低い傾向にあります。

各世代にはそれぞれ特有の問題があり、60代以降の元サラリーマンにとっては、定年後の孤独や不安、退屈といった問題があるだけなのかもしれません。

この記事を読むことで、定年後の孤独や不安、退屈をそれほど深刻に考える必要がないことがわかります。

■この記事を読んで頂きたい人■
・定年を迎えて孤独・不安・退屈に苦しんでいる人

 

■この記事でわかること■
①定年後の孤独・不安・退屈も2年経てば慣れてしまう快楽順応とは?

②退職して2年経った筆者の体験談
 
63歳で退職してから2年が経った筆者が、定年後の孤独・不安・退屈も2年経てば慣れてしまう快楽順応を解説します。

<自己紹介>

筆者本人(1960年生)

出世競争は早めに降りて体づくりに励む
筋トレ歴18年 ボクシング歴12年

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2923年 退職

 

      

 目次

定年後の孤独・不安・退屈も2年経てば慣れてしまう快楽順応とは?

快楽順応(ヘドニック・トレッドミル※2)とは、心理学の概念で、生活状況の大きな変化に一時的な幸福感を得たり不幸感を抱いたりした後は、一定の幸福のレベル(セットポイント)に戻る傾向を指します。

 

※2 名前の由来は「トレッドミル(ランニングマシン)」で、進んでいるように見えても同じ場所に留まり続けるという比喩的な意味があります。

 

快楽順応(ヘドニック・トレッドミル)に関する代表的な実験として、1978年の心理学者 フィリップ・ブリックマンらによる研究が知られています。

この研究では、宝くじに当選した人々と重大な事故で下半身麻痺となった人々の幸福度を比較しました。

その結果、どちらのグループも当初は幸福度に大きな変化が見られましたが、一定期間(1〜2年程度)が過ぎるとどちらも元の幸福度の水準に戻る傾向が示されました。

以下にいくつか快楽順応に関連する興味深い実験例を挙げてみます。

心理学者フィリップ・シルヴァーの研究(1982年)

事故による脊髄損傷を受けた被験者を8週間追跡調査した研究です。

最初の1週間はネガティブな感情がポジティブな感情を上回りましたが、8週間後にはポジティブな感情が優勢となる傾向が観察されました。

これにより、人間は重大なネガティブなライフイベントでも元の幸福度に戻れる可能性が示唆されました。

経済学者ブルーノ・S・フレイとアロイス・スタッツァーの研究(2002年)

収入の増加と幸福感の限界効果に関する研究です。

彼らは、収入が増えるにつれて幸福感は確かに向上するものの、一定の収入を超えるとその影響は漸減する傾向があると結論付けました。

 幸福感の限界とされる年収は、研究や文化によって異なりますが、多くの研究では年収800万円前後が幸福度の頭打ちとなる目安とされています。

こぼれ話

夜中に目が覚めて不安を感じるのは、進化心理学的に見れば自然なこと

定年退職者で、夜中に目が覚めて何とも言えない不安を感じる人がいるかもしれませんが、安心してください。

これは、進化心理学的に見れば自然なことなのです。

進化心理学によると、不安には進化的な適応的役割があるとされています。

つまり、我々の先祖が危険を過剰に感知して不安を感じることで、生存確率を高めてきたというわけです。

特に夜の不安は、古代の人類が猛獣など捕食者から身を守るために役立った可能性があります。

呑気に熟睡していた人はとっくに捕食されて自然淘汰され、その遺伝子は今の時代には残っていないのです。

参考:進化心理学者 デヴィッド・M・ブスとマルティン・デイリーによって提唱された「煙探知機の原則」

 

 

退職して2年経った筆者の体験談

組織が嫌いで予定より2年早く退職した筆者ですが、初体験となる完全リタイアにはさすがに当初は戸惑いがありました。

現役時代は早めに出世競争から降りて、趣味の世界に生きていたので一般的なサラリーマンよりは多趣味でした。

しかし、現役時代の趣味の世界は週末だけでしたが、完全リタイアとなると毎日です。

そして、退屈で嫌な仕事があったからこそ、そのカウンターパートとして趣味の楽しさが際立っていたわけです。

リタイア当初は、趣味を仕事のように(義務的に)毎日こなしていましたが、次第に完全リタイアの生活に慣れ、本当にやりたい時にだけ楽しむことができるようになりました。

気が乗らない日は、家でだらだら過ごすのにも慣れてきました。

参考までに筆者の趣味を列記します。

・スポーツクラブ通い(筋トレ、ダンスフィットネス)

ロックバランシング(Instagramに投稿)

・スタンドアップパドルボート

・ボクシング(シャドーボクシング、サンドバッグ打ち)

・卓球(地元のサークル)

・読書(図書館通い)

・音楽鑑賞(主にラジオ)

・ブログ記事執筆

・まだ日があるうちからの晩酌

その時々で移り変わる気持ちに任せて、趣味の引き出しを開けて楽しんでいます。

ただし、晩酌だけは毎日です。

こぼれ話

会社で暇より、家で暇の方がよっぽどまし

勤めていたインフラ企業は基本的に暇なうえに、最後の6年間は子会社勤めで、その暇さときたら尋常じゃありませんでした。

家で暇を過ごせるなら、申し分ありません。

参考:【就職先】インフラ企業だけはやめなさい!リアルな実態を経験者が解説

 

 

まとめ

定年後の孤独・不安・退屈も2年経てば慣れてしまう快楽順応とは、心理学の概念で、生活状況の大きな変化に一時的な幸福感を得たり不幸感を抱いたりしても、1〜2年程度経てば、一定の幸福のレベル(セットポイント)に戻る傾向を指します。

 

ところで、定年後の孤独・不安・退屈は、年金だけで暮らせる人だけが経験できる、考えてみれば贅沢な悩みです。

本当に辛ければ、過去の肩書は捨てて、マックジョブ※3 で学生やフリーター、主婦、出稼ぎ外国人たちに囲まれて責任の無い気楽な短時間労働で小銭を稼ぎながら暇をつぶすのも悪くないかもしれません。

 

※3 「マックジョブ」は、専門スキルがなくても働ける低賃金労働を指すスラングです。特にファーストフード店や反復的な業務に関連する職種で使われることが多く、1986年のアメリカ社会学者アミタイ・エツィオーニの論文で初めて使われました。

 

参考:【定年後の暇つぶし】シリーズ  目次