ながら江雪の人生ノート

現役サラリーマンと定年シニアのお悩み解決

MENU

【役職定年】「失われた30年」日本の凋落とその原因から読み解く

マスコミはあまり報じませんが、ここ30年の日本の凋落ぶりは惨憺たるものです。

日本以外の先進国や中国に代表される新興国に抜かれるなど、順位を落としてしまった国際ランキングは数知れません。

日本は今や先進国とは名ばかりの状態になりつつあります。

また、「失われた30年」の間に生まれた役職定年制度も、その実態がよく分からないためかマスコミはあまり報じませんが、日本社会の暗部であり根が深い問題です。

役職定年制とは、管理職が所定の年齢(55~60歳が多い)に達した時に、ラインから外れて役職を離れ、給料も減額される制度のことで、ポストの新陳代謝と人件費削減を図るための「潜在的余剰人員宣告」です。

その悲惨さは、【役職定年】大企業の実態とその限界に書いた通りです。

役職定年制度は、対症療法であり根本療法でありません。

この問題をこのまま放置すれば、「失われた30年」はさらに続くでしょう。

■この記事を読んで頂きたい人■
・不条理な役職定年制度に憤りを感じるサラリーマンの方
 
 
■この記事でわかること■
①「失われた30年」~日本の凋落ぶり

②「失われた30年」を招いた責任は誰に?

③役職定年制度が生まれた本当の理由

 

40年間の大企業でのサラリーマン人生を終えて今年(2023年)退職した筆者が、役職定年制度の根本原因を「失われた30年」日本の凋落と原因から読み解きます。

<自己紹介>

筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴16年 ボクシング歴10年

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職

 

      

 目次

失われた30年~日本の凋落ぶり

①世界競争力ランキング

IMD(国際経営開発研究所)が2023年6月20日に発表した「世界競争力年鑑」では、日本の総合順位は2022年の34位からさらに一つ下げて35位と過去最低となっています。

日本以外の東アジアの国・地域では、台湾6位、香港7位、中国21位、韓国28位です。

ちなみにIMDがランキングを公表し始めたのは1989年で、1992年まで4年間、日本は1位でした。

【世界競争力ランキング~日本順位の推移(2022年まで)】

②時価総額ランキング

引用元:ブリッジレポート:フォースタートアップス 2022年3月期第1四半期決算 IRレポート

時価総額ランキング50以内はトヨタ1社だけです(2023年9月現在)。

30年ほど前は、日本企業が7割を占めており、日本企業が世界の経済をけん引していたと言っても過言ではありませんでした。

上表は、世界の時価総額ランキングTOP20の比較です。

1989年TOP20に日本企業は14社

14社の中には、今となっては懐かしい企業や、株式が上場廃止の恐れがある「監理銘柄」に指定された企業の名前もあります(2023年10月現在)。

2019年には0社

引用:「日本凋落の原因【日本にGAFA生まれない理由】選別主義の実像」

 

 

失われた30年を招いた責任は誰に?

時代遅れのメンバーシップ型雇用を改革できない経営陣

1)とっくに賞味期限が切れているメンバーシップ型雇用

メンバーシップ型雇用は、終身雇用と年功序列の2つの制度で成り立っています。

そもそも、終身雇用と年功序列の2つの制度は、1980年代以前の古き良き工業社会時代に成功した雇用制度です。

工業社会時代は、藻谷浩介著『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』で指摘されているように、人口増に伴う内需の拡大により経済も発展しました。

下のグラフをご覧ください。

凡例:青が総人口赤が名目GDP

引用記事:グラフで見る日本の人口推移

2011年までは、人口増に伴い名目GDPも年ごとの増減はあるものの増加基調でした。

この人口が増えた時代、特に1980年代年までの「モノをつくれば内需で簡単に売れた時代=工業社会時代」は、メンバーシップ型雇用も企業経営と相性のよい時代だったと言えます。

皆で力を合わせ「一致団結」で、欧米に追い付け追い越せのキャッチアップ型経済の時代です。

ところが人口が減少に転じて(2011年)経済成長が完全に終わり、単純に内需でモノが売れる時代が去ると状況が変わりました。

メンバーシップ型雇用の賞味期限は完全に切れたのです。

引用:「大企業に【働かないおじさん】がいるのは当然な4つの理由」

2)企業の構造改革が不可能な「共同体」型経営

メンバーシップ型雇用は、本来「機能体」であるべき企業の姿を「共同体」に変えてしまいます。

「機能体」と「共同体」の違いを、堺屋太一著「組織の盛衰」を参考にして下の表にまとめました。

「機能体」とは、目標をいかに効率的に達成するかが組織の評価尺度です。

一方、公平性と安住性を追及する「共同体」は、結束力と仲間意識が組織の評価尺度になります。

終身雇用と年功序列は、社員を固定化・同質化・一体化することにより組織の閉鎖性を強め「共同体」をつくりあげます。

居心地追求組織「共同体」は、組織の規範遵守への同調圧力を強め、変革を「悪」とみなします。 

アメリカの大手IT企業GAFAのような事業を創造する人材は、迷惑者として即刻つぶされます。

「共同体」である日本企業は、経営環境が変化しても「茹でガエル」*1のまま世界から取り残されてしまったのが「失われた30年」です。

3)パラダイムシフトできない経営陣

日本企業の経営陣は、なぜいつまでもメンバーシップ型雇用に固執し、新しい雇用形態にパラダイムシフトできないのでしょうか?

理由は、日本の経営陣が、工業社会時代(1980年代以前)の古い考え方「選別主義」で相変わらず選ばれているからです。

「選別主義」では、日本凋落の原因【日本にGAFA生まれない理由】選別主義の実像に書いた通り、管理型で優等生型の無難なエリートしか選べません。

彼らは正解がある問題は解けますが、欧米の経営者のようにリスクを取って新しいことにチャレンジすることは全く出来ません。

 

 

破綻企業を延命させ企業変革を先送りさせてきた自民党政権

これまでの30年間、政府は株式市場や不動産市場の急落によって事実上経営不能になった金融機関や企業に対して、税金を惜しみなく投入して支援してきました。

他国のように、税金を民間企業に支出することに強硬に反対する姿勢が自己家畜化した日本国民に無いため、自民党は企業の破綻を税金を使って先延ばしし、リスクを先送りにすることで政権を守ってきた訳です。

このように、政府は常にリスクを回避し、経営環境の変化に対応した改革を意図的に遅らせてきました。

潰れる企業をそのまま潰してしまえば、その資本や労働力はまた別のところに向かって、新しい産業が生まれたはずです。

負の結果を恐れるあまり常にリスクを先送りしたり、大企業を優遇し続ける自民党政権に責任があることは間違いありません。

■関連記事■

役職定年制度が生まれた本当の理由

悲惨な役職定年制度を生んだ根本原因は、これまで説明してきた「失われた30年」を招いた原因と同じあり、その戦犯は以下の権力です。

①とっくに賞味期限が切れているメンバーシップ型雇用と「共同体」型経営を抜本的に変革できない「選別主義」で選ばれた前近代的な大企業の経営陣

②自己保身と既存の体制維持に終始する無能な経営陣が率いる大企業を優遇し、政権を維持し続ける自民党

「失われた30年」の間に格差社会はどんどん進みましたが、その不条理な格差は企業の中にも入り込んできました。

役職定年の対象は、役員・取締役を除く全管理職の場合が圧倒的多数です。

役職定年を免れた役員・取締役とその他大多数の管理職の格差は開く一方です。

こぼれ話

とある大企業での出来事

人事部が50代社員の戦力化策について社長に提案しが、社長は説明資料を机の上に投げつけ、こう怒鳴った。

「何がベテランの有効活用だ、おまえ達はいったい何を考えているんだ! こんなことより、こいつらを早く辞めさせて若いやつを採るのがおまえたちの仕事だろ!」

まとめ

役職定年制度は「失われた30年」が産んだ落とし子の一人であり、その他にも「低い従業員エンゲージメント」問題、「働かないおじさん」問題、「超低い日本の労働生産性」問題、「エッセンシャルワーカーの深刻な人手不足」問題、「定年後の孤独」問題などがあります。

このまま、事なかれ主義に徹し、将来に対して無責任な体制が続けば、失われるものは計り知れないことになるでしょう。

 

 

*1:茹でガエル とは、緩やかな環境変化下においては、それに気づかず致命的な状況に陥りやすいという警句。 生きた カエル を突然熱湯に入れれば飛び出して逃げるが、水に入れた状態で常温からゆっくり沸騰させると危険を察知できず、そのまま茹でられて死ぬという説話に基づく。