「会議ばっかりだね」
「それに出席者こんなにいるの?」
「開発営業部の佐藤課長(仮称)、座ってるだけだから、部下3人も来るんだって😒」
とか
「まったく形式的な仕事ばっかりでやってらんないね」
「ホワイトでゆるいし、給料もそこそこいいから我慢するか」
「でも先は長いなぁ😞」
こんな疑問とお悩み解決します。
※以下、「ブルシットジョブ」を「BSJ」と表記します。
②日本の労働~「量」と「質」の国際比較
③ホワイト企業4つの特徴
④ホワイト企業にムダな仕事(BSJ)が多い5つの理由
⑤やりがいの無いホワイト企業で定年までの過ごすには?
ホワイト企業に長年勤務した筆者(2023年退職)が、BSJ(クソどうでもいい仕事)が多い5つの理由とホワイト企業の実態について解説します。
<自己紹介>
筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴16年 ボクシング歴10年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
そもそもBSJとは?
BSJとは、アメリカの人類学者デヴィッド・グレーバーが、2018年の著書で、分析している「無意味な仕事(クソどうでもいい仕事)」のことです。
2018年の書籍は、そもそも2013年に彼が発表した「小論」がきっかけで、英語圏を中心に世界中から250を超すBSJ証言を集め分類・分析したものでした。
彼の分類によるとBSJは次の5つに分類されますが、内容についてはすでに多くの記事がありますので割愛します。
①取り巻き
②脅し屋
③尻ぬぐい
④書類穴埋め人
⑤タスクマスター
5つの分類の内容より、次の指摘が重要です。
酒井隆史著「ブルシット・ジョブの謎」から引用します。
ところがこうした仕事(BSJ)をやっている人は概して社会的評価が高く、それなりの報酬をもらっています。
それに対して、社会的意味のある仕事をやっている人(中略)たちは、低い報酬や劣悪な労働条件に苦しんでいます。
しかもますます、かれらの労働条件は悪化しているようなのです。
(注)太字変換と()の挿入は筆者による
日本の労働~「量」と「質」の国際比較
①日本の労働~「量」の比較
引用元:データブック国際労働比較2017
グラフの2015年をみますと1,700時間台で、アメリカとイタリアよりは短いことになっています。
しかし、これには労働時間が短いパートタイマーやアルバイトなどの非正規社員も含まれています。
そして、日本では非正規社員の比率が高く、3分の1以上を占めています(総務省「労働力調査」より)。
そこで非正規社員を除き、一般労働者だけをみると2017年で2,040時間に跳ね上がります(下図グラフ参照)。
働き方改革で減少傾向にありますが、大きくは変わりません。
また、数字には表れないサービス残業もあり、先進国の中では日本は突出して労働時間は長いといえます。
引用元:一般社団法人 日本経済団体連合会 2020年 労働時間等実態調査
②日本の労働~「質」の比較
【主要先進7カ国の就業者1人当たり労働生産性】
【主要先進7カ国の時間当たり労働生産性】
引用元:労働生産性の国際比較2022 | 公益財団法人日本生産性本部
コロナ禍の2020~2021年は、日本の労働生産性を考える上では、ベースとなる就業者に休業者(雇用調整助成金などにより、失業を回避して休業扱いになっている人含む)が多く含まれていることも考慮する必要があります。
しかし、「就業者1人当たり労働生産性」、「時間当たり労働生産性」いずれも先進主要7カ国中ダントツ最下位です。
それにしても惨憺たるものです。
③生産性が低いホワイトカラー
太田肇著「ムダな仕事が多い職場」より以下引用します。
日本生産性本部では、日本とアメリカの労働生産性を産業別に比較分析している。
(中略)
一方、金融、運輸、卸・小売、飲食・宿泊などサービス産業ではアメリカの三、四割台と大きく水をあけられている。
(中略)
そして、そこではホワイトカラーが大きな比率を占めているうえ、彼らは管理職、専門職として生産性に大きな影響を及ぼしている。
実際、ホワイトカラーが人余りである一方、エッセンシャルワーカー*1の人手不足が深刻です。(2023.⒑21NHK放送 NHKスペシャル「超・人手不足時代~危機を乗り越えるには」)
④超ブルシットな日本の仕事
そもそもデヴィッド・グレーバーの2018年の著書は、英語圏を中心に世界中から250を超すBSJ証言を集め分類・分析したものでした。
その英語圏より、かなり生産性が低いと言うことは、日本の仕事には超ブルシットなムダが潜んでいることになります。
日本のGDPを「超長い労働時間×超低い生産性=超ムダな仕事」が押し下げているということになります。
ホワイト企業4つの特徴
ホワイト企業の特徴は以下です。
①限定された市場を独占していたり、競争力が突出した優良な経営資源により、凡庸な社長でも経営が安定している
②人事は「選別主義」がとられており、ジェネラリストが主要ポストを占める
③ラインよりスタッフ部門が権限をもっており完璧主義が徹底されている
④申し分のない福利厚生制度を敷いていおり、働き方改革の必要がない
こういった企業は、競争の必要がないため外より内へエネルギーが向かいます。
その結果、企業独自の規範が生まれ、共同体(ムラ社会)化しています。
その規範が、世間の常識からかけ離れていることは言うまでもありません。
「共同体」と「機能体」の違いを、堺屋太一著「組織の盛衰」を参考にして下の表にまとめました。
企業は、目的を達成するための「機能体」として存在すべきですが、終身雇用制や年功序列に基づくメンバーシップ型雇用*2の影響で社員が同質化し、居心地を求める「共同体」になってしまっています。
その結果、多くのムダが生じています。
以下、ムダの原因を具体的に掘り下げます。
ホワイト企業にムダな仕事(BSJ)が多い5つの理由
①「選別主義」で選ばれた素人集団エリート・ジェネラリスト
「選別主義」とは、採用時に会社の組織権力が、将来の幹部候補を恣意的に決定して「エリート・ジェネラリスト」に育て上げる一方で、他の者の出世の道を閉ざしてしまう思想です。
選考基準は、学歴、性別、人事部長や役員、社長のカンと好みです。
いってみれば会社組織という共同体(ムラ社会)で、何の疑問も持たずに行われる差別(身分制度)です。
彼らは、短いタームで主要ポストを転々とするだけなので、実務を知らず専門スキルも持たない素人集団です。
こういった素人上司が上につくと、ムダな仕事(BSJ)の嵐です。
レクチャー(業務説明)に始まり、意思決定のための資料作りが延々と続きます。
責任をとりたくないので、はなから決めるつもりはありません。
「スペシャリスト(その道のプロ)」が上司なら、意思決定に、たいした資料は要りません。
時間の無いときは、口頭でも決めることができます。
優秀で(笑)プライドだけ高い「素人集団 エリート・ジェネラリスト」ではとても無理です。
そもそもホワイト企業の社長は「素人集団 エリート・ジェネラリスト」の一員
日系の大企業でもメガベンチャー企業の社長(CEO)は、創業者かもしくは会社立ち上げに深く関与した経営のスペシャリストです。
また、外資系企業の社長(CEO)も創業者や外部から招へいされた経営のスペシャリストです。
日系ホワイト企業(伝統的な大企業=JTC)の社長だけが、すごろく上がりのサラリーマン社長、すなわち素人経営者です。
「上がり」に到達したサラリーマン社長は、任期中大過なくすごすために、リスクを取らず現状維持に終始します。
その結果、仕事はBSJしかないというのも、当然かもしれません。
②集団的意思決定~「会議」
なぜ会議が多いか?
分かり切っていいます。
トップをはじめ関係者が責任を取りたくないからです。
この「集団無責任体制」が各種不祥事につながることはよくあります。
また、日本の会議はセレモニーがほとんどです。
特にコスト(人件費)がかかる会議(幹部の会議)は、セレモニーそのものです。
さらに言えば、出席者が異常に多いのも特徴です。
無能な上司を補佐するための部下。
またそれを補佐するための部下の部下といった具合に、出席者がどんどん増えます。
役員会議に備えて、馬に食わせるほどのQ&A(問答集)をよく作らされました。
でも、実際、使ったためしはありません。
③権限を持った職能スタッフの完璧主義
本来、職能スタッフの職掌は、カネを稼ぐラインをサポートすることです。
ところが、昨今の過剰な企業コンプライアンスの流れの中、これを利用した管理部門が、かつてない権限を手に入れてしましました。
逆らえない企業コンプラアンスを名目にして、ラインに各種報告書を求めます。
自分たちの存在価値を高めるため、報告書やチェックリストはどんどん細かくなっていきます。
この完璧主義がかえって、不祥事やその隠ぺいを生みます。
カネを稼がない管理部門のレゾンデートル(存在理由)を、カネを稼ぐラインが支えているのです。
④「仕事は個人より組織で」という認知バイアス
「仕事はみんなで力をあわせてやった方がうまくいく」
これは認知バイアス(誤った固定概念)です。
みんな(組織)で仕事を進めると、責任が不明確になり、時間もかかります。
関係者が増えるので、会議も増え、会議の出席者も増えます。
まったく物事が決まっていきません。
そして最終的に決まった計画案は、権力者への忖度まみれの独創性の無い企画だったり、みんなが納得する最大公約数的な陳腐なものです。
以前NHKで放送された「プロジェクトX」の商品開発プロジェクトでは、少人数で成功させた事例がほとんどです。
⑤分かりずらい人事評価制度
ホワイト企業(伝統的な大企業)で働く社員の業績は、そもそも定量化できません。
それをごまかすために(人事部の陰謀)、どんどん評価項目が細分化されていきます。
細分化すれば評価の精度が上がるという考え方も、認知バイアス(誤った固定概念)です。
結局は、評価が細かくなるほど不正確になり、評価者の好みや感情に大きく左右されることになります。
そうなると社員は、評価者が一番わかりやすい評価項目「がんばり」「やる気」そして忖度という情意面でアピールを始めます。
ムダな残業という分かりやすい「量」で勝負するのです。
日本の有給休暇の消化率の低さの原因もここにあります。
定年まで過ごすには?
ホワイト企業に勤めていれば、給料もよく老後は安泰です。
我慢するのが賢明です。
我慢するコツは、会社(共同体)の規範だけに縛られて人生を生きるのではなく、自分の規範を持ちましょう。
会社(ムラ社会)と世間の境壁の上を歩いて行くイメージです。
会社にどっぷりつかって、仕事を生きがいにしてはいけません。
そして、会社に注ぐエネルギーを必要最小限に抑えて、余ったエネルギーを自分への投資(運動習慣、趣味、自己啓発など)に注ぎましょう。
自分への投資の内容は、自分の生きる規範で決まります。
10年先に定年を迎える55歳からは、特にこの考え方が必要です。
また、みじめな役職定年を迎える人は、可能であれば65歳前の退職をおすすめします。
まとめ
日本の労働の「量」と「質」を先進主要7カ国の労働と比較しました。
①労働時間 ⇒ 突出して長い
②就業者1人当たり労働生産性、時間当たり労働生産性
⇒いずれもダントツ最下位
③特にホワイトカラーの生産性が低い
ホワイト企業(伝統的な大企業)にムダな仕事が多い5つの理由です。
①選別主義で選ばれた素人集団エリート・ジェネラリスト
②集団的意思決定~「会議」
③権限を持った職能スタッフの完璧主義
④「仕事は個人より組織で」という認知バイアス
⑤分かりずらい人事評価制度
確かにホワイト企業(伝統的大企業)の社員は収入面では恵まれています。
ただし、共同体(ムラ社会)の規範や体制を維持するために、ムダな仕事(ブルシット・ジョブ)に明け暮れるという無意味なサラリーマン人生は悲惨です。
その矛盾を埋めるカギは、会社の規範だけで生きるのではなく、自分の規範でも生きるという二重の人生を生きることです。
2つの規範の境壁の上を歩いて行くのが秘訣です。
途中で自分の規範の世界に落ちそうになったら、落ちてしまうのもアリです。