ながら江雪の人生ノート

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JTCの個人を犠牲にする日本式経営の限界【脱・日本式経営とは?】

日本では、集団のために個人が犠牲になることは歴史的にもよく見られました。

例えば、太平洋戦争における特攻隊は自己犠牲の典型例です。

現代でも、企業や社会のために個人が自己犠牲を払う文化が残っています。

しかし、より深刻な問題は、自己犠牲の精神が、まるで自然現象のように日本社会の中に深く浸透しているために、個人が自己犠牲に気づかないことです。

この記事を読んで、JTC※の個人を犠牲にする日本式経営について認識を深め、あなたの価値観を再確認するきっかけにしてください。
※JTCとはJapanese Traditional Companyの略で、古い体質の日本の伝統的な大企業を揶揄するネットスラング

■この記事を読んで頂きたい人■
①JTCにお勤めの若手サラリーマンの方

②JTCに就活予定の学生の方
 
 
■この記事でわかること■
①JTCの個人を犠牲にする日本式経営とは?

日本式経営の限界とは?

③脱・日本式経営とは?
 

個人を犠牲にする日本式経営のJTCで長年の勤務経験がある筆者が、JTCの個人を犠牲にする日本式経営の限界【脱・日本式経営とは?】について解説します。

<自己紹介>

筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職

 

      

 目次

JTCの個人を犠牲にする日本式経営とは?

日本式経営は、戦後の高度経済成長期に広がりました。

戦後間もない当時の最も重要な経営課題は、貴重な労働力の長期安定的な確保でした。

そこで考え出されたのが、新卒一括採用・終身雇用・年功序列を柱とする日本独自の雇用システムであるメンバーシップ型雇用です。

これは、新卒を一括で採用し、終身雇用と年功序列による社員の保護を餌に忠誠を誓わせ、社員を定年まで囲い込んでしまう社員奴隷化システムです。

囲い込んだ後は「釣った魚に餌はいらない」とばかりに、会社のやりたい放題で、異動先や割り振られる仕事の内容も会社都合で決められてしまいます(一応、個人の希望は申告できますが、これはカタチだけです)。

このように囲い込まれ、固定化・同質化した社員によって、閉鎖的な「共同体(ムラ社会)」が形成されました。

「共同体(ムラ社会)」では、チームの和を乱さないことやチームに迷惑をかけないことが最優先となり、個人は犠牲になります。

JTCの個人を犠牲にする日本式経営とは、メンバーシップ型雇用(新卒一括採用・終身雇用・年功序列)による社員奴隷化システムと、それによって形成される「共同体(ムラ社会)」の縛りによって、個人の犠牲を強いる経営です。

こぼれ話

「日本人は愛社精神が強い」なんて大嘘です

こんな嘘っぱちは、会社都合の都市伝説です。

日本の従業員エンゲージメントは、世界的に見てかなり低い状態が続いています。

要するに、日本の会社員は、みんな自分の会社を嫌っているんです。

【関連記事:日本の従業員エンゲージメント低い理由と新しい働き方

 

 

日本式経営の限界とは?

戦後の復興期は、欧米を中心とした先進国が既に開発した技術や知識を利用して追いつくことを目指すキャッチアップ型経済の時代でした。

そして当時の経営環境は、人口増加に伴う内需拡大により、モノをつくれば簡単に売れる少品種大量生産の時代(工業社会の時代)です。

このような経営環境を背景に、個人を犠牲にする日本式経営が広がりました。

決まった仕事をみんなで黙々とこなすには、個人を犠牲にする「共同体(ムラ社会)」が適していたからです。

しかし、30年ほど前から、IT化やグローバル化などによって、経営環境が大きく変わりました。

需要が飽和状態であることに加え、ニーズの多様化・専門化が進み、その変化のスピードも加速しています。

このような経営環境で企業が生き残るためには、異なる能力や知識を持った人が、それを活かしながら、協力し合って目標を達成する組織が必要です。

もはや、固定化・同質化した人材が集まり、自己犠牲の精神で働く「共同体(ムラ社会)」型の組織は、消え去る運命です。

この兆候は、日本の凋落というカタチで既にハッキリ表れています。

【関連記事:日本の凋落ぶり(世界競争力、時価総額、名目GDP)

さらに問題となるのは、その自己犠牲の精神が、日本の凡庸な経営者(すごろく上がりのサラリーマン社長)の怠慢経営を支えてしまっている点です。

なぜなら、社員の自己犠牲とは、経営者による一種の搾取だからです。

この搾取されている社員の自己犠牲は、「現場力」などという言葉で美化され、その本質は隠ぺいされているのです。

【関連記事:大企業(JTC)の現場力の正体と現場力が失われた本当の理由とは?

こぼれ話

実は、アメリカでも1980年代までは、終身雇用と年功序列が主流

フォード社に長年勤めた男性が主人公の映画『グラン・トリノ』や、40年間電話帳会社に勤めた男性が主人公の『マイ・インターン』など、高齢者を主人公にした映画では、「〇〇年間勤めた」という台詞がよく登場します。

長期にわたり真面目に勤めることは、日本と同じく美徳とされていたのです。

しかし、1970年代から日本のメーカーを含む海外企業との競争が激化し、アメリカ企業の業績は徐々に悪化しました。

IBM、コダック、AT&Tなどの大企業は大規模なリストラを行い、終身雇用と年功序列は急速に廃れ、成果主義が主流になりました。

時代に合わない日本式経営を続けてきた日本と経営環境の変化にいち早く対応したアメリカのその後の経済力の違いは歴然としています(下のグラフ参照)。

日本経済は、下のグラフが示す通り停滞しており、名目GDPはまったく増えていません(増えるどころか、2012年に始まったアベノミクス以降は2023年まで名目GDPのマイナス基調が続いています)。

引用:GDP4位転落 アベノミクスの通信簿だ | Nの広場 (nhiroba.com)

関連書籍:太田肇著 『個人を幸福にしない日本の組織』

 

 

脱・日本式経営とは?

脱・日本式経営を、日本式経営との比較表で、順を追って以下解説します。

先ず、それぞれの経営方式が対応可能な経営環境の比較表です。

内容は、これまで解説してきた通りです。

次に、組織の形態と仕事の主体、必要な個人の能力やタイプの比較です。

脱・日本式経営の組織形態は、専門スキルと即戦力を兼ね備えたスペシャリストが協力し合う「機能体」です。

「機能体」とは、特定の目的を達成するために作られた組織のことで、社会に価値を提供し利益を得る企業は、本来「機能体」です。

しかし、日本の企業JTCは既に解説した通り、組織内の居心地の良さや好みを満たすために作られた組織、「共同体」に成り下がっています。

また、日本式経営では、会社都合の異動で仕事がコロコロ変わるため、社員は専門スキルを持たない「何でも屋の素人集団」です。

日本では、この「何でも屋の素人集団」を「ジェネラリスト」と呼んで美化し、本質は隠ぺいされています(「ジェネラリスト」とは日本でしか通用しない和製英語です)。

また、日本式経営では、選別主義によってあらかじめ厳選されたエリートが、用意された特別なキャリアパスを経て経営者になりますが、彼らは経営手腕が評価されて経営者になったわけではありません。

彼らは、起業家出身者や外資系企業に外部から招へいされるような経営のスペシャリストではなく、権力志向が強い自己保身に取りつかれた単なる管理者です。

脱・日本式経営では、経営者もスペシャリストから経験を積んだ叩き上げが経営を担当するべきです。

資金も信用も実績もない小さな町工場から出発して、京セラを世界的な大企業に一代で育てた名経営者 稲盛和夫氏もスペシャリストです。

次に、採用方式と雇用システムの比較表です。

脱・日本式経営では、新卒より中途社員が主役です。

リスクを取って真剣に企業成長を目指さないJTCには、社員を成長させるようなまともな仕事はありません。

そのため、プロパー社員だけでは、ニーズの多様化・専門化や変化のスピードにとてもついていけないからです。

中途社員が圧倒的な構成比率を占めるようになれば、アメリカなど先進国が辿ったように、定年制と終身雇用制・年功序列は廃れて、成果主義になるのは必然です。

■関連記事■
こぼれ話

競争にさらされないインフラ企業だけは、何かが原因で経営破綻しない限り、日本式経営が続きます

競争が限定的で安定的な需要が担保されている生活インフラ企業(電気、ガス、道路、鉄道など)は、甚大な自然災害などで経営破綻しない限り日本式経営が続きます。

こういった企業は、生きた化石シーラカンスのような存在になるでしょう(笑)。

【関連記事:【就職先】インフラ企業だけはやめなさい!リアルな実態を経験者が解説

 

 

まとめ

JTCの個人を犠牲にする日本式経営とは?

メンバーシップ型雇用(新卒一括採用・終身雇用・年功序列)による社員奴隷化システムと、それによって形成される「共同体(ムラ社会)」の縛りによって、個人の犠牲を強いる経営

日本式経営の限界とは?

30年ほど前から、需要の飽和状態に加え、ニーズの多様化・専門化が進み、その変化のスピードも加速

⇒ 異なる能力や知識を持った人が、それを活かしながら、協力し合って目標を達成する組織が必要

⇒もはや、固定化・同質化した人材が集まり、自己犠牲の精神で働く「共同体(ムラ社会)」型の組織は、消え去る運命

 日本の凋落ぶり(世界競争力、時価総額、名目GDP)が日本式経営の限界をハッキリと示している

脱・日本式経営とは?

・専門スキルと即戦力を兼ね備えたスペシャリストが協力し合う「機能体」

中途社員が圧倒的な構成比率を占め、定年制と終身雇用制・年功序列は廃れて、成果主義で社員を評価する経営

日本の大企業の中にも、中途社員が圧倒的な構成比率を占める企業が既にわずかながら存在しますが、多くの企業は今後、「ジョブ型雇用※」や同志社大学教授 太田肇氏が提唱する「自営型」の要素を取り入れた中途社員中心の新たな日本式雇用形態を早急に構築する必要があります。

※ジョブ型雇用とは、職務内容を明確に定義し、その職務を遂行するために必要なスキルや経験を持つ人材を採用する雇用システム