日本政府は「女性活躍」を推進するため、2003年には「2020年までに指導的地位における女性の割合を30%にする」という数値目標を設定しましたが、その目標を達成することは全くできませんでした。
以下は、主要先進7カ国の女性管理職比率です。
先進7カ国の中で、最も高いのは「アメリカ」で39.7%、これは世界で36位に相当します。
次に「イギリス」が36.5%で、世界では50位。
「カナダ」「フランス」「ドイツ」「イタリア」が続き、「日本」は14.7%で先進7カ国中ダントツ最下位。
世界では167位という衝撃的な順位になっています。
1985年に男女雇用機会均等法が施行され、男女平等は保障されたにもかかわらず、管理職の男女格差は大変大きなものになっています。
その結果、男女間の社会的な性差を示す日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中、125位(2023年)、2006年の指数公表開始以来の最低順位です。
就活女子の方は、この男女差別の原因となる不条理な実態を把握したうえで、就活に臨むことをお勧めします。
②男は誰も言わないズルい理由とは?
③「大企業(JTC※)の女性活躍推進」の実態
※JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的大企業を揶揄するネットスラング
④女性が出世できる企業とは?
女性の活躍を本気で望まない、なんちゃって「女性活躍推進」の伝統的な大企業(JTC)で長年の勤務経験がある筆者(2023年退職)が、女性は出世できない根本原因と男は誰も言わないズルい理由について解説します。
<自己紹介>
筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴16年 ボクシング歴10年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
女性が出世できない根本原因
根本原因は、日本独特の雇用形態、すなわちメンバーシップ型雇用です。
メンバーシップ型雇用とは、新卒一括採用で労働力を先ず確保し、会社側の勝手な都合で仕事を割り振ります。
そして、「終身雇用と年功序列による一生安泰」と引き換えに、社員に会社への忠誠と滅私奉公を約束させます。
社員は、「安定」を得るために自ら進んで、この奴隷契約を結んでしまうのです(自己家畜化)。
それでは、なぜこの雇用形態が、女性の出世を妨げるのでしょうか?
それはそもそも、この雇用形態は女性の寿退社※1を前提にしているからです。
この雇用形態が生まれた時代は、「男は会社、女は家庭を守る」という古い考え方が一般的でした。
要するに、男が会社で、無制限の残業によって滅私奉公し、僻地や海外への転勤も喜んで受け入れて、会社への忠誠心を示すためには、家庭を守る専業主婦の存在が不可欠だった訳です。
メンバーシップ型雇用においては、会社への忠誠と滅私奉公が昇進に不可欠ですので、女性社員は結婚して出産すると、これを機に退職を選ぶか、昇進の機会を失うマミートラック※2に追いやられることになってしまいます。
※1「寿退社」とは、女性が結婚を機にこれまで勤めていた会社から退職することを指します。日本では昔、結婚した女性が専業主婦になり家庭に専念するのが普通でした。そのため、結婚というお祝いの時に退職することを「寿退社」と称しています。
※2「マミートラック」という用語は、1988年にアメリカで生まれ、「マミー(母)」と「トラック(競技用トラック)」を組み合わせた造語です。マミートラックは、出産後に職場復帰する女性が、自らの意志に関わらず、単純な業務に限定され、昇進や昇給の機会を失ってしまう状況を指します。
実は、アメリカでも1980年代までは、終身雇用と年功序列が主流
フォード社に長年勤めた男性が主人公の映画『グラン・トリノ』や、40年間電話帳会社に勤めた男性が主人公の『マイ・インターン』など、高齢者を主人公にした映画では、「〇〇年間勤めた」という台詞がよく登場します。
長期にわたり真面目に勤めることは、日本と同じく美徳とされていたのです。
しかし、1970年代から日本のメーカーを含む海外企業との競争が激化し、アメリカ企業の業績は徐々に悪化しました。
IBM、コダック、AT&Tなどの大企業は大規模なリストラを行い、終身雇用と年功序列は急速に廃れ、成果主義が主流になりました。
男は誰も言わないズルい理由とは?
メンバーシップ型雇用の弊害は、企業の共同体化という形でも現れます。
企業の本来あるべき姿「機能体」と堕落した姿「共同体」の違いを表にしました(下図参照、引用:堺屋太一著「組織の盛衰」)。
日系企業は、メンバーシップ型雇用(終身雇用と年功序列)により、転職による社員の出入りはほとんど無く、人事部がリスクを恐れて似たような人材を採用するため、社員は同質化しています。
さらに、経営資源や経営環境に恵まれた大企業(JTC)では、外部との競争が少ないため意識が内に向かう結果、上図に示すような居心地追求組織「共同体」が完成します。
そして、この「共同体」の正メンバーは、前項の「根本原因」で解説した通り「男性社員」です。
前置きが長くなりましたが、「男は誰も言わないズルい理由」は以下です。
「共同体」はゼロサム社会であるため、女性社員が出世すれば、男性社員が割を食うから
ゼロサム社会とは、ある人が利益を得れば、別の人が同じだけの不利益を被る社会のことです。
共同体全体での所得分配はゼロ和ゲーム(すなわちゼロ・サム)であり、誰かが得をするためには、必ず誰かが損をする必要があるという考え方です。
従って、準メンバー(女性社員)が出世すると、正メンバー(男性社員)が割を食ってしまう訳です。
準メンバーが得するために、正メンバーが損をするなんてことは、共同体ではあり得ません。
そして、男性社員が出来るだけ割りを食わないように編み出されたのが、「総合職」と「一般職」という身分制度です。
女性社員は、極力「一般職」の身分に追いやることで、男性社員の既得権を保全します。
ちなみに、「総合職」「一般職」は、英訳がありません。
しょうがないのでSogoshoku、Jimushokuなどとするしかありません。
「総合職」「一般職」は、日本にしかない身分制度なのです。
昇進できる女性社員は、上司との飲み会を断らない?
筆者の知る限り、こういう傾向があります(今どき飲み会に誘う上司は老害認定級ですが)。
したがって、昇進する女性社員は、独身女性が比較的多いのも事実です。
ジェンダーギャップ指数が146カ国中、125位(2023年)の日本らしい残念な現象ですね。
「大企業(JTC)の女性活躍推進」の実態
経団連は2023年10月に、東証プライム市場に上場する全会員企業を対象に、役員のジェンダーバランスに関する初の調査を実施しました。
その結果、プライム市場に上場する会員企業751社の役員に占める女性の割合は14.1%であることが分かりました。
しかし、その中で88.1%は「社外役員」であり、会社の業務執行を主に担う「社内取締役」の女性は僅か7.1%に留まっていました。
これでは明らかに、なんちゃって「女性活躍推進」です。
なぜなら、共同体のゼロサムゲームとは関係が無い別枠の社外人財を女性取締役に据えて、男性社員は既得権を保全しているからです。
また、はっきり言って女性の社外取締役は、対外的な「女性活躍推進」アピールツール(広告塔)に過ぎません。
世間である程度名の知れた女性を役員に据えるのも、そう言った狙いからです。
横並び意識の強い大企業(JTC)は、こういう狙いで、一斉に知名度のある女性経営者や起業家、官僚経験者、弁護士あるいは芸能人などを社外役員として招へいしました。
招へいされた女性社外取締役も、真に受けて経営に口をはさむような野暮なことはしません。
煙たがられて、せっかくの「たなぼたポジション」を失わないよう、そのあたりは流石にあうんの呼吸です。
女性が出世できる企業とは?
女性が出世できる企業は、ズバリ、男性社員の共同体が形成されていない企業です。
すなわちメンバーシップ型雇用(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)を採用していない企業、または中途社員の比率が5割以上の企業なら男性社員の共同体は形成されていません。
具体的には、外資系企業、メガベンチャー企業、中小企業です。
まとめ
✔女性が出世できない根本原因です。
日本独特の雇用形態、すなわちメンバーシップ型雇用
⇒結婚と出産のため、女性社員は出世の条件である滅私奉公は無理
✔男は誰も言わないズルい理由です。
「共同体(=日系企業)」はゼロサム社会であるため、女性社員が出世すれば、男性社員が割を食うから
✔「大企業(JTC※)の女性活躍推進」の実態です。
東証プライム上場企業の女性役員のうち、88.1%は「社外役員」であり、会社の業務執行を主に担う「社内取締役」の女性は僅か7.1%
⇒共同体のゼロサムゲームとは関係が無い別枠の社外人財を女性取締役に据えて、男性社員は既得権を保全している
✔女性が出世できる企業です。
男性社員の共同体が形成されていない企業
⇒メンバーシップ型雇用(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)を採用していない企業、または中途社員の比率が5割以上の企業