「クライアントとの面談記録、もっと細かく書けだって😒」
「メールは全部、上司に CC 付けて出さないとまずいよ。チェックしてるらしいよ」
「えー!チェックしてるの? ヒマだな~😏」
「なんで、どうでもいいことに、そんなにうるさいんだ😠」
こんな疑問とお悩み解決します。
※JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング
②大企業が完璧主義から抜け出せない3つの理由
③マイクロマネジメントの4つの弊害
④「GAFA」時代の社員管理とは?
(注)GAFAは、「Google」「Apple」「Facebook」「Amazon」の頭文字を集めた呼称です。「ガーファ」と呼ばれています。
大企業(JTC)の完璧主義とマイクロマネジメントに長年苦しんだ筆者が、大企業が完璧を求める理由やマイクロマネジメントの弊害と社員管理のあるべき姿について解説します。
<自己紹介>
筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴16年 ボクシング歴10年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
完璧主義の起源と弊害
①完璧主義が生まれた背景
藻谷浩介著『デフレの正体ー経済は「人口の波」で動く』によれば、下のグラフに見られるように、日本の経済成長を支えてきたのは人口増加による内需です。
凡例:青が総人口、赤が名目GDP
引用記事:グラフで見る日本の人口推移
奇しくも、日本が人口減少に転じた(2011年)ごろGAFA時代がはじまりました。(下記引用文参照)
最初にGAFAという言葉を提唱したのは、フランスの経済学者であるフィリップ・エスカンダル氏です。
彼は2012年に出版した著書「L'Age de la multitude」(多数派の時代)で、GAFAという言葉を使って、インターネット時代における新しい経済モデルや社会変化を分析しました。
彼は、GAFAが多数の個人やコミュニティからデータや知識を集めて価値を創出することで、従来の産業や組織に対抗する力を持つようになったと指摘しました。
引用記事:GAFAやGAFAMの概念の歴史
②完璧主義で成功した工業社会時代
人口増加による内需が経済成長を支えていた時代は、良いモノをつくれば簡単に売れた時代(1980年代以前の工業社会時代)でした。
品質管理、工程管理など生産管理を完璧にすれば利益を生む時代です。
「GAFA」時代の必須能力である創造力とは無縁な管理能力の時代です。
生産現場のQCや「カイゼン」は、創造力よりも日本人の勤勉さや真面目さを活かした生産管理の一部です。
むしろこういった既成の枠組みの中での管理の完璧化が、ポスト工業時代(GAFA時代)へのリノベーションやパラダイムシフトを阻んだのです。
③完璧主義から抜け出せない日本の現状~日本の凋落ぶり
【世界時価総額ランキング TOP50 1989年と2023年の比較】
1989年TOP50に日本企業は32社。
30年ほど前は、日本企業が50位以内の6割以上を占めており、日本企業が世界の経済をけん引していたと言っても過言ではありませんでした。
32社の中には、今となっては懐かしい企業や、株式が上場廃止された企業の名前もあります(2024年2月現在)。
2023年には0社
時価総額ランキング50位以内は0社です(2024年2月現在)。
この他にも、ここ30年で日本以外の先進国や中国に代表される新興国に抜かれるなど、順位を落としてしまった国際ランキングは数知れません。
日本は今や先進国とは名ばかりの状態になりつつあります。
大企業が完璧主義から抜け出せない3つの理由
①工業社会時代の成功体験から抜け出せない
過去の成功が大きければ大きいほど、また成功期間が長ければ長いほど成功体験からは抜け出せません。
工業社会にあまりにも適応し過ぎたため、ポスト工業社会(GAFA時代)への適応が困難なわけです。
②完璧主義者が会社を牛耳っている
あいかわらず工業社会時代の完璧なモノづくりと同じように、「完璧」な人間、「受験秀才型」の人間が幹部候補として選別されています。
そして、ジェネラリストとして会社を牛耳っています。
「加点主義」、「失敗を恐れずチャレンジ」、「創造力ある人材の確保」は掛け声だけで、「減点主義&保身」が原理的イデオロギーとして根深く残っています。
③過剰なコンプライアンスと完璧主義の蜜月関係
工業社会時代の成功とは違う要因でも、完璧主義は勢力を伸ばしています。
昨今の過剰なコンプラライアンスによる管理部門の肥大化です。
もはやコンプライアンスの完璧主義は、管理部門拡大のために自己目的化しています。
また、「責任逃れ」のための形式的な完璧主義は、「保身」と相性がよいため、会社のいたるところに見られます。
マイクロマネジメント4つの弊害
①社員の自発的なモチベーション低下
いちいち上司の指示を仰ぐのであれば、自発的にやらない方がマシといことになります。
指示を出す上司ならまだよい方で、指示も出さず、文句ばか言う上司に当たったら(上司ガチャ)、目も当てられません。
②社員の自由な発想やアイデアを仕事に活かせない
社員の態度や行動が委縮し、自由な発想を阻みます。
また逆に、態度や行動が委縮しない個性的な社員は、組織の輪を乱すものとして排除の対象にされるため、その突出したの能力や個性を仕事に活かすことができません。
工業社会時代の有能な上司は、今や時代の変化に全く対応できない無能な上司です。
これからの時代は、部下の自由な発想やアイデアを活かさなければ、仕事うまくいきません。
③「自立型社員」が育たない
自律型社員とは、指示通り動くのではなく、自ら考えも積極的に取り入れ能動的に責任をもって業務遂行できる社員を指します。
ポスト工業社会(GAFA時代)には無くてなならない人材です。
会議や部署間の調整業務が異常に多い大企業の仕事の進め方は、失敗は少ないかもしれませんがムダが多くスピード感がまったくありません。
失敗した場合も責任の所在が不明確で次に活かせませんし、GAFA時代の人材も育ちません。
自立型社員は、当然、育つまでは仕事の失敗リスクもあります。
しかし、人手不足で社員を多く抱えることができない中小企業では、経験の浅い若手社員でも自立型社員として活用しています。
中小企業にできて大企業にできないというのは単なる甘えです。
④細かな改善が、かえって革新を阻む
上司の指示に従って細かな改善を行い、上司は達成感を感じるかもしれませんが、かえって大きなムダを温存させている可能性があります。
例えば、手続きの小さな改善より、そもそもその手続き自体必要かという議論が抜けています。
マイクロマネジメントによる細かな改善より、革新、変革が必要です。
「GAFA」時代の上司と部下の関係とは?
以下、太田肇著「ムダな仕事が多い職場」から引用します。
日本企業にみられるマネジメントの「マイクロ化」は、世界の潮流にも逆行したものとなっている。
アメリカやヨーロッパなど先進国では、ホワイトカラーの場合、勤務時間などは一応決まっていても自分の役割を果たし、成果をあげているかぎり働く時間や場所は厳しく管理しない企業が増えている。
大企業の既成の儲けの仕組みが安泰のうちは、工業社会時代の成功体験にもとづく完璧主義の社員管理でもよいでしょう。
ただし、それが崩れ始めたことは、すでに見てきたように日本の凋落ぶりが示しています。
それでは、ポスト工業時代(GAFA時代)の社員管理はどうあるべきかを以下に述べます。
上司と部下の関係は、従来型の部長ー(担当部長)ー課長ー(課長代理)ー係長-主任ー課員という、組織で仕事をするタテの関係ではなく、マネジャーと複数の「自立型社員」という関係が理想です。
そしてマネジャーは、仕事を知らない素人集団ジェネラリストではなく、仕事を熟知しているスペシャリストでなければなりません。
上司の業務は、部下のマイクロマネジメントから、部下への情報提供や支援にシフトすべきです。
まとめ
✔完璧主義の起源と弊害です。
【起源】
マイクロマネジメントの原因である「完璧主義」は、良いモノをつくれば簡単に売れた工業社会時代(1980年代以前)に生まれた
【弊害】
管理の完璧化が、ポスト工業時代(GAFA時代)へのリノベーションやパラダイムシフトを阻んだ結果、ポスト工業時代(GAFA時代)になると、「完璧主義」の弊害は日本企業の凋落(時価総額の激減など)という形で顕在化
✔大企業が完璧主義から抜け出せない3つの理由です。
①工業社会時代の成功体験から抜け出せない
②完璧主義者が会社を牛耳っている
③過剰なコンプライアンスと完璧主義の蜜月関係
✔マイクロマネジメント4つの弊害です。
①社員の自発的なモチベーション低下
②社員の自由な発想やアイデアを仕事に活かせない
③「自立型社員」が育たない
④細かな改善が、かえって革新を阻む
✔「GAFA」時代の上司と部下の関係です。
マネジャー(スペシャリスト)と複数の「自立型社員」という関係が理想