ながら江雪の人生ノート

サラリーマン人生の送り方や定年の迎え方をご紹介します

日本凋落の原因【日本にGAFA生まれない理由】選別主義の実像

「日本の凋落ぶりはひどいね。」

「世界の時価総額ランキングTOP50にはトヨタしか入ってないらしい。」

「日本にGAFA生まれないのは何故?」

 

こんな疑問にお答えします。

 

■この記事を読んで頂きたい人■
・伝統的な大企業にお勤めの若手社員の方

 

■この記事でわかること■
①世界の時価総額TOP20で見る日本の凋落ぶり

②凋落の要因「選別主義」の実像

③選別されたエリートたちの実像

③会社組織に代わる社会システム

 

今年(2023年)40年間のサラリーマン人生を終え定年退職した筆者が、日本の凋落の原因について解説します。

<自己紹介>

筆者本人(2023.11撮影)
筋トレ歴16年 増量期と減量期は設けていません
ボクシング歴10年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職

        

 目次

時価総額で見る日本の凋落ぶり

引用元:ブリッジレポート:フォースタートアップス 2022年3月期第1四半期決算 IRレポート

時価総額ランキング50以内はトヨタ1社だけです(2023年9月現在)。

30年ほど前は、日本企業が7割を占めており、日本企業が世界の経済をけん引していたと言っても過言ではありませんでした。

上表は、世界の時価総額ランキングTOP20の比較です。

1989年TOP20に日本企業は14社

14社の中には、今となっては懐かしい企業や、株式が上場廃止の恐れがある「監理銘柄」に指定された企業の名前もあります(2023年10月現在)。

2019年には0社

凋落の要因~選別主義の実像

①試験による選別の矛盾

ずいぶん前から創造的な能力がいっそう重要になるといわれていますが、その能力を試験で選別しようという矛盾が今も続いています。

創造力を数値化するのはどう考えても無理です。

入学試験や入社試験で、創造力判定に何が必要か分からないため何でもとりあえず選別の基準に取り入れてしまいます。

選別のハードルは次々と設けられ、ハードルの数が増えれば増えるほど創造力のある個性的な人間はふるい落とされていくことになります。

その結果、正解のある問題しか解けない、創造力の無い優等生ばかりが選別されてしまうという矛盾に陥っています。

②入社後の選別

太田肇著「選別主義を超えて」によると「将来の幹部候補生を早期に選抜し、別コースで育成するケースが増えてきた。」ということです。

ではどうやって選別されるのか?

河合薫著「他人をバカにしたがる男たち」から引用します。

昇進と業務実績との関連を”統計的な手法”で分析した論文のほとんどで、「業務実績のよさと」と「昇進」との間には統計的に有意な関連は認められません。

つまり、「業務実績が高い⇒昇進」というわけではないのです。

では何が関連しているのか?

「学歴」「採用時に自分が〇をつけたか否か」「入社時の評価」「性別」です。

採用時に自分が〇をつけた人を昇進させる・・・・、なんとも人間臭い理由で昇進は決まるのです。

(注)引用文の赤字変換は筆者による

引用文の「昇進」も「選別」の一形態です。

これが「選別」の本質だと思います。

「選別」とはまったく恣意的(いいかげん)なものであり、「運」しだいといって過言ではないのです。

これでは、GAFAのような企業は日本に誕生しません。

こぼれ話

「採用時に自分が〇をつけたか否か」これは、「一貫性の原理」のせいです。

根底に「一貫性を保つことは社会生活において他者から高い評価を受けるという考え」があります。

引用記事:一貫性の原理 - Wikipedia

 

 

選別されたエリートたちの実像

これからご説明するような人たちが企業のリーダーでは、時代から取り残され、凋落するのは無理もないでしょう。

①チャットGPT的な人間

チャットGPTの学習データは、インターネット上に公開されている大量のテキストデータを使用しています。

具体的には、ウェブページ、書籍、ニュース記事、雑誌、論文、ウィキペディアなど、さまざまな種類のテキストデータが含まれています。

したがって、前例に基く受け答えはできますが当然未来は予測できません。

決して冒険しない優等生というわけです。

こう言う人物は特に伝統的な大企業の幹部には大変評価が高いです。

②3つの得意技

選別された技幹部候補が予定通り役員になるポイントはただ一つ、減点主義をいかに切り抜けるかです。

ただし、単なる守り一辺倒ではいけません。 

a)ムーンウォークの名手

出世する人達は、果敢にチャレンジしている様に見せかけるのがたいへん上手です。

実際は全く前に進んでないか、むしろ後退していることもあります。

b)プロレス技が好き

出世する人達は、決してリスクを冒すような施策を実行しません。

形式的でリスクの無い、従って実質的な効果が期待できない施策のみ実行します。

やってもやらなくても実質経営に影響のない、やらないよりはやった方がましかもしれない施策です。

例えば、頻繁に実施する組織のマイナーチェンジ、人事評価制度のマイナーチェンジ、何かのルール作りなど実施しても効果が測れないものです。

c)成果の錬金術師

 出世する人達は、リスクの無い施策の取るに足りない成果を大きく見せることが得意です。

数字で表すことができない成果なのでどうにでもなります。

まさに「無」から「有」を生む成果の錬金術師です。

薄れつつある組織の必要性

日本の凋落を生む選別主義は「組織の論理」です。

そもそも組織は、市場での取引でかかる様々な費用を削減するために生まれたものです。

モノづくりや運搬などでは、大きな組織の方がスケールメリットを活かすことができました。

しかし、インターネットをはじめとするITの発達により、だれでもが適当な取引相手を低コストでかつ短時間で見つけることができるようになりました。

そして組織の力を借りなくても自由にコミュニケーションを行うことが可能となったのです。

組織の必要性や優位性は薄れつつあります。

個人の評価者は組織ではなく市場の時代に

これまで組織によって成り立っていたシステムが、ITによる社会の新しいシステムに取って代わられてきています。

ベンチャー企業やSOHO*1でも大企業と対等に仕事ができるようになってきました。

組織が個人を、価値一元的な評価システムで評価し、それによって地位や賃金が決まるのではなく、市場に対する個人の適応力の度合いによって個人の評価や収入が決まる時代になりつつあります。

卑近な例では、会社組織に嫌気がさしてブロガーやユーチューバーになった若い人の中には月収100万円以上稼いでいる人たちもいます。

これまで組織により不当に冷遇されてきた人たちも、実力にふさわしい報酬と地位を得られる可能性が高くなりつつあるのです。

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まとめ

日本のここ30年の凋落ぶりは時価総額でみるかぎり明らかです。

その一因として選別主義があげられます。

選別主義は組織の理論ですが、その組織もITによる社会の新しいシステムによりその必要性が崩壊しつつあります。

日本にもGAFAのような世界をリードする企業が生まれる時代が来るかもしれません。

※引用文献:太田肇著「選別主義を超えて」

※引用文献:河合薫著「他人をバカにしたがる男たち」

 

 

*1:「soho」とは”Small Office Home Office” の略語で、小さなオフィスや自宅を仕事場とする働き方、またはその仕事場、物件のこと。