
筆者自邸
「せっかく終の棲家つくるなら、冬寒い家はもうごめん。」
「年をとったらヒートショック*1には特に注意って言うけど、全館空調システムなんてちょっと大げさだよね。どうしたらいいんだろう?」
こんなお悩み解決します。
今年(2023)定年退職を契機にヒートショックが起こらない「終の棲家」を新築した筆者が、その秘訣をユーザー目線で解説します。
※この記事は、都内など大都市ではなく一般的な地方都市を前提としています。
※この記事は、マンションではなく一戸建ての終の棲家を検討しているシニアが対象です。
※この記事は、延床面積約30坪以下、夫婦2人もしくは一人住まいの住居を前提としています。
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職し、主に大規模遊休地の不動産開発に携わる 分譲マンション開発(単独開発の他、大手不動産会社と共同開発)、戸建て分譲地開発(大手ハウスメーカー建築条件付き分譲地)を多数経験
2023年 子会社の不動産会社でサラリーマン人生を終える
<資格>
一級建築士(管理建築士)
目次
結論
ヒートショックが起こらない家は、2階建て・吹抜け付き・ワンルーム型住居です。
特別なコストなしで全館空調システム並みの快適さです。
筆者はエアコン1台(6畳用)で冬の室温(どの場所も)18℃以上で過ごしています。
世界保健機関(WHO)は寒さによる健康被害が出ないよう、冬の最低室温は18度以上にすることを強く勧告しています。
血圧の上昇や冬場に増える「ヒートショック」が引き起こす血管系の病、さらには呼吸器系の病などを招きかねないと警告しています。
引用元:家が寒くて危険?「冬の室温&死亡増加率」全国マップ - クローズアップ現代 - NHK
2階建て・吹抜け付き・ワンルーム型住宅の解説
①吹抜けを利用して対流をつくる
吹き抜け空間を利用して大きな対流をつくります。
エアコンで冷暖房しますが暖かい空気は軽いので上に、冷たい空気は重いので下に動きますのでサーキュレーターで対流をつくります(下図参照)。
さらに天井高を建築基準法限度の2.1mまで下げればより効果的です(筆者自邸も天井高2.1mです)。天井高を下げても吹き抜け空間があるので開放的です。
天井高を低く抑えることで階高も下がり工事費が節約できますし、空調対象空間の容積が減りますので空調費も節約できます。
②各部屋に空気の流れをつくる
空気の流れを妨げないように間仕切壁や建具(ドア)は最低限にします。
筆者自邸の建具はトイレと脱衣室だけ(ユニットバスの付属扉は別)です。そのほか目隠しが必要な場所はロールスクリーンかカーテンをつけています。
夫婦間でもそれぞれ完全な個室が欲しい場合は建具の上部と下部に風の通り道をあけるなど工夫が必要です。


筆者自邸 2階左が私の寝室、右が妻の寝室
③省エネ性能の高い住宅にする
省エネ性能とは、断熱・気密・夏の日射遮蔽性能の3つです。
日本の住宅の省エネ性能は欧米に比べるとかなり劣っており、断熱性能だけをみても下図のとおりです。
温暖な地域の断熱性能の差が特にひどいことが分かります。
【欧米に劣る日本の断熱レベル】
出典:国土交通省資料より
2020年に省エネ基準が義務化されましたが、レベルは低く設定されておりこの基準を守るだけでは十分と言えません。
こういった流れの中、ハウスメーカーや工務店も省エネ性能の高い住宅の商品化に取り組んでいます。
とくにスーパー工務店は差別化戦略として熱心に取り組んでおり優れた技術と実績を誇っています。
なお、省エネ性能が高い家ならエアコンは1階か2階どちらか1台でも空調可能ですが、万が一のエアコン故障に備えて2台が望ましいでしょう。
夏は2階から重い冷気を吹き出し、冬は1階から軽い暖気を吹き出すと効果的です。
<参考>筆者自邸のデータ
空調以外のメリット
①吹抜けによる採光
吹抜け上部のハイライト(高窓)からの採光は効果的です。
②建具(扉、引き戸など)の工事費節約
枠とセットで1扉少なくても10万円の節約になります。
③夫婦間の気配が分かる
万が一の時は心強いです。
デメリット
①夫婦間のプライバシーを完全に守ることは不可能
寝室をともにする夫婦であれば問題ありませんが、寝室を別にする場合は視線は遮れますが音は無理です。
②個別にテレビや音楽を楽しむ時はイヤホンなどが必要
テレビ・オーディオ機器などは夫婦各自が楽しめるようブルートゥース対応としておくことをおすすめします。
まとめ
ヒートショックは老後の生活において特に注意が必要です。せっかく終の棲家を建てるならしっかり対策したいものです。
2階建て・吹抜け付き・ワンルーム型住居をつくれば全館空調システムと同等の機能を持つ住空間となりヒートショックを防げます。特別なコストはかかりません。
また、吹抜けの解放感や高窓からの採光で明るく豊かな建築空間となります。
*1:ヒートショックとは、急激な温度変化によって脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす現象です。