「今度着任したエースの新課長、ジェネラリストで全く仕事知らないから、ムダな指示が多いね」
とか
「このコンプラ報告書のフォーマット細かいねぇ。」
「字が小さくて読めないよ。提出してもだれか読むの?」
「ファイルされて終わりでしょ。ゴミを量産してるだけ😏」
「ムダな仕事、どうしてこんなに多いんだ?」
こんな疑問にお答えします。
(注)大企業の子会社勤務を含みます
②ムダな仕事を生む原因となる5つのバイアス(先入観)
今年(2023年)40年間の大企業でのサラリーマン人生を終え退職した筆者が、日本の大企業がムダな仕事を生む5つのバイアス(先入観)について解説します。
<自己紹介>
筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴16年 ボクシング歴10年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
ムダな仕事大国、日本
①日本の労働~「量」の先進国比較
引用元:データブック国際労働比較2017
グラフの2015年をみますと1,700時間台で、アメリカとイタリアよりは短いことになっています。
しかし、これには労働時間が短いパートタイマーやアルバイトなどの非正規社員も含まれています。
そして、日本では非正規社員の比率が高く、3分の1以上を占めています(総務省「労働力調査」より)。
そこで非正規社員を除き、一般労働者だけをみると2017年で2,040時間に跳ね上がります(下図グラフ参照)。
働き方改革で減少傾向にありますが、大きくは変わりません。
また、数字には表れないサービス残業もあり、先進国の中では日本は突出して労働時間は長いといえます。
引用元:一般社団法人 日本経済団体連合会 2020年 労働時間等実態調査
②日本の労働~「質」の先進国比較
【主要先進7カ国の就業者1人当たり労働生産性】
【主要先進7カ国の時間当たり労働生産性】
引用元:労働生産性の国際比較2022 | 公益財団法人日本生産性本部
コロナ禍の2020~2021年は、日本の労働生産性を考える上では、ベースとなる就業者に休業者(雇用調整助成金などにより、失業を回避して休業扱いになっている人含む)が多く含まれていることも考慮する必要があります。
しかし、「就業者1人当たり労働生産性」、「時間当たり労働生産性」いずれも先進主要7カ国中ダントツ最下位です。
それにしても惨憺たるものです。
どうして働かないフランス人より生産性が低いのか?
答えは、簡単です。
フランス人を含め欧米人は会社より家庭を大切にします。
ムダな仕事はやらず、効率よく仕事を終えてとっとと家に帰るからです。
③特に生産性が低いホワイトカラー
太田肇著「ムダな仕事が多い職場」より以下引用します。
日本生産性本部では、日本とアメリカの労働生産性を産業別に比較分析している。
(中略)
一方、金融、運輸、卸・小売、飲食・宿泊などサービス産業ではアメリカの三、四割台と大きく水をあけられている。
(中略)
そして、そこではホワイトカラーが大きな比率を占めているうえ、彼らは管理職、専門職として生産性に大きな影響を及ぼしている。
実際、ホワイトカラーが人余りである一方、エッセンシャルワーカー*1の人手不足が深刻です。(2023.⒑21NHK放送 NHKスペシャル「超・人手不足時代~危機を乗り越えるには」)
④超ムダな仕事が多い日本
日本のGDPを「超長い労働時間×超低い生産性=超ムダな仕事」が押し下げているということになりそうです。
ムダな仕事を生む5つのバイアス
①選別主義のバイアス
【優秀な人材は入社時に選別して、ジェネラリストとして育てた方がよい】
なぜか我々人間は、優れた人材を評価し選抜することは当然だと思っています。
この考え方が、日本の経済成長時代(工業社会時代)に根付いた「選別主義」です。
この「選別主義」により、古き良き工業社会では機能した優等生型エリートを選別し、ゼネラリストとして会社幹部に育て上げます。
ポスト工業社会では、創造性とスピード感の無い管理型のジェネラリストでは、機能しません。
スペシャリストの部下にとっては、専門的な経験や知識のないジェネラリストの上司がだす業務指示はムダ以外の何物でもありません。
優等生型ジェネラリストの上司は、スペシャリストの部下にとってはムダな仕事の原因となります。
ポスト工業社会(GAFA時代)に通用する人材を、入社時に見極めることは不可能です。
②人事評価のバイアス
【人事評価は評価項目を細かくした方が正しい評価ができる】
数量化できる営業成績のようなものが無い大企業の複雑な業務実績は、そもそも評価は困難です。
評価をもっともらしく正当化するために、評価項目はたいへん細かなものになります。
細かくなればなるほどいい加減になり、結局は情意評価に影響されることになります。
例の「やる気」「がんばり」の評価です。
これは評価者の好き嫌いや恣意的な(いいかげんな)感覚に大きく左右されます。
これがムダな残業や年休の低い消化率につながるわけです。
③完璧主義のバイアス
【コンプライアンスは強化すればするほどよい】
過剰なコンプライアンスがムダなコストを増やすため問題になりつつあります。
なぜ、コンプライアンスは過剰になっていくのか?
理由は2つあります。
一つは幹部の「保身」であり、もう一つは管理部門によるコンプライアンスの「自己目的化」です。
「保身」と「自己目的化」のための、コスト意識なき「完璧主義」が、終わりなきムダを生んでいます。
④社員管理のバイアス
【上司がマイクロマネジメントしないと問題が起こる】
細かく管理しても管理の仕方が悪ければ、逆効効果で問題は起きます。
むしろ、まずい情報が早く上にあがらず、問題が大きくなることもあります。
結局は、手戻りが発生しムダな仕事が増えます。
「ホウレンソウ」の義務化で、なんでもかんでも無理に情報を吸い上げるのではなく、本当に必要な情報が部下の能動的な報告により上にあがってくる管理が必要です。
経験豊富なスペシャリストの上司が、基本的には仕事を全て部下に任せ、情報提供や支援に徹する関係が理想です。
ポスト工業社会(GAFA時代)では、上司と部下の関係はタテではなくヨコにすべきです。
⑤チームプレーのバイアス
【仕事はみんなで力を合わせて取り組んだ方がうまくいく】
「全員一丸」「一致団結」これは、経済成長時代(工業社会時代)の決まり文句です。
人口増による内需拡大で、よい製品をつくれば売れた時代は、これでよかったでしょう。
ポスト工業時代(GAFA時代)の現在では、モノに溢れ、ニーズも多様化し、しかも少子高齢化を伴う人口減でモノが売れなくなっています。
「個」の力ではなく「組織」で取り組んでいては、最大公約数的な平凡な発想になるため売れる商品ができないばかりか、度重なる会議と無責任体制でムダは増える一方です。
まとめ
ムダな仕事を生む5つのバイアス(先入観)をまとめました。
✔優秀な人材は入社時に選別してジェネラリストとして育てた方がよい
✔人事評価は評価項目を細かくした方が正しい評価ができる
✔コンプライアンスは強化すればするほどよい
✔上司がマイクロマネジメントしないと問題が起こる
✔仕事はみんなで力を合わせて取り組んだ方がうまくいく
*1:エッセンシャルワーカーとは、我々の日常生活を維持するために不可欠な職業のことを言います。 例えば、医療、介護福祉、保育、教育、自治体・公共交通機関などの公共サービス、ガス・水道・電気・通信など生活インフラ、物流、生活用品を扱うスーパーやドラッグストア、コンビニなどの小売業などが挙げられます。