ながら江雪の人生ノート

現役サラリーマンと定年シニアのお悩み解決

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日本企業の長時間労働が無くならない3つの理由と命を守る3つの心得

運悪く、こういう上司に当たると長時間労働になります(イメージ)

「深刻な人手不足のエッセンシャルワークや中小企業での長時間労働は当たり前かもしれません」

「でも、恵まれた大企業で、なぜ長時間労働が発生するんでしょうか?」

その不条理な理由を解説します

■この記事を読んで頂きたい人■
・長時間労働に苦しんでいる大企業の若手ホワイトカラー
 
 
■この記事でわかること■
①日本企業の長時間労働が無くならない3つの不条理な理由

②命を守るための3つの心得とは?

 

40年間の大企業でのサラリーマン人生で長時間労働を何度も経験した筆者が、日本企業の長時間労働が無くならない3つの理由と命を守る3つの心得について解説します。

<自己紹介>

筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴16年 ボクシング歴10年

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職

 

      

 目次

日本企業の長時間労働が無くならない3つの理由

①メンバーシップ型雇用による人と仕事のミスマッチ

日本特有の雇用システムであるメンバーシップ型雇用は、新卒一括採用で先ず社員を確保し、そのあと仕事を割り当てる方式です。

このように先ず労働力を集め、そのあと仕事を割り当てると、どのような不都合が生じるでしょうか?

それは、適性が無い仕事を割り当てられてしまう、人と仕事のミスマッチです。

そもそもメンバーシップ型雇用は1960年代の高度経済成長期に広がった雇用形態であり、少品種大量生産を効率的に行うためのものでした(参考記事:なぜ会社はつまらない?時代に合わないメンバーシップ型雇用を解説)。

現代のポスト工業社会では、社会のニーズが多様化・専門化しており、以前とは比較にならないほど仕事の内容が複雑になっています。

一方、欧米のジョブ型雇用では、まず仕事があり、それに適した人材を採用するため、人と仕事のミスマッチは生じません(ただし、その仕事が無くなれば、その人材は必要なくなります。従って、終身雇用が足かせになり簡単に首が切れない日本での導入は難しい)。

「適性を見て仕事を割り振れば、何も問題はないでしょう」と思うかもしれませんが、現実はそんなに上手くはいきません。

ルーティンワークならいいですが、経験の無い新規案件の適性はやってみなければ分かりません。

以上のいように時代遅れのメンバーシップ型雇用によって生じる人と仕事のミスマッチが原因で、長時間労働が頻発するわけです。

こぼれ話

大企業の人事は複雑怪奇

大企業の人事は、無邪気に適性で人事を決めるなんてことはなく、上層部などのドロドロした思惑がからんで複雑怪奇なんです。
これ以上の説明能力は残念ながら筆者にありません。悪しからず。

②タコ壺「共同体」の自前主義

大企業は、以下の理由により閉鎖的なタコ壺「共同体」となっています。

1)冒険を好まない人事部によって社風に合った人材のみが採用されるため、社員の質が均一化している

2)さらに、離職率が低く中途採用の必要もないため、社員間の同質性が高まる

3)また、高い市場占有率や下請け搾取システムなど、恵まれた経営環境により他社との競争も少なく社員の意識が内に向かう

タコ壺「共同体」とは以下の特徴を持った居心地追求組織です。

1)組織の目標:居心地の追求

2)組織評価の尺度:結束力と仲間意識

3)理想の状態:公平性と安住性

4)個人評価の尺度:主観的評価による人気と人格
引用:堺屋太一著「組織の盛衰」

前置きが長くなりましたが、ここからタコ壺「共同体」がなぜ、長時間労働を生むのかを説明します。

タコ壺「共同体」で長時間労働が発生するのは、経験やノウハウがない課題に直面した時です。

結束力と仲間意識で仕事をするタコ壺「共同体」には、外部の精通した人材を引き抜いて、プロジェクトチームのトップやメンバーに加えるという発想はありません。

「共同体」は、有能な人材がメンバーに加わると誰かが割を食うゼロサム社会だからです。

素人同然のリーダーに翻弄されて、素人同然のメンバーが長時間労働で削られていきます。

なんでも自前でやろうとする閉鎖的な「共同体」体質が悲劇を生むのです。

こぼれ話

電通の過労自殺は典型例

2015年入社わずか8ヶ月の女性社員がクリスマスの晩に投身自殺しました。
彼女は、当時、広告媒体が従来のテレビ・新聞・雑誌から急速にインターネットにシフトしたため、これまでとは全く違う新しいビジネスモデル構築に取り組んでいました。
外部の専門家を雇い、エキスパートチームで対応していれば、このような事態にはならなかったはずです。

素人同然の上司に振り回されて、素人同然の部下が長時間労働で削られ犠牲になった典型例です。

 

 

③素人エリート集団ジェネラリストの存在

大企業は入社時に幹部候補を選別(選別主義)し、ジェネラリストとしてのキャリアパスを用意します。

彼らは短いタームで主要ポストを巡るので何でも屋ではありますが、裏を返せば仕事を知らない素人エリート集団です。

重要プロジェクトがトップ鳴り物入りで始まったりすると、将来の箔付けのために幹部候補のジェネラリストがチームリーダーになりますが、素人なのでメンバーを振り回して疲弊させるだけです。

挙句の果てに、「絶対失敗は許されない!」なんて無理なことを言い出して、いつまでたっても帰れません。

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命を守る3つの心得

①自分ではなく会社が悪い

過労自殺の遺書にはよく「ご迷惑をおかけしてすみません」と書いてあるそうですが、冗談ではありません。

迷惑をかけてるのは会社(組織)の方なんです。

そもそも組織は「個」の犠牲で成り立っているのです。

知らず知らずのうちに滅私奉公にならないよう肝に銘じましょう。

いくら会社(組織)に尽くしても、会社は何もしてくれません。

森岡毅氏*1著書『苦しかったときの話をしようか 』で「会社と結婚するな、職能と結婚せよ」と熱く語っていますが、まさにその通りです。

会社のために仕事をしているのではなく、自分のために仕事をしているのです。

②自分の代わりはいくらでもいる

「この仕事は、自分しかできない」「自分がなんとかしなきゃ」は自分の勝手な思い込みです。

日本の会社は「個」ではなく、組織で仕事をしています。

自分の代わりはいくらでもいますので、安心して会社を休むなり、辞めるなりしましょう。

自然が起こす災害と違って、人間が起こしたことは人間の力で何とでもなります。

 

 

③会社内部の助けを信用しない

会社があなたを苦しめているのです。

くるしめている相手に救いを求めてはいけません。

上司が権力者の取り巻きの可能性だってあります。

そんなに場合は、社内のパワハラ相談室では役に立ちません。

日本の会社は、組織に忠誠を誓う忖度社会です。

組織を守るために個人を守るフリをしているだけですので、自分の身は自分で守る必要があります。

過労自殺など自殺大国日本には、行政の相談窓口がありますので、まずは相談しましょう。

その後、場合によっては弁護士に相談することも必要です。

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まとめ

日本企業の長時間労働が無くならない3つの理由です。

①メンバーシップ型雇用による人と仕事のミスマッチ

②タコ壺「共同体」の自前主義

③素人エリート集団ジェネラリストの存在

命を守るための3つの心得です。

①自分ではなく会社が悪い

②自分の代わりはいくらでもいる

③会社内部の助けを信用しない

 

 

*1:森岡 毅は、日本のマーケター、実業家。株式会社刀代表取締役兼CEO。経営難に陥っていたユニバーサル・スタジオ・ジャパンや丸亀製麺などを立て直した人物として知られ、「日本を代表するマーケター」とも称されている。