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【一級建築士の終の棲家】お金をかけないヒートショック対策を紹介します

筆者自邸(終の棲家)

せっかく終の棲家(老後の住まい)つくるなら、ヒートショック対策を施した家にしたいものです。

ヒートショックとは、急激な温度変化によって体がダメージを受ける現象です。

特に冬場の入浴時に起こりやすく、血圧が大きく変動し、失神や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす危険があります。

さらに、ヒートショックは冬場のトイレでも起こる可能性があります。

暖かい部屋から急に寒いトイレに移動すると、体を温めようと血管が収縮し、血圧が上昇するためです。

また、排泄時に力を入れ過ぎると血圧がさらに上がることがありますので、トイレに暖房設備がない場合、特に注意が必要です。

世界保健機関(WHO)も、寒さによる健康被害が出ないよう、冬の最低室温は18度以上にすることを強く勧告しています。

このように、高齢者にとってヒートショックへの注意は特に重要ですが、一般的な全館空調システム※には相当な費用が必要です。

※全館空調システムとは、家全体の空気を循環させて、家全体を均一に暖めたり冷やしたりする冷暖房システムです。エアコンが特定の部屋だけを冷暖するのとは異なり、全館空調システムは家の隅々まで一定の温度を保つことができます。

そこで、今回ご紹介したいのが、筆者の自邸(終の棲家)で実際に採用したヒートショック対策です。

この記事を読めば、お金をかけないヒートショック対策の具体的な方法が分かります。

■この記事を読んで頂きたい人■
・ヒートショックが起こらない終の棲家(一戸建て注文住宅)を建てたい方
※この記事は、延床面積約25坪以下で、夫婦2人もしくは一人住まいの住居を前提としています

 

■この記事でわかること■
・お金をかけないヒートショック対策

⇒ ヒートショックが起こらない、全館空調システム並みの注文住宅を、特別な費用をかけずに建てる方法 

 

一級建築士の筆者が、お金をかけないヒートショック対策について解説します。

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
主に大規模遊休地の不動産開発に携わる
分譲マンション開発(単独開発の他、大手不動産会社と共同開発)、戸建て分譲地開発(大手ハウスメーカー建築条件付き分譲地)を多数経験
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職

<資格>
一級建築士(管理建築士)

 

 

 目次

お金をかけないヒートショック対策

筆者自邸(終の棲家)

ヒートショックが起こらない終の棲家は、2階建て・吹抜け付き・ワンルーム型住居です。

特別なコストなしで全館空調システム並みの快適さです。

エアコン1台(6畳用)で、冬の室温(どの場所も)18℃以上を確保して快適に過ごしています。

以下、詳しく解説します。

①吹抜けを利用して対流をつくる

エアコンで冷暖房しますが、暖かい空気は軽いので上に、冷たい空気は重いので下に移動します。

この温度の偏りを解消するために、吹き抜け空間を活用し、サーキュレーターで大きな対流を作り出します。(下図参照)。

さらに天井高を建築基準法の最低限度2.1mまで下げればより効果的です。

天井高を下げても吹き抜け空間があるので開放的です。

天井高を低く抑えることで階高も下がり工事費が節約できますし、空調対象空間の容積が減りますので空調費も節約できます。

②各部屋に空気の流れをつくる

空気の流れを妨げないように間仕切壁や建具(扉)は最低限にします(下図参照)。

筆者自邸の建具はトイレと脱衣室・浴室だけです。

そのほか目隠しが必要な場所はロールスクリーンかカーテンをつけています。

夫婦間でもそれぞれ完全な個室が欲しい場合は、建具の上部と下部に風の通り道をあけるなど工夫が必要です。

筆者自邸 2階左が私の寝室、右が妻の寝室

 

 

③省エネ性能の高い住宅にする

省エネ性能とは、断熱・気密・夏の日射遮蔽性能の3つです。

日本の住宅の省エネ性能は欧米に比べるとかなり劣っており、断熱性能だけをみても下図のとおりです。

温暖な地域の断熱性能が特に低いことが分かります。

【欧米に劣る日本の断熱レベル】

出典:国土交通省資料より

2020年に省エネ基準が義務化されましたが、レベルは低く設定されており、この基準を守るだけでは十分と言えません。

こういった流れの中、ハウスメーカーや工務店も省エネ性能の高い住宅の商品化に取り組んでいます。

特に、スーパー工務店は差別化戦略として熱心に取り組んでおり、優れた技術と実績を誇っています。

なお、省エネ性能が高い家で延床面積25坪以下なら、エアコンは1階か2階どちらか1台でも空調可能ですが、万が一のエアコン故障に備えて2台が望ましいでしょう。

夏は2階から冷気(重いので下に移動)を吹き出し、冬は1階から暖気(軽いので上に移動)を吹き出すと効果的です。

<参考>筆者自邸のデータ
・冬の断熱性能:断熱等級6の断熱性能
・夏の日射遮蔽性能:断熱等級6の2.00倍の日射遮蔽性能
・一次エネルギー消費等級:最高等級6
・建築物省エネルギー性能表示制度(BELS):最高等級認定

ヒートショック対策以外のメリットとデメリット

筆者自邸(終の棲家)

メリット

①吹抜けによる採光

吹抜け上部のハイライト(高窓)からの採光は効果的です(上の画像参照)。

②建具(扉、引き戸など)の工事費節約

枠とセットで1扉少なくても10万円の節約になります。

③夫婦間の気配が分かる

万が一の時は心強いです。

デメリット

①夫婦間のプライバシーを完全に守ることは不可能

寝室をともにする夫婦であれば問題ありませんが、寝室を別にする場合は視線は遮れますが音は無理です。

②個別にテレビや音楽を楽しむ時はイヤホンなどが必要

テレビ・オーディオ機器などは夫婦各自が楽しめるようブルートゥース対応としておくことをおすすめします。

まとめ

ヒートショックは老後の生活において特に注意が必要です。

せっかく終の棲家を建てるならしっかり対策したいものです。

2階建て・吹抜け付き・ワンルーム型住居をつくれば全館空調システムと同等の機能を持つ住空間となりヒートショックを防げます。

特別なコストはかかりません。

また、吹抜けの解放感や高窓からの採光で明るく豊かな建築空間となります。

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