日本人は世界一長寿(平均寿命は84.5歳 2024年現在)にもかかわらず、高齢になっても幸福度が向上しないという衝撃的な事実をご存じですか?
下のグラフをご覧ください。
引用:内閣府『平成20年版国民生活白書』「日本人の幸福度に関する分析」
内閣府が行った幸福度調査によると、日本人の幸福度は15歳がピークであり、その後はほぼ低下傾向です。
一方、アメリカ人の場合は、30代に幸福度が最低になり、高齢になるにしたがって増しています。
世界一の長生きを手に入れた日本の高齢者は、なぜ幸福度が低いのでしょうか?
ストレスを溜めながら家族のために我慢して働いてきたのに、定年後の方が幸福度が低いなんて冗談じゃありません。
この記事を読めば、そんな幸福度の低い定年後の生活を回避するヒントが得られます。
②定年後の幸福度を高める「一夜賢者」の生き方とは?
幸いにも現役時代より幸せな定年後の生活を送れている筆者が、定年後の幸福度を高める「一夜賢者」の生き方について解説します。
<自己紹介>
筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年
<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職
目次
なぜ日本人の幸福度は高齢になっても向上しないのか?
寿命が延びたのに高齢になっても幸福度が向上しない原因は、2つ考えられます。
一つ目は、寿命が延びて、かえって未来を憂うことが原因で増した健康不安です。
それを裏付ける、こんなデータがあります。
オムロンヘルスケア㈱の『人生100年時代におけるシニアの健康に関する意識と実態調査』によると、約9割(86.5%)もの人が、老後への不安を抱えています。
その不安の種類は、1位が「お金」、2位以降は「自身の健康」に関するものが並びます(下のグラフ参照)。
また、不安の1位である「お金」の内容を見てみると、医療費が5割強(52.6%)で、2人に一人は医療費に不安を抱えているというのが実態です(下のグラフ参照)。
これらの結果から、寿命が延びても高齢者の幸福度が向上しない理由は、寿命の延長がかえって健康への不安を増加させることにあると考えられます。
二つ目は、過去に囚われていることが原因で起こる定年後の孤独です。
ただでさえ日本人は世界的に見て孤独な人が多い(下のグラフ参照)のに、名刺が無ければコミュニケーションをとることができない日本人男性が定年後に孤独になるのは必然と言えます。
タテ社会の名刺や肩書という過去に囚われていては、ヨコ社会である一般社会になじめません。
寿命が延びたのに高齢になっても幸福度が向上しない原因は、寿命の延長が「定年後の孤独」を増大させたためと考えられます。
定年後の幸福度を高める「一夜賢者」の生き方とは?
一夜賢者とは、「一夜賢者の偈(げ)*1」という仏教の教えに基づくもので、過去や未来に囚われず、現在に集中して生きる人を指します。
「一夜賢者の偈」の現代語訳は、以下の通りです。
過去は追うな。
未来を願うな。
過去はすでに捨てられ、
未来はまだ来ない。
だから、ただ現在のことを
ありのままに観察し、
動揺することなく、
よく理解して、実践せよ。
ただ今日すべきことを熱心になせ。
明日、死のあることを誰が知ろうか。
かの死神の大軍と
会わないわけはない。
このように考えて、熱心に
昼夜おこたることなく励む人、
このような人を一夜賢者といい、
寂静者、寂黙者と人はいう。
過去も未来も結局は、自分の頭の中にしか存在しません。
実際に起こっていることは、「今ここ」で身体を通じて感じることができる現象だけです。
一夜賢者は、昼夜を問わず、「今ここ」でなすべきことに集中して取り組む人のことを言い、そのような人は心が静かで、煩悩から解放された状態にあります。
ところが、寿命の延びた日本の高齢者は、まだ来るかどうか分からない未来のために、「今ここ」での人生を犠牲にして生きています。
下の図表1をご覧ください。
これは、日銀金融広報中央委員会による「家計の金融行動に関する世論調査」(2021年)の調査結果です。
これによると、年代別の金融資産保有額の中央値は、60代が1400万円、70代が1500万円と、他の年代に比べて突出しています。
これを平均値で見てみると、さらに増え、60代では3000万円にもなります。
これでは、砂時計の残りの砂(=未来)が少なくなるにつれて、反対に未来への備えが増えていることになります。
そして、日本人の高齢者は、死ぬ時が一番お金持ちという皮肉な事態も珍しくありません。
また、過去に囚われて生きる高齢者の代表は、現役時代に会社人間だった男性です。
定年後、会社から離れても過去の肩書にこだわり、もはやとっくに過ぎ去ってしまった栄光にいつまでもしがみついている高齢者は、ヨコ社会である世間に馴染めず孤独な老後を過ごすことになります。
孤独による健康への悪影響は、下図の通りです。
引用:三菱総研|孤独・孤立は健康に悪い|社会課題ポータル (mri.co.jp)
また、高齢者によるカスタマーハラスメント(カスハラ)は、威張りたい気持ち、時間を持て余していること、引退後の疎外感などが挙げられますが、これも過去に囚われていることが一因と言えます。
それでは、過去や未来から自由になるには、どうすればいいのでしょうか?
先ずは、囚われている自分を第三者の目で見ることが出来るようにすることが、過去や未来に囚われずに生きるための第一歩です。
なぜヒトは「未来」に不安を覚えるのか?
ヒトが狩猟採集生活から農耕生活に変わったのは、1万1000~2万3000年前のことです。
これにより、ヒトの時間感覚が変化しました。
農耕を効率的に行うためには、長期的なタイムスケジュールが不可欠だからです。
ところが、ヒトに備わっている「不安」対策システムは、狩猟採集生活時代からまだ進化が追い付いておらず、あくまでも目の前に迫った危険だけが対象です。
つまり、人には「遠い未来の不安」対策システムが備わっていないため、将来に原因の分からない不安を覚えるのです。
以上は、あくまでも仮説ですが、この仮説を裏付けるような事実も存在します。
ケンブリッジ大学で博士号を得たケニア出身の牧師ジョン・ムビティ氏によれば、「アフリカ人には未来の感覚が存在しない」という事実です。
引用:鈴木祐著『最高の体調』
まとめ
✔なぜ日本人の幸福度は高齢になっても上昇しないのか?
①寿命が延びて、かえって未来を憂うことが原因で増した健康不安
②過去に囚われていることが原因で起こる定年後の孤独
✔定年後の幸福度を高める「一夜賢者」の生き方とは?
・過去や未来に囚われることなく、現在に集中して生きること
・先ずは、囚われている自分を第三者の目で見ることが出来るようにすることが、過去や未来に囚われずに生きるための第一歩
ダンスフィットネスで「一夜賢者」に?
ダンスフィットネスとは、スポーツクラブの会員ならだれでも参加できるクループレッスンで、音楽に合わせてダンスしながら行うエクササイズです。
参加者は、子育てを終えて暇になったご婦人方がほとんどです。
「ダンスなんて恥ずかしくて出来るはずがない」という声が聞こえてきそうです。
でも参加できないのは、過去の自分(=現役時代の自分)に囚われているからです。
要するに、参加すること自体が、過去に囚われない自分になることなのです。
さらに、ダンスフィットネスはインストラクターのダンスを見よう見まねで踊るので、まさに「今ここ」に集中できる時間を体験できます。
下の写真は、リトモスというダンスフィットネスのクリスマス仮装イベントの記念写真です。
最後列の中央が筆者です。
右端の男性は、なんと80歳です。
*1:偈(げ)とは、特に仏教において使用される詩や歌の形式の一種です。教えや真理を韻を踏んだ形で表現したもので、仏教経典や修行者の教えの中でよく見られます。詩的な要素が強く、記憶しやすい形で教えを伝える目的があります。